バイデン氏の「日本人は外国人嫌い」に現れた差別感 岸田政権、中身を明らかにしない米への抗議…裏で画策する「移民受け入れ」

 

夕刊フジ

岸田首相はビデオメッセージで差別を認めていた(政府広報オンラインから)

【ニュースの核心】 ジョー・バイデン米大統領が「日本人は外国人嫌い」と発言したことが注目されている。ワシントンでの選挙イベントで、米国の経済成長を支えているのは「移民の受け入れ」だと指摘し、日本を中国やロシアと並べて批判したのだ。日本政府は「日本の政策に対する正確な理解に基づかない発言だ」と米政府に申し入れたが、実は、岸田文雄首相自身が今年2月、日本人が外国人やマイノリティーを差別していると言及して問題になっていた。ジャーナリストの長谷川幸洋氏は、永田町が「政治とカネ」の問題で大騒ぎする陰で、岸田政権が大きくかじを切った「移民推進」への懸念を指摘した。日本の雇用や賃金、社会保障は守られるのか。 バイデン米大統領が「日本は外国人嫌い」と語った発言について、日本政府が米政府に抗議した。ところが、「日本の政策の正確な理解に基づかない発言があったのは残念だ」などと公表しただけで、具体的な中身を明らかにしていない。国民に「政府の思惑」がバレてしまうと、都合が悪いからだろう。 バイデン氏は1日、ワシントンで開かれた選挙集会で、次のように語った。 「われわれが成長している理由の1つは、移民を歓迎しているからだ。中国はなぜ停滞しているのか。日本やロシアはなぜ問題を抱えているのか。彼らは外国人嫌いだからだ。移民は私たちを強くする」 同盟国の日本を、中国やロシアと同列に扱ったのもひどいが、3月にもラジオで同様の発言をしていたことを踏まえれば、この発言には、バイデン氏の対日認識がにじみ出ている。大統領は心底から、そう思っているのだ。 日本は低賃金のままでいいのか 日本の外国人に対するホスピタリティの良さは、「おもてなし」を紹介する英語のYouTube番組がいくつもあるほど、海外でも有名だ。 バイデン政権は、LGBT(性的少数者)問題でも「日本に差別がある」という認識を前提に、理解増進法の制定を日本に迫った。私には、バイデン氏の方こそ、今回の発言と共通する「日本に対する根深い差別感」が潜んでいるように思える。 そもそも、「米国は進歩した社会」という認識は、リベラリズム(理想主義)の核心である。リベラリズムを信奉する民主党の大統領とすれば「日本が米国よりも遅れた国」という認識は、ごく自然な結論なのだ。「移民が経済成長をもたらした」という認識も根拠が怪しい。

 

情けないのは、岸田政権である。

岸田首相は2月、「共生社会と人権」をテーマにしたシンポジウムに、「雇用や入居で、外国人、障害のある人などが不当な差別を受けている」という内容のビデオメッセージを送った。首相自ら差別の存在を認めたも同然だ。こんな発言が平然と飛び出すくらい、岸田政権は米民主党流のリベラリズムに染まっている。

今回の抗議で、具体的な中身を明らかにしないのは、実は「オマエだって外国人差別を認めていたじゃないか」と反論されたら、返す言葉がないからだ。それが1つ。

もう1つの理由は、岸田政権は、すでに「移民受け入れ」に大きくかじを切っているからだ。政府は外国人労働者に道を開く、出入国管理と技能実習法の改正案を今国会に提出した。人手不足を補うために「安い労働力」を受け入れたい経済界の要望に応えたのだ。

だが、公然と「移民受け入れ」を宣言すると、反発が出るのを恐れて、「外国人に選ばれる共生社会を目指す」などときれい事を言っている。政府は実質的に方針転換しているのに、国内の反対派を刺激したくないから、政策の中身を公表できなかった。

外国人の安い労働力を雇えるようになれば、企業は助かるかもしれない。だが、それでは低賃金が固定化してしまう。結局、日本の賃金はいつまでたっても上がらない。左翼はそれでいいのか。

「共生社会」を唱える左翼やリベラリストは、自分で自分の首を締めているようなものだ。今回の騒動は、日米両国にまたがるリベラル政権の浅はかさを浮き彫りにした。

はせがわ・ゆきひろ ジャーナリスト。1953年、千葉県生まれ。慶大経済卒、ジョンズホプキンス大学大学院(SAIS)修了。政治や経済、外交・安全保障の問題について、独自情報に基づく解説に定評がある。政府の規制改革会議委員などの公職も務めた。著書『日本国の正体 政治家・官僚・メディア―本当の権力者は誰か』(講談社)で山本七平賞受賞。ユーチューブで「長谷川幸洋と高橋洋一のNEWSチャンネル」配信中