〈 “増税メガネ”再び〉安倍派裏金、二階氏政策活動費50憶円は非課税なのに国民は1人月500円の実質“増税”…岸田首相の「子育て支援金は実質的な負担なし」論は早くも破綻へ

少子化対策の財源にあてる「子ども・子育て支援金」をめぐって、岸田文雄首相は2月6日の衆院予算委員会で「粗い試算で、拠出額は(公的医療保険の)加入者1人あたり月平均500円弱になる」と明らかにした。ただ、折しも自民党では裏金問題が尾を引き、二階俊博元幹事長が使途を明らかにしなくてよい政策活動費を「5年間で50億円」受け取っていたことも判明。「裏金も、50億円の政策活動費も非課税なのに、こちらは月500円を拠出させられるのか」と国民の怒りは収まらない。

子育て支援のはずが「子育て増税」に

政府は、少子化対策として、児童手当の対象を高校生まで延長するといった拡充や、子ども3人以上の多子世帯の大学授業料無償化などを進める。そのため、2028年度までに3兆6000億円の少子化対策財源を確保したい考えだ。

そのうちの1兆円程度と想定されてているのが、今回、1人当たり月500円弱の負担が明らかになった「子ども・子育て支援金」で、2026年度から徴収が始まる予定だ。支援金は、26年度は計約6000億円、27年度は約8000億円、28年度は約1兆円と、段階的に徴収規模が増えることが見込まれている。

岸田文雄首相(本人Facebookより)

岸田文雄首相(本人Facebookより)© 集英社オンライン 提供

首相が「1人あたり月平均500円弱」とした拠出額だが、実際は所得などによってばらつきが出そうだ。

朝日新聞(2月7日付朝刊)は、日本総研の西沢和彦理事の試算として「医療保険別の徴収額(労使合計)は、中小企業の会社員が加入する協会けんぽ638円▽大企業の会社員が加入する健康保険組合851円▽公務員の共済組合898円▽国保746円▽75歳以上の後期高齢者253円」と報道。

協会けんぽと健保組合、共済組合は労使折半のため、個人の負担は試算から半額になるというが、自営業者ら国保加入者の負担は、首相の言う「月平均500円弱」を超えそうだ。さらに、所得の高い人の負担額は大きくなる。

「実質的な追加負担なし」の論理破綻

この拠出に関して首相は2月6日の衆院予算委で「歳出改革と賃上げにより、(国民に)実質的な負担は生じない。『子育て増税』との指摘はあたらない」と強調した。

首相の言う「実質的な負担は生じない」とは、「子ども・子育て支援金」の徴収開始後も、税と社会保障の負担額を国民所得で割った「国民負担率」を上げないようにする、という論理だ。

税と社会保障の負担額を下げ、国民所得を賃上げによって向上させれば、「子ども・子育て支援金」を公的医療保険に上乗せして徴収しても、実質的な追加負担は生じないとの説明だ。

国会議事堂

国会議事堂© 集英社オンライン 提供

だが、「実質的な負担なし」論は、すでに破綻しつつある。

まず、税と社会保障の負担額は、歳出改革によって軽減するとしているが、その改革として政府は、医療費の窓口負担が3割となる「現役並み」の所得がある高齢者の範囲を拡大するなどの方策を検討しており、高齢者の負担は大きくなる見込みだ。

そのうえ、来年度には医療従事者の人件費に回る診療報酬も引き上げられるため、歳出改革が進むかは見通せない。

さらに国民所得に関しても、賃上げが進んでいるとは言い難い。首相が「月平均500円弱」という拠出額を明らかにした6日、厚生労働省が発表した2023年の毎月勤労統計調査(速報)では、実質賃金が前年比2.5%減となり、2年連続で減少したことが明らかになった。

 

「実質賃金は下がるのに、税と社会保障の負担は増えそう。そのうえ、月平均500円弱の上乗せも求められては、国民の反発は必至です」(全国紙政治部記者)

二階氏の50億円も安倍派の裏金も非課税なのに…

「月平均500円弱」の国民負担が始まることが明らかになった一方で、国民に負担を求める側の自民党議員は、『課税逃れ』疑惑を指摘されている。

6日の衆院予算委では、二階氏が受け取っていた、使途を明らかにする必要がない「政策活動費」計約50億円や、安倍派議員の裏金にも課税が必要ではないかとの指摘が野党から相次いだ。

立憲民主党の長妻昭政調会長は、安倍派議員が受け取っていた裏金も、非課税となる政治団体の収入ではなく、課税対象となる議員の個人所得とすべきではないかと首相にただした。

同党の米山隆一議員も、二階氏が幹事長時代、使途を明らかにしなくてよい政策活動費を5年間で計約50億円受け取っていたことに触れ、残額は二階氏の雑所得として所得税の課税対象となるのではないかと指摘した。

二階俊博元幹事長(自民党ホームページより)

二階俊博元幹事長(自民党ホームページより)© 集英社オンライン 提供

しかし、首相は二階氏の50億円の使い道について「党勢拡張のために使用しているものと当然、認識している」と述べるにとどめ、「(雑所得としての)申告の必要はない」と強調。安倍派の裏金も、二階氏の50億円も、このまま非課税の扱いになりそうだ。

「国民はこれから確定申告をする時期。自分たちは『課税逃れ』と指摘されるようなことを平気でして、税や社会保障の負担、さらには月平均500円弱の負担まで新たに求める立場にあるのでしょうか」(全国紙政治部記者)

「増税メガネ」のあだ名を気にして、1人4万円の定額減税を打ち出すなど、増税イメージの払拭に必死だった首相。だが、身内に甘く、国民にばかり負担を求めていては、不名誉なあだ名はまだまだ消えそうにない。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班