中国の株安止まらず、市場安定化策また不発…トランプ氏発言にも警戒感

 

読売新聞オンライン

株価の下落傾向が続く香港証券取引所(1月30日、香港で)=山下福太郎撮影

 【北京=山下福太郎】中国市場の株価下落が加速している。5日の上海総合指数は、前日に金融当局が発表した市場安定化策への失望売りが広がった。今年秋の米大統領選でドナルド・トランプ氏が当選すれば、米中対立が一段と激化するとの懸念も相場の重しとなる。

 中国証券監督管理委員会(証監会)は4日、株式市場の安定化策を決めた。相場操縦や悪質な空売り、インサイダー取引を取り締まるほか、新規上場を厳しく管理することなどが柱だ。投資家の声に耳を傾け、対応することも心がけるという。

(写真:読売新聞)

 直前の2日には、深センや上海の本土市場で一時、株価が急落する「パニック売り」(株式アナリスト)が広がった。金融当局は沈静化を狙ったとみられるが、1月下旬に米メディアが報じた株式を買い支える2兆元(約40兆円)規模の市場安定化基金への言及はなかった。

 5日の上海総合指数は、前週末に比べて一時、3%超下げた。終値は1%安の2702・18で、6日間連続の下落だった。指数は、3400に迫った直近の高値である昨年5月から2割、低下した。不動産市況や雇用の悪化による景気減速に加え、過度な規制を嫌気した外国人投資家の「中国売り」が広がっている。

 米ブルームバーグ通信は1月下旬、中国本土と香港の証券取引所に上場している株式の時価総額はピークから約6・3兆ドル(約930兆円)減ったと報じた。金融当局は昨夏以降、本土株の空売りを禁じる株価対策などを発動した。ただ、いずれも「口先介入」や「窓口指導」にとどまり、株価を下支えする効果は十分ではない。

 さらに足元では、トランプ氏の発言が売りを加速させている。4日(米国時間)に放送された米テレビのインタビューで、大統領に就任すれば60%の対中関税を検討しているとの米紙報道を認め、「(税率は)もしかしたらそれ以上かもしれない」と述べた。

 トランプ政権時に、米国は3700億ドル相当の中国製品に対し、最大で25%の関税を課している。この関税率が60%を超えれば、輸出は減少し、中国経済に与える打撃は深刻になる。

 日系エコノミストは「中国株には当面、買い材料が乏しい。中国政府が国内外の投資家の信頼を取り戻す抜本的な政策を打ち出すしかない」と指摘している。