太陽電池の過剰生産で自滅しかねぬ習政権 大掛かりな奨励策でメーカー同士の競争が白熱化 日本は中国製輸入の大幅削減を

 

夕刊フジ

日本中で増え続けている太陽光発電パネル(本文と写真は関係ありません)

【お金は知っている】 台風シーズンを迎えた上に、南海トラフ巨大地震の勃発不安と、改めてこの美しい国も、災害列島であることを思い起こさせられる夏である。そこで、ふと頭によぎるのは、太陽光発電パネルの残骸の山、という悪夢である。 【写真】折り曲げられる「ペロブスカイト太陽電池」 山林、農地、あるいは住宅地に敷き詰められた太陽光パネルが台風、地震で破壊され、住民の感電事故を引き起こすばかりか、大量の有害廃棄物となって環境を破壊する--。 中国が世界シェアの8割を握る太陽光発電は、民主党政権時代から政府の奨励策によって導入が本格化した。政治家もメディアも「脱炭素」「クリーンエネルギー」の名のもとに、太陽光発電の負の側面には知らぬフリをするか、完全無視するかのいずれかである。 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の杉山大志氏の著書「亡国のエコ」(ワニブックス)によれば、太陽光発電は地球環境を改善する効果がないばかりか、不安定で質の悪い電気を生み出すし、国民負担を重くする。中国の太陽電池(太陽エネルギーを電気に変換する装置)生産の大半が新疆ウイグル地区でのウイグル人の強制労働による。日本の大量輸入は習近平政権による人権弾圧加担同然だ。 岸田文雄政権や与野党に中国製太陽光発電パネル輸入を見直す意見はほとんど出てこない。自民党内で隠然たる影響力を持つ菅義偉前首相や秋の自民党総裁選出馬が取りざたされる小泉進次郎、河野太郎両議員もことのほか、太陽光発電設置拡大に熱心だとされる。先の東京都知事選で3選を果たした小池百合子知事は来年4月には新築住宅の多くに設置を義務づける有り様だ。 そんな日本などに対し、中国は安値輸出攻勢に拍車をかける。今年6月の太陽電池輸出単価(ドルベース)は前年同期比で46%下落した。日本を含む、西側世界では結晶シリコン基板を使う太陽電池メーカーは中国製に太刀打ちできず、撤退せざるを得ない。西側世界は太陽光発電を推進しようとすれば、全面的に中国製に依存せざるをえなくなる。 とはいえ、太陽電池の中国メーカー同士の過当競争と過剰生産は白熱化する一方だ。習政権は太陽電池や電気自動車(EV)、半導体などを「新質生産力」と名付け、政府補助金など大掛かりな生産奨励策を展開している。特に、不動産バブル崩壊のために住宅の過剰と不況が深刻化している地方では、住宅に代わる景気の牽引(けんいん)車として太陽光発電に注目し、太陽電池の増産との太陽光発電所の建設ラッシュが起きている。太陽電池メーカーがシェア・アップを競う。他方で、農地が次々と太陽光パネルで覆われ、食料生産能力が大きく損なわれる事態を引き起こしているという。

習政権は過剰生産が祟(たた)って自滅への道をたどりかねない。わが国は太陽光発電の弊害をきちんと評価し、輸入コストもかさむ中国製輸入を大幅に削減するのが政治の王道なのだ。 (産経新聞特別記者・田村秀男)