憎きトヨタを何とか「悪者」に仕立てたいのか…「認証不正問題」で国益を大きく損なわせている国土交通省の「罪」

 

現代ビジネス

「校則違反」で締め上げる

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 よくありがちなのは、「目的」と「手段」を取り違えることである。そして、それは国土交通省やオールドメディアなどが騒ぎ立てる「認証不正問題」にも起こっている。 【写真】あえて問う「悪いのはダイハツだけ」なのか。消費者目線で考えてみる  そもそも「認証」の「目的」は、国民に「安心・安全」を提供するためのものである。だから、国民にとって「(真に)危険」なものを排除しなければならない。  また、国土交通省は、国民の信託を受けた政府の機関として自動車業界だけでは無く、日本の産業を発展させ、国民がより豊かな生活を享受できるようサポートする責務も負っている。  ところが、現在の国土交通省は、これらの目的の「手段」である「認証」そのものを「目的」にしてしまっている。「認証」を行うべき「目的」を見失って、ただ(目的を示さずに)「お前は認証違反だ!」と詰め寄っているのだ。  そもそも、日本には形骸化してしまい意味を失った「規則」が多数存在する。「元々意味がない『規則』」も同様だ。6月15日公開「なぜ日本企業から『大物経営者』が出なくなったのか…この国をダメにした『4つの原因』」は、実は民間企業だけの問題ではない。  「4つの原因」の中でも、特に2019年8月10日公開「日本の企業と社会を破滅させる『過剰コンプライアンス』のヤバイ正体」で述べた、「社内ゲシュタポ」と呼ばれるような組織による「締め付け」が企業の活力を奪っている。  国土交通省を始めとする官僚・役人も「過剰認証」によって、自動車産業に代表されるような「日本を支える重要産業」を弱らせているのだ。  戦後の復興期には、官僚・役人の中にも「日本を発展させようという大志」を持った人物が存在した。これは、前記「なぜ日本企業から『大物経営者』が出なくなったのか…この国をダメにした『4つの原因』」で述べたように、政治家や民間企業経営者にも共通した現象である。  だが、大変残念なことに、現在の国土交通省を始めとする官僚・役人は、前述の「社内ゲシュタポ」に準じるような、(自らの保身のための)「重箱の隅つつき」に熱中する人々が中心のように思える。  そして、最悪なのは「政治問題化」しやすい外国の製品については見て見ぬふりをするのに、行政に対して弱い立場にある国内メーカーの製品だけを締めあげることだ。  「小物」化した官僚・役人は、自分の地位さえ守られればよいのだろうが、その行為によって日本の産業は大きなダメージを受け、国益が大きく損なわれる。  この問題は、1月16日公開「あえて問う『悪いのはダイハツだけ』なのか。消費者目線で考えてみる」5ページ目「コンプライアンスが日本を駄目にしないか?」でも指摘したが、いまだにオールドメディアも政府の忠犬のような形で認証不正問題を報道している。  そこで、改めてNHK 6月14日「トヨタ 認証不正の3車種77月以降も生産停止 再開時期は未定」のように、日本の自動車産業に大きなダメージを与え、国益を毀損している「認証不正問題」について考えてみたい。

 

意味のない校則を守らせるべきか?

 「校則」の必要性は否定しない。むしろ重要だと思う。だが、髪型・髪の長さやスカートの丈などは、「人を殺してはいけない」というような規則とは違って、「絶対不可侵」というわけではない(この規則も戦争の時に「逆転」するが……)。  例えば、学校内の風紀が乱れず生徒が健全な生活をおくるという「目的」を果たせるのならば、どのような髪型・髪の長さ、スカート丈でも良いはずだ。  だが、自らの保身ばかりを考え生徒の健全な成長についてまるで考えない教師たちは、「明確な根拠無く」規則を定め、まるで「校内ゲシュタポ」のように、ルール違反を探し回る。「私は規則を守らせるように努力しました」という言い訳が、自らに向けられる批判に対する免罪符になるからだ。  生徒の健全な成長をはかるという「目的」のための「手段」であるはずの校則が目的そのものになってしまう。そして、手段が目的になるのと同時に、「校則を振りかざして教師が生徒を支配する」という誤った目的に導かれることにもなる。

国交省の“いじめ”

 このような「意味のない校則」にも例えられそうな国土交通省の「認証」については、朝香豊「自動車『認証不正問題』の本質は国交省の“イジメ”ではないか…? 時代錯誤な『お役所仕事』が日本経済を停滞させる」に詳しい。  同記事から引用すれば、「例えばトヨタは、後部からの車をぶつけられた時に油漏れを起こすかどうかについて、車体重量1800キロの車をぶつけて実験を行い、問題ないことを検証していた。ところが国交省の求める実験では1100キロ(正確には1100キロ±20キロ以内)の車をぶつけて油漏れを起こすかどうかであり、1800キロの車をぶつけて実験をしながら、1100キロの車をぶつけて油漏れを起こさなかったと記したのは、虚偽記載に当たるというのである」ということだ。  例えば、スカート丈が短すぎて風紀を乱すことを防止する「目的」のために、スカート丈は膝上10センチという規則を定めたとする。ところが、ある生徒が膝下10センチのスカートで登校したところ「膝上10センチという規則」を守っていないとして廊下に立たされたようなものだ。  前記記事で紹介されている「エアバッグのタイマー起動問題」も、「より安全に対して厳格な条件で試験を行った」という点において本質的に同じケースである。  もちろん、スカート丈が短すぎて風紀を乱すことを防ぐ「目的」からすれば、スカート丈が長いことは全く問題が無い。  国土交通省の主張は、まさに「手段が目的になった」好例だと言えるであろう。

 

日本車より優れた自動車があるのか?

 そして、国土交通省は、「日本車と同じ品質を外国製自動車で担保できるのか?」という国民からの問いかけにも正面から向き合わなければならない。  2022年8月20日公開「中国、韓国『EV電池』の発火が相次ぐ一方、『何もしていない』ように見える『日本の製造業』はやはり凄かった」というのが、世界的評価だ。  また、1月16日公開「あえて問う『悪いのはダイハツだけ』なのか。消費者目線で考えてみる」4ページ目「『日本品質』ではない自動車は安全なのか?」も参照いただきたい。  この記事において、Forbes 2022年6月19日「アメリカの人気ランキングトップ10に、日本車が8台ランクインする秘密」や、外車バトン昨年10月16日「海外で人気の日本車メーカーと車種」において「新車販売台数の約4割を日本車が占めるアメリカ」と伝えられる状況」と述べた。  世界の人々が「日本品質」を称賛しこぞって購入する中で、内弁慶の国土交通省が「外国製品」にはお構い無しにも関わらず、国内メーカーだけをいじめぬくことは「日本の産業の振興」という観点から大いに問題である。  重箱の隅をつつくようにねちねちと攻める国土交通省は、「忠臣蔵」の吉良上野介のようにも思える。浅野内匠頭は、このようないじめに耐えかねて刃傷沙汰を起こしたが、トヨタを始めとする国内メーカーは、大人の態度で耐え忍んでいる。  昨年9月28日公開「豊田章男はなぜホンダ車にエールを送ったか、トヨタ一人勝ちでは世界から叩かれる?」のように、国土交通省のいじめの被害にあいながらも、世界の中で孤軍奮闘しているトヨタだ。しかし、昨年2月27日公開「日本はこのままトヨタを失ってしまってもいいのか!?」で述べたように、このままいじめが続けば日本を出て行ってしまうかもしれない。  もしそうなったら、日本の産業・経済には大打撃となるが、自らの保身しか考えない国土交通省を始めとする「小物」の官僚・役人にとってはどうでもよいことなのかもしれない。

 

毅然と正論を述べるトヨタ

 3月30日公開「脱炭素とEV化の欺瞞が暴露されつつある~トヨタの先見性と忍耐力は称賛されるべき」で述べたように馬鹿げたEV化と距離を置いたトヨタが正しかった事は明らかだ。  逆に、米国民主党やEUにペコペコしてEV化を強力に推進した政府の愚かさが際立つ。脱炭炭素やEV化で血税を無駄遣いし、さらにはそのための重税まで国民に課した政治家、官僚・役人はまず、その責任を取るべきである。日本経済を支える自動車メーカーをいじめている場合ではない。  しかし、結果的にトヨタが正しく、自分たちが間違っていたという事実を「小物」たちは認められないであろう。憎きトヨタを何とか「悪者」に仕立てたいと考えているように思われる。  また、オールドメディアにとってもトヨタは邪魔な存在だ。  詳しくは4月10日公開「トヨタ生産システムの根源『なぜなぜ分析』はバフェット流にも通じる『外野の意見に耳を傾けるな! 』という鉄則」6ページ目「なぜトヨタはバッシングされるのか?」で述べたように「電通広告不正」や「オリンピックの腐敗」などに対しても「ならぬものはならぬ」と勇気を持ってトヨタは発言してきた。  オールドメディアなどの不正を暴き、トヨタ独自のメディアである「トヨタイムズ」で国民(消費者)と直接対話しようとするトヨタを彼らが恐れるのも当然である。国土交通省とタッグを組んで、必死にトヨタバッシングを行っても不思議ではない。  今回の「認証不正問題」に関するオールドメディアの「国土交通省の言い分だけを垂れ流す」プロパガンダは、逆にトヨタを始めとする「日本の自動車メーカーの正しさの証明」と言える。  我々はオールドメディアの「プロパガンダ」に惑わされることなく、「国民からの『認証問題』」を抱えているのは国土交通省の方であるということを、しっかりと理解しなければならない。