「東京一極集中」が再び加速し地方衰退…人手不足が人口流出を招く悪循環
大阪南部で路線バスを展開していた金剛バスは、全路線を廃止に(大阪・富田林市)/(C)共同通信社© 日刊ゲンダイDIGITAL
東京一極集中が再び加速している。総務省が1月30日に発表した2023年の人口移動報告によると、東京都は転入者が転出者を上回る「転入超過」が6万8285人だった。22年の3万8023人から80%増え、23年の転入超過は新型コロナ流行前だった19年の85%まで戻った。
転入超過は東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、滋賀、福岡のわずか7都府県。残りの40道府県は転出超過となった。人口が流出すれば、深刻なのが人手不足だ。
リクルートの研究機関は、企業などで働く担い手不足は2040年に全国で1000万人に上ると予測。京都、新潟、長野、愛媛、山形、北海道、茨城、徳島で不足率が30%を超える。いずれも、今回の転出超過道府県だ。
人手不足により、医療・介護や公共交通など地域のサービスが低下すれば、不便を感じた住民がよそへ出ていく悪循環に陥る。
帝国データバンクによると、公営を除く主要な路線バスのナント81%が23年中に路線の廃止や減便に踏み切った。
ほぼすべての事業者が「運転手不足」を理由に挙げた。
大阪南部で路線バスを運行していた金剛バスは全路線を廃止。約30台のバスを17人の運転手で回していた。足がなくなれば、引っ越しが脳裏をよぎるだろう。
人口移動報告を発表した総務省国勢統計課の担当者は「転出超過の地域の人手不足の状況について、当課では把握していません」と答えた。
経済ジャーナリストの井上学氏が言う。
「コロナ流行時、『テレワークが定着し、どこでも仕事ができるようになったから、地方移住の時代が来る』と言われました。実際、東京への転入超過は一時、減りましたが、一時的だったということ。東京一極集中が再び強まると、地方は衰退の一途です」
■是正目標先延ばし「20年度」→「24年度」→「27年度」
東京一極集中の是正は安倍政権下の14年、「20年度までに東京への転入と転出を均衡させる」としてスタート。しかし成果は出ず、19年に断念。安倍首相(当時)は「24年度まで」に軌道修正した。22年には岸田首相が「27年度まで」にさらに先延ばししている。
「目標達成時期が迫ると、期限を先に設定し、取り繕っているだけに見えます。目標を掲げながら10年間、一極集中は是正できなかった。これは誰が見ても失政です。政治的責任を明らかにした上で、根本的にやり方を変える必要があります」(井上学氏)
またひとつ、安倍元首相と岸田首相の無策が露呈した。