「最低料金でいいと…1回だけ行こうかな」若者がホストにハマる背景、追い込まれて路上売春も…ホスト依存から立ち直るには【報道特集】

 

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高額な支払いにより、売春に走る女性もいるなど、ホストクラブでの“売掛”が問題となっています。彼女たちはなぜホストクラブに通い続けるのか?その実態を取材しました。 【写真を見る】「最低料金でいいと…1回だけ行こうかな」若者がホストにハマる背景、追い込まれて路上売春も…ホスト依存から立ち直るには【報道特集】 ■売春の目的はホスト通い 売掛金を返済できず保険証も担保に 大阪有数の歓楽街・ミナミ。そのすぐ近くに、夜になると若い女性が15人ほど立ち、雰囲気が一変する場所がある。彼女たちは、ここで声を掛けられるのを待っているようだ。 記者 「男性が、路上に座り込んでいる女性に声を掛けました。男性も隣に座り込んで、2人は話をしています」 男女は夜の街へと姿を消していく。戻ってきた男女が、金銭の受け渡しをする様子も…。 和歌山県出身で21歳のAさんも、その場所に立つひとりだ。 ーー今日はここには何をしに? Aさん(21) 「お金を稼ぎに。立ちんぼ」 「立ちんぼ」とは、路上で客を待ち、売春をする行為だ。その目的はホストクラブに通うためだという。 ーーどういう時に来る? Aさん 「お金に困ったとき。ホストとかですかね」 きっかけは18歳の時、SNSでホストと知り合ったことだった。3年間で使ったお金は約1000万円にも及ぶという。 Aさん 「メンタルをケアしてくれたりとか。あとは、自分の存在を肯定してくれるというのがほしくて。この人がいなくなったら自分壊れちゃうなって思うから。僕にはあなたが必要だからっていうのを、言葉とか行動とか全てで伝えてくれるのが担当(のホスト)です」 岐阜県出身で21歳のBさんも、売春をした金でホストクラブに通っている。2年間でつぎ込んだ金は2400万円。 Bさん(21) 「ホストに初めて行ったとき、ほんとに『イケメンいっぱいいる』『すげー』みたいな感じでした。メンタルケアが上手かったからですかね。自分、メンタルケアしてもらったことなかったんで」 小学校入学前に両親が離婚。母親が再婚し、家族と疎遠になった。 Bさん 「一瞬だけ(母親の)再婚の相手の方に自分もいたんですけど、ちょっと色々あって。レイプですね。(母親の再婚相手が)お姉ちゃんにも私にもレイプ」

 

ーー(路上売春は)違法で、罰則もあるじゃない?そのことはどう思う? Bさん 「そうですね。ヤバいなーって思いながら。でも、金欠だからなんとも言えないや、みたいな」 「ホストに売掛があって、そこの掛けを返すためにちょっとでも足しになればなと」 売掛とは、ホストクラブで客の飲食代をホストが立て替え、客がホストに後日支払う、いわばツケ払いのことだ。 Bさんは売掛の支払いが滞り、ホストに保険証を取り上げられたという。 Bさん(21) 「今日(保険証を)取られました。未収(売掛)のほんとに少額の2万円くらいを返せてなくて、ケンカして」 売掛金を返すまで、担保として保険証を預かると言われたのだが… Bさん(21)のメッセージ 「やはり身分証ないと仕事探せなくて、えんこう(援助交際)で何とかしようと思いましたが出来なくて…」 ホスト側のメッセージ 「お前本気でやってることやばいの自覚しろよ。がちクソほど舐めてるやん。気ぃ悪いわ」 Bさん(21)のメッセージ 「本当に金用意出来なくて、すみません」 ■「売掛」は国会でも議論 歌舞伎町のホストクラブは18~19歳の入店を禁止 なぜ売掛というシステムがあるのか。大阪・ミナミのホストクラブを訪ねた。ここでは、約4割が売掛で支払われているという。 ホストクラブ「IR」代表 「(売掛の)推奨は現状していないんですけど、禁止にしようとは今のところは思っていないですね」 ーーそれはなぜ? ホストクラブ「IR」代表 「女の子の声で、売掛があった方が飲みに来やすいとか。売掛の制度があるから夢見られるとかもあるんで、一概に禁止にはできない」 店では客同士が競うように、高級シャンパンやボトルを次々と注文する。中には、120万円の高級ブランデーを頼む客も。 この日、1人の客が売掛で支払った最高額は約200万円だった。 この店では、客の支払い能力に応じて、売掛の金額を決めていると話す。 ーー売掛の最高額は? 客 「400万円くらい。でも全部、その月に返し切ったので。自分の稼げる範囲でしか遊ばない」

 

ホスト 「自分の貯金の範囲外の未収(売掛)は問題だと思う。月収を60~70万円と知っていて、範囲内で30万円の未収(売掛)とかなんで、絶対大丈夫」 とはいえ、横に座る客は… 客 「いつも売掛。なんかオーバーしちゃう。持ってきた分より、いつも超えちゃうから」 ーーなぜ超えてしまう? 客 「楽しいから」 ホストクラブでの売掛金などの支払いのため、20代の女が、男性らから1億5000万円をだまし取ったとして去年、逮捕・起訴された。 こうした事件の影響もあり、野党が悪質ホストクラブを規制する法案を提出。国会で議論となった。 立憲民主党 塩村文夏 参院議員 「18歳や19歳のような、若年女性が狙われたり、風俗で働かないと払えないほど売掛が多額になっていくと」 松村祥史 国家公安委員長 「返済困難な売掛をさせることは、常識的に考えて問題ではないかと考えております」 その約1か月後、歌舞伎町のホストクラブ経営者らの協議会も対策を示した。 groupdandy 巻田隆之代表 「限りなく売掛をしない形に持っていくために、段階を追ってやっていこうと」 歌舞伎町のホストクラブでは、2024年1月から18歳と19歳の新規の客の入店を禁止し、4月からは売掛をなくすという。 ■「入れば地獄への窓」SNSでホストクラブが身近な存在に 玄秀盛さんが理事を務める社団法人「日本駆け込み寺」は20年以上、この地域の課題と向き合ってきた。最近は特にホストクラブに関する相談が増えているというが、その背景にはSNSがあると話す。 日本駆け込み寺 玄秀盛 理事 「コロナ禍でオンラインとかリモートワークとかで、自宅待機で人間関係が希薄になった。交流がね、全て。大学も含めて」 「SNS、TikTok、インスタ、10。そういうところでつながりを持って、マッチングアプリ、いわゆる友達を求めてとか、そういうところのふれ合いのなかで、リアルな存在であるホストにたどり着くと」 近年、ホストクラブがYouTubeなどのSNSを宣伝に活用することが増え、若者にもホストクラブが身近な存在になったという。

 

さらに、2022年から成人年齢が18歳に引き下げられたため、18~19歳が結んだ売掛金の契約でも取り消すことができなくなったのだ。 4月からの売掛の禁止を前に、歌舞伎町のホストクラブでは新たな動きがみられる。店側は、これまでは初回数千円だった料金を無料にして、新規の客の獲得に力を入れているという。 玄秀盛 理事 「これだけ騒いでるからホストへの風当たりも強い。お客さんが来なくなったからディスカウントして、タダでも来てくれ。来たらこっちのものやと。入れば地獄への窓ですから」 ーー初回無料はどう思う? 玄秀盛 理事 「もっと巧妙になりますよ。女の子をどこで落とすかですよね。風俗に落とす、ソープに落とす。最初に値踏みをして企んで、1日2日、1回2回です。2回目で必ず落とす。2回目にはホテルに行って、自分の女に仕込んで。借金3か月で300万円はざらですよ」 この日も、売掛に苦しむ20代の女性が相談に訪れていた。 ーー1番今困っていることは? 20代女性 「売掛が…。掛けでいいから飲もうよ、みたいな感じで言われちゃうから。一応払うことは払うけど、しんどい。売掛しちゃって、LINEでやり取りしてて、最初は行かないつもりだったけど押し切られて」 ーー売掛はいくら? 20代女性 「17万円ですね」 ーー予算は伝えていた? 20代女性 「予算は5万円くらい。ヘルプ(のホスト)にあおられてシャンパンを注文したり、お腹が空いたからフード頼んでいい?とか。それでどんどん増えていって、17万円になった」 女性は、翌日から地方の風俗店に「出稼ぎ」へ行き、17万円の売掛を支払うつもりだという。 ーー通い続けた理由は? 20代女性 「担当ホストに会いたかったし、担当が好きだったから。叶わない恋だって分かっているけど、担当(ホスト)の傍にいたかった」 実は、相談の約9割が本人からではない。 この日は、ホストクラブにハマった20代の娘をもつ母親が相談に来ていた。娘は1年以上前から家に戻っていないという。

 

娘がホストにハマった母親 「(娘はホストに)ハマっていて、目つきが普通ではない。マインドコントロールされている目。家族は説得しようと頑張ったけど、毎日話もしたし。でも目覚めることはなかった。こんなに大切だってことを伝えてもダメで、また家出をしてしまって今に至る。音信不通です」 一緒に出掛けることの多い、仲の良い親子だった。だが、大学4年の終わりからホストクラブに通い始め、就職先も2か月で辞めたという。 娘がホストにハマった母親 「ほんとうに真面目に生きてきたんですよ。勉強も部活も頑張って。国家資格も一生懸命取って。(ホストクラブに)ハマって仕事も辞めて」 「なんにもできない自分の無力さが本当に辛かった。自分の命と引き換えに戻ってくるなら、差し出してもいいって。それでも戻って来なくて、ホストに取られてしまった。こんなに大切に育ててきたのに、取られてしまった」 ホストクラブにハマる女性たち。彼女たちを治療する施設がある。 ■ホストへの依存は「強迫的性行動症」 成功体験を重ねることが大切 横浜市内の精神科病院が管理するマンション。ホストクラブで多額の売掛を負った女性ら5人が共同生活をしている。昼は仕事に就いてもらい、夜は常駐する看護師らが彼女たちの話に耳を傾け、ホストクラブに行かないよう見守る。 1年半以上滞在する、20代の女性は…。 1年半以上滞在 20代女性 「(治療を受けて)変わりました。普通に仕事して、帰ってきて、ご飯食べて、寝る。貯めたお金を旅行や美容、ネイルとかに使う。そっちのほうがよっぽど有意義だなって。ホストにお金を使っても何も残らない」 大石医師は、ホストへの依存を、自らの衝動を抑えられない強迫的性行動症と診断している。これまでに500人以上の患者の治療にあたってきた。 大石クリニック 大石雅之院長 「水商売して金稼いで楽しい、だからそれは嬉しい。でもそれが10年後、5年後にどうなるかが見えていない。これが視野狭窄や」 「こういう病気がある。男のキャバクラ好き、ソープ好きで身を亡ぼす。ところが女にそのバージョンがあることを皆知らない。それを徹底的に言うべきだ」

 

依存症の患者は自己肯定感が低く、こうした生活のなかで、他人に認められるなどの成功体験を重ねることが大切だと話す。 大石クリニック 大石 院長 「一番は、自分がやって自分が成功することを体験すること。自分がヘルパーやって資格取る、お金稼げる。こういう自己体験の方が肯定感は上がりやすい」 ■「立ちんぼ」一斉摘発により売春は激減 ホスト依存から立ち直るには 2023年11月、大阪・難波駅周辺で大阪府警が売春の客待ちを一斉に摘発し、20代の女4人を逮捕した。 その後、この場所での売春は激減。客待ちをする女性の姿は、ほとんどみられなくなった。 ホストにハマり、売春をしていたBさん。摘発後はどう過ごしているのだろうか。 ーー今どうやってお金稼いでるの? Bさん(21) 「うーん、案件(援助交際)。サイトでちょっと見つけたり」 ーー路上の立ちんぼはしてない? Bさん 「たまにしようかなって思うけど、(摘発が)怖いから行かないかな」 警察の取り締まりが強化され、路上での売春はやめたという。今は出会い系サイトなどで援助交際の相手を探し、金を稼いでいる。 ーーホストは今も行ってる? Bさん 「私はもう行ってない」 ーーまたホストに行こうと思う? Bさん 「ないなー、掛け縛り(返済)が多いから。掛け縛りで冷めてきた」 Bさんはそう話すが、今親しくしている男性もホストで、こんな風に店に誘われているという。 Bさん 「『最低(料金)でいい』と言われたから、『分かった』って。『俺はシャンパンとか煽らねえから』『約束やで』って。1回だけ行こうかなって」