「家賃支払いをオンライン化」集合住宅400世帯に偽チラシ…QRコード悪用の詐欺、全国で相次ぐ

 

 「闇バイト」をSNSで募集したとして、30日に職業安定法違反(有害業務の募集)容疑などで愛知県警に再逮捕された男は、QRコードを印刷した偽チラシを郵便受けに 投函(とうかん) し、家賃をだまし取った詐欺容疑でも逮捕されている。QRコードを悪用した犯罪は全国的に相次いでおり、専門家が注意を呼びかけている。(乙部修平)

愛知県警察本部

愛知県警察本部© 読売新聞

 「家賃の支払いをオンライン化することに決定した」。2022年10~11月、岩倉市の集合住宅17棟の約400世帯の郵便受けに、こうした文面のチラシが投函された。住民の男性がチラシに印刷されたQRコードをスマートフォンで読み取ると、LINEのトーク画面に誘導され、指定された口座に2か月分の家賃として10万6000円を振り込んだ。ところが翌月、管理会社から「家賃が未払い」との連絡があり、詐欺に気づいたという。

 この住民男性から家賃をだまし取ったとして、県警が今年1月に詐欺容疑で逮捕したのが、埼玉県狭山市の会社役員の男(24)(詐欺罪などで起訴)だった。その後、男は札幌市の集合住宅の住民からも同じ手口で家賃をだまし取った詐欺容疑などでも再逮捕されている。

 

 捜査関係者によると、男はLINEの法人向けサービス「LINEビジネスID」で取得した公式アカウントやSNSで、チラシを投函する実行役や、だまし取った家賃を暗号資産に替える実行役を募集していた。また、だまし取った金を原資にして、SNSのフォロワーに電子マネーを送る「お金配り企画」を実施。フォロワー数を増やすことで、闇バイトの募集をさらに広く宣伝する狙いがあったとみられる。

 国民生活センターによると、QRコードで現金をだまし取られたといった相談は、昨春から相次ぐようになった。インターネット通販で買ったアクセサリーが届かず販売元に問い合わせると、「返金する」と連絡があり、指示に従ってQRコードを読み込んだところ現金を送金させられた事例などがあるという。

 QRコードを使った詐欺について、セキュリティーに詳しいNTTデータグループの新井悠氏は「スマホで読み込むだけで簡単に金銭のやりとりができてしまうQRコードの利便性の高さが、犯人側にとっても都合がいい」と指摘する。

 社会でQRコードでの決済が一般化したため、利用者側が疑問を持たずに読み込んでしまう危険性があるという。またQRコードはURLと違い文字列でないため、不正なものかどうかを見分けるのも難しい。

 新井氏は「特に金銭が絡む場合は安易にQRコードを読み込まず、不自然な点がないか一度立ち止まって考えることが重要だ」と話した。