茂木敏充・自民党幹事長「ドル円150円超水準、是正へ」…為替介入以外何もできないかというと、そうではありません

 

みんかぶマガジン

茂木敏充氏

 年初来、ドル円相場は1ドル=150円近辺での展開が続いていたが、4月に入ってドルが再び急騰し、1ドル=155円を超える展開となっている。その後、日銀の介入(推計で5兆円規模の市場介入を行った可能性)があり、一時的に値を戻したかに見えた円ドル為替市場だが、また、じわじわと円安が進んでいる。5月24日には1ドル=157円前後と約3週間ぶりの円安水準で推移している。そうした中、進む円安への対応か、「金融政策の正常化」に向けた一歩なのか、日銀が5月13日に国債の買い入れを減額して以降、長期金利の上昇が続いており、長期金利が1%は超えた。  一体、日本政府は、現在の為替市場をどう捉えていて、今後、どうしていきたいと考えているのか。  経済産業大臣、外務大臣を経て、自民党幹事長に就任した岸田政権の重鎮・茂木敏充衆議院議員に、見解を問うた。「この150円を超えている水準は是正する必要がある」。その言葉の意味とは。みんかぶプレミアム特集「クライシス円安」第1回ーー。(聞き手:小倉健一)

今の行き過ぎた円安は、日本経済にとって明らかにマイナス

ーー急激に円安が進んでいる。円安が進むことが、即ち悪いことではなく、輸出面で見れば価格競争力が上がり、インバウンドの収入も増えることになるだろう。他方、輸入企業は、大きな打撃を受けており、ガソリン、食料品など国民生活にも大きな影を落としている。茂木幹事長は、この円安局面をどう捉えているのか。 (茂木幹事長)  今の行き過ぎた円安は、日本経済にとって明らかにマイナスだと思っています。物価高、そして資材価格の高騰につながっており、早急に是正していく必要があります。   では、今、なぜ、ここまで円安ドル高が進んでいるのか。  1番の要因は、日米の大きな金利差です。 これはアメリカの物価動向がどうなっていくか、FRB(アメリカ連邦準備制度理事会)がどういう政策判断をするかという点が大きく影響しています。ですから、すぐに日米の金利差を埋めることは難しい側面があります。

 

「為替介入」以外に何もできないかというと、そうではありません

ーー茂木氏が指摘するように、日米の為替市場は、アメリカ社会の動向に強い影響を受けている。先ごろ公開された米国の金融政策を決める「米連邦公開市場委員会(FOMC)」の5月の議事要旨には、「物価上昇の抑制には時間がかかる」という見解示されるなど、金融引き締めに積極的な「タカ派」の姿勢だと市場が受け止めた。その結果、利下げ観測が後退し、米国の長期金利が一時的に上昇した。これにより、日米の金利差が拡大するとの見方が強まり、金利の高いドルを買う動きが一段と進んでしまったということだ。 (茂木幹事長)  ただ、 日本として、「為替介入」以外に何もできないかというと、そうではありません。為替介入以外にもやれることはやらないといけないでしょう

利上げの検討も含め、日本の金融政策を徐々に正常化していく

 例えば、金融政策の方向性を示すことです。今までずっと「異次元の緩和」を続けてきたわけですけれど、「日本はこれから正常化していく」というメッセージをマーケットにしっかり送ることが必要です。異次元の金融緩和は、これから本来の次元に戻っていきますよ、ということを打ち出すべきでしょう。デフレ脱却も見えてきたわけですから、今がそのタイミングではないでしょうか。   今年の3月に、日銀の政策決定会合で「マイナス金利政策の解除など大規模な金融緩和策の転換」に踏み切ったわけですが、今後の政策の方針について当面、緩和的な金融環境が続くということの方が強調されましたこの日銀の発言は、マーケットに「日米の大きなこの金利差はこのまま続くのだろう」という観測を生んでしまいました。4月に入って進んだ急激な円安の要因の一つとされています。   ですから、今後は、物価動向を踏まえながら、利上げの検討も含め、日本の金融政策を徐々に正常化していく、また、それに向けて着実な政策を打っていく。市場に対してこうした明確なメッセージを発信していくということが極めて大事なことだと考えています。

茂木敏充