架空料金請求詐欺「かけ子」が語った手口…「未納料金あります」1日5万件請求、「返金される」と安心させだます

 

 

男が読売新聞社に寄せた手紙。手口や後悔の念が書かれている

男が読売新聞社に寄せた手紙。手口や後悔の念が書かれている© 読売新聞

 電話などで高齢者らにうそを信じ込ませ、現金などをだまし取る特殊詐欺の被害が、栃木県内でも後を絶たない。特に昨年以降は「架空料金請求詐欺」が急増し、県警は警戒を呼びかけている。なぜこれほど多くの人がだまされてしまうのか。架空料金請求詐欺に「かけ子」として加担し、現在は県内の刑務所で服役中の男に、その手口の全容を聞いた。

■「丁寧に話す」

 「未納料金があります。至急連絡してください」。架空料金請求詐欺は、そんな1通のショートメッセージから始まる。大手企業を名乗る場合もあれば、何も名乗らない場合も。男がいたアジトでは1日5万件前後のメッセージを送り、実際に200~300件の電話がかかってきたという。「相手が真剣に話を聞くのは3割、さらに信じるのはそのうち2割。1人のかけ子が1日10~30件電話をかけ、1、2人をだますペースだった」と振り返る。

 

 電話口では、本人確認と称して氏名や住所、生年月日を聞き出す。かけた時点では電話番号しか把握していないため、そこで個人情報を収集する。その後、未納料金を請求。「今日中に払わないと、明日以降裁判の手続きに入る」などと相手を焦らせる。この時、声を荒らげるのではなく、「コールセンターのように丁寧に話す」ことがポイントだ。

■様々な情報を聞き出す

 当然、記憶がないと返す人も多い。それでも「登録時の情報が残っている。登録は間違いない」と強調。そして、相手が「使っていない」と言うように誘導し、「誤認登録かもしれない。間違えて登録したり、ハッキング被害に遭ったりする事案が増えている。あなたもそうかも」と語る。利用履歴を調べるためと偽り、最近使っているSNSやアプリ、ネットショップの利用頻度など様々な情報を聞き出していく。

 その後、「登録以降、一度も使っていないことがわかった。これは誤認登録と認められるので、政府の救済措置で95%の返金制度が受けられる」と主張。そのうえで、「登録はしているので一度支払ってもらう。その後、返金制度を運用する団体から電話があり、返金手続きに入る」と話す。

 「2週間から1か月で返金される」などと話し、相手を安心させたうえで電子マネーを購入させる。そのIDを聞いて転売し、現金化する業者に売ってもうける――というのが一連の手口だ。男は「『返金される』というのが重要。身に覚えがなくても、みんな何かしら後ろめたい気持ちがあり、『もしかしたら、あれかも』と考えてしまう」と語る。

■「今日中」「電子マネー」は詐欺

 栃木県警によると、昨年は県内で架空料金請求詐欺が急増し、被害額は3億円を超えた。「『今日中』『電子マネー』という言葉は詐欺だと思ってほしい」と県警生活安全企画課・福田亮課長補佐は強調する。

 企業が料金を請求する場合は郵送が原則で、ショートメッセージで未納料金を請求することは少ない。メッセージが届いた場合、記載された番号にすぐ折り返すのではなく、「本当にその企業の番号か、その企業が存在するのか、まずはインターネットや請求書で確認してほしい」とする。

 また、かけ子は丁寧な口調で親身に接してくることも多く、「そこにだまされてはいけない。電子マネーなどの言葉が出たら電話を切り、警察に相談してほしい」とも呼びかけている。