木造密集 震災時の延焼リスク 首都直下でも 専門家「複合災害リスク要因か」

 

 

木造密集 震災時の延焼リスク 首都直下でも 専門家「複合災害リスク要因か」

木造密集 震災時の延焼リスク 首都直下でも 専門家「複合災害リスク要因か」© 産経新聞

能登半島地震では石川県輪島市の中心部で大規模火災が発生し、甚大な被害をもたらした。延焼が急速に広がった一因として指摘されているのが「木造建築の密集」だ。大都市圏も同様の課題を抱えており、対策が急がれている。

黒く焼け焦げた柱、崩れて粉々になった資材や瓦…。見渡す限り、焼け野原が広がっていた。

古い木造の街並みが広がり、輪島市の観光名所として知られた「朝市通り」周辺で火の手が上がったのは、地震発生直後の1日夕。炎は瞬く間に広がり、一帯にひしめくように立ち並んでいた家屋など約200棟を飲み込んだ。

こうした木造建築の密集は、震災時に深刻な影響を及ぼすとみられてきた。国土交通省は、地震時などに火災延焼の危険性が高かったり、避難が難しかったりする「著しく危険な密集市街地」を集計。対象地域は令和4年度末時点で12都府県の計1875ヘクタールに及び、未解消面積が最も大きいのは大阪の895ヘクタール。次いで神奈川301ヘクタール、京都220ヘクタール-と続く。

 

全体として平成24年3月時点の5745ヘクタールから減ってはいるが、各自治体とも高齢化などを理由に建て替えに踏み切れない住民らを多く抱えている。

また、国の定義に該当しなくても、古い住宅密集地は全国に点在する。東京都は震災時に延焼被害の恐れがある「木造住宅密集地域」を独自に調査し、令和2年時点で約8600ヘクタールに上るとの結果を公表している。

こうした数値は減災を目指す各自治体にとって、大きな不安材料だ。

首都直下地震が発生した場合、都内の死者は最大約6100人、建物被害は最大約19万4千棟とされ、想定される被害は甚大。住宅の耐震化などに加え、延焼を防ぐ対策の促進は減災に向けて避けては通れない。

都は老朽化した木造建築が集積するなど震災時に特に甚大な被害が想定されるエリアを「整備地域」として定めてきた。さらに、重点整備を行う「不燃化特区」を指定して建て替えに向けた相談支援、老朽建物の除去費や建築設計費・工事費などの助成を実施。「燃え広がらない・燃えない」街づくりを推し進める意向を示している。(三宅陽子)

マルチハザードリスクが要因か

東京大先端科学技術研究センターの廣井悠教授(都市防災)の話

「輪島朝市」は古い建物が密集した海沿いの市街地で、「マルチハザード」(複合災害)のリスクをはらんでいた。

一つは、木造住宅を中心とする古い建物の密集地で、燃えやすい場所だったこと。もう一つは、津波被害を受けやすい海沿いの街だったことだ。津波が起きれば逃げるのが重要なだけに、初期消火はしにくくなる。

ただ、今回は津波警報が発令される中、地元消防が消火活動に乗り出していた。判断は難しいが、結果的に延焼を食い止める効果があったのだろう。

被災地では今後も火災のリスクがある。阪神大震災では、停電復旧の際に起きる「通電火災」、東日本大震災では明かりとして使っていたろうそくが余震などで倒れて起きる「ろうそく火災」が発生した。

自宅を離れるときにはブレーカーを落とし、電気器具の損傷状況やストーブ近くに可燃物がないかを確認することが重要だ。また、明かりを確保する際にもLEDランプを使用し、ろうそくやツナ缶ランプの使用には慎重になってほしい。