「これは増税メガネ詐欺だ」加藤鮎子こども相に批判殺到「消費税0.8%増税相当」子育て支援金の悪夢

 

ダイヤモンド・オンライン

加藤鮎子こども政策担当相 Photo:JIJI

 岸田首相が掲げる「異次元の少子化対策」の財源となる「子ども・子育て支援金」について、当初は国民一人あたり月300円~500円程度の負担と言われていたが、「1000円超もありうる」と加藤鮎子こども政策担当相が認めたことで、批判が殺到している。最新報道から、問題の核心に迫る。(イトモス研究所所長 小倉健一) ● 「平均で2.25人の子どもが欲しい」 アンケート結果と現実のギャップ  口を開けば、もっと子どもが欲しいという夫婦は多い。国立社会保障・人口問題研究所『第16回出生動向基本調査』(2021年)によれば、理想の子ども数を夫婦に尋ねると、平均で2.25人の子どもが欲しいという結果が出ている。しかし、現実は違っている。  <2023年の出生数(日本人)は、前年に比べて4万人以上少ない72.6万人となる見通し。減少率は▲5.8%減となり、16年以降減勢が加速した中でも、19年と並ぶ最大の減少率となる公算。  合計特殊出生率は、過去最低であった22年の1.26を下回ることが確実。1~9月の人口動態統計概数から試算した23年の合計特殊出生率は、1.20程度になる見通し> (日本総研、2月14日)  安定した人口を維持するためには、女性1人当たり2.1人の合計特殊出生率で、この数字を下回ると人口は長期的に減少することになる。  こういう数字を机に並べて、政府の偉いお役人さんは頭をフル回転させるわけだ。  「平均して1人近いギャップはなぜ生まれるのだろう」 「このギャップを生む障壁をなくせば、少子化は止まるはず」  出生動向基本調査には、理想の子ども数を持たない理由(複数回答)として、「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」(52.6%)がトップの回答となっている。  これを見て、「そうか、子育てや教育を支援すればいいんだな」と考えを巡らせたのだ。こうして生まれたのが、岸田文雄首相による「異次元の少子化対策」だ。 ● 「手厚い少子化対策と 国民負担はセット」という発想  この少子化対策の中身については、“次の首相”とうわさされることの多くなった上川陽子氏(現・外相)が、少子化担当相時代に、政策の原案が作られている。  上川氏は、以下のような発言をしている。  「手厚い家族政策を支える国民負担についての国民の皆さんからの応援、合意ということについても、これからさらに充実しなければいけない」(2007年10月26日、内閣委員会)  この発言からは、手厚い家族政策(異次元の少子化対策)と、国民負担はセットになって考えていることがうかがえる。現在の岸田政権と全く一緒だ。  では、このギャップを埋める方法とは、いったい何だろうか。上川氏、岸田首相、そして現在のこども政策担当相である加藤鮎子氏には申し訳ないのだが、そんな方法などない、という衝撃のレポートが最近になって発表された。

 

● 日本ではロクに報道されないが 先進国に衝撃を与えた分析  米国・ワシントン大学のInstitute for Health Metrics and Evaluation(IHME)が主導する研究活動【Global Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study 2021】の最新の分析だ。  同分析によれば、  ・1950年以来すべての国で減少している世界の出生率は、今世紀末まで急落し続け、その結果、深刻な人口動態の変化が起こる。出生率は、1950年の4.84から2021年には2.23となり、2100年には1.59まで下がり続ける。 ・育児補助金、育児休暇の延長、税制優遇措置など、一部の国が実施している出産促進政策の効果も調べた。その結果、出産促進政策が実施された場合、女性1人当たりの出生数の増加は0.2人以下であり、強力で持続的な回復を示唆するものではなかった。 ・子育て支援政策は、他の理由からも社会にとって有益かもしれないが、現在の人口動態の変化の軌道を変えるものではない。  ということだ。この分析は、先進国に衝撃を与えている。ロクに報道がされないのは、日本ぐらいなものではないだろうか。  つまり、子育て支援をいくら頑張ったところで、子どもが増えることなどないということだ。お金が不安で、子どもを産めないというのは、単純にアンケートではそう答える人が多かったというだけの話だったのである。  データから検証しても、日本人の出生率の低下は、未婚率の晩婚化の上昇で9割が説明できてしまう。結婚すれば平均して2人の子どもを産む。そこに経済的理由はほとんど関係していないのだ。 ● 少子化対策への効果は薄く 若い層を経済的に追い込む  要するに、子育て中の現役世代はそれぐらいに、家計がピンチであるということの裏返しのアンケート結果であって、子育て支援をしたところで、少子化は解決しないのだ。この点、日本維新の会の企てる「教育費無償化(学費の全額税負担)」は、少子化には意味がなく、早晩、撤回したほうが良いだろう。大規模な税金投入の見返りとして、効果が薄すぎるのだ。  このほど発表された子育て支援金という増税によって、経済的に結婚できない若い層をさらに経済的に追い込むことになる。  <国民や企業が所得の中からどれだけ税金や社会保険料を払っているかを示す国民負担率は直近では47.5%まで上がっています。Xでは「五公五民」がトレンドワードになりました。  年収600万円の世帯が五公五民で消費できるのは約300万円。“月2000円“の場合、年間2万4000円の追加負担が発生します。これは自由に消費できるはずの300万円のうち0.8%を占めます。  つまり、月2000円の負担増は生活者の目線では消費税が0.8%上がったのと同じです> (鈴木貴博氏『子育て支援金は「消費税0.8%分」のステルス増税だ!現役世代は政府のATMじゃない』ダイヤモンド・オンライン、4月12日) ● 負担が少ないように説明して 国民を騙す「増税メガネ詐欺」だ  そしてまた、加藤鮎子こども相によって、子育て支援金があたかも増税にはならないかのような説明をしたことで、メディアは一斉に子育て支援金についてネガティブな捉え方をしたようだ。  1番の怒りを示したのがFLASHの『「まるで詐欺」子育て支援金、年収600万円なら月1000円負担増「言い回し変えた」増税に「どこが支援だ」批判殺到』『「嘘つき増税メガネ」加藤こども相、支援金「月1000円を超える人も」発言に批判殺到…維新は「高齢者の窓口負担3割」を提言』だ。  月300円~500円とされた負担額について、「1000円超もありうる」と加藤氏が認めたことについて焦点を当てて批判している。私も、増税メガネと揶揄された岸田首相を超える、国民に負担をあたかも少ないかのように説明して騙す「増税メガネ詐欺」だと思う。

 

● 日経新聞も怒っている 「国民は納得するか」  怒っているのは、出版社メディアだけではない。新聞もだ。しかし、新聞は批判のポジションがやや異なっているものもあった。  日経新聞<[社説]子育て支援の負担論は逃げずに正面から> 日経新聞<子育て支援金、共働きで月2000円負担も 現役世代に重荷> 読売新聞<子育て支援金「負担ゼロ」に理解広がらず、政府が腐心…野党「説明小出し」と反発> 毎日新聞<社説:子育て支援の財源 理解得る努力が足りない>  特に、日経新聞は手厳しい。  <育児支援の拡充に財源が必要なのは当然である。政策の理念や必要性、期待する効果などを丁寧に説明し、国民負担への理解を求めるのが筋だ。ところが政府の姿勢は負担の議論に真摯に向き合っているようにみえない。  首相が繰り返す「実質的な負担は生じない」という主張はその典型だ。「歳出改革と賃上げによって実質的な社会保険負担軽減の効果を生じさせ、その範囲内で(制度を)構築していく」という説明だが、負担額から賃上げ分を除いて「実質負担ゼロ」とする理屈に国民は納得するだろうか> (日経新聞<[社説]子育て支援の負担論は逃げずに正面から>、2月25日)  全くその通りで、筆者もこの社説に同意するが、そもそも子育て支援をしても少子化は改善しないのである。日経には、より踏み込んだ議論を展開させてほしい。  あきれてしまうのは、毎日新聞の社説だ。  <社会保障費の枠内で財源を確保しようとしているところに無理がある。  消費増税などの選択肢も排除すべきではない。  2023年の出生数速報値は、過去最少の75万人台となり、少子化が加速している。歯止めをかける対策を急がなければならない> (毎日新聞<社説:子育て支援の財源 理解得る努力が足りない>、3月3日)  などと、社会保障費をもっと増やせだの、増税せよと明確に主張をしている。何の成果も上がらない政策に渡す税金など一円もないのである。猛省を求めたい。