当たり前のことでしょうけれど、一緒に暮らしていれば、毎日その日の様子がわかりますが、入院すると、面会した日の様子しかわかりません。

 

ただ、実際にコウが入院すると、その当たり前のことが頭から離れ、面会したときの様子のみで、コウの症状の善し悪しを自分なりに判断してしまいます。

 

担当医の話しでは、私が面会に行く日は、コウは朝から機嫌が良いそうで、私は、機嫌の良いときのコウだけを見ていたわけですから、凄く良くなっていると勘違いしてしまったわけです。

 

そんな中、事件は起こりました。

 

少し長くなりますが・・・

 

 

コウが入院していた児童精神科病棟の直ぐ隣には、金網の柵で囲まれた中庭がありました。

 

その中庭は、フットサルやハンドボールのコートの広さか、それよりも少し大きめの広さだったと思います。

 

病棟のホールには中庭への出入り口があり、入院している子ども達は、決められた時間内に、中庭で遊んで良いことになっていました。

 

 

以下は、コウから聞いた話しをまとめた事件のあらましです。

 

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その日は、決められた時間が過ぎようとしても、中庭でサッカー?(ドッチボールだったかもしれません)を続けていた子ども達がいたそうです。

 

そして、コウが中庭から病棟の中に入ろうとしたとき、そのボールがコウの頭に直撃しましたチーン

 

コウはパニック?を起こし、その場で懸命に確認行為を始めたそうですえーん

 

 

そんな中、病棟から看護師が出てきて、中庭にいる子ども達(コウも含まれています)に注意をしました。

 

確認行為を続けていたコウは、その最中、看護師に病棟に連れ戻されたそうです。

 

 

コウは、自分は何も悪くないのに(自分はルールを守っていて、ボールを頭に当てられた被害者なのに)、理由も何も聞かれずに注意されたうえ、確認行為の真っ最中にそれを遮られて連れ戻されたことに対して、全く納得ができませんでしたプンプン

 

そして、そのような対応をされたことに、怒りを募らせていったようですムキー

 

その後、その怒りは夜になっても収まることはなく、夜中に自分の病室からナースステーションの前に行き・・・、

 

 

 

ガーン、ガーン、ガーン

 

 

 

と、ナースステーションのドアを蹴飛ばしました。

 

何時頃のことなのか、何度蹴ったのか、どの程度の力で蹴ったのか、どのくらいの時間蹴っていたのかは、コウはあまり覚えていないようです。

 

ドアを蹴ったことで、多少スッキリしたのか、その後は、自分の病室に戻って直ぐに寝ました。

 

 

その翌朝。

 

コウは、一晩眠ったためでしょうか、昨夜の怒りは収まっており、普段通りに過ごしていました。

 

ところが、午前中にコウが病棟の廊下を歩いていたところ、

 

 

男性看護師3~4人にいきなり腕などを掴まれ、

 

 

保護室(閉鎖個室)に連れ込まれ、

 

 

保護室内のベッドの上に仰向けに寝かされ、

 

 

両手、両足、腰の三カ所を帯でベッドに固定されましたえーん

 

 

両手は、左右に開いた状態、両足は若干開いた状態で固定されたそうです。

 

死にもの狂いで抵抗したようですが、小学6年のコウにとっては、大人の男性3~4人が相手では、為す術もなかったと思います。

 

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こうして、コウにとっては訳の分からないままに身体拘束がなされてしまいました。

 

ひょっとしたら、拘束をされる前に、病棟担当医から拘束することやその理由を告げられていたのかもしれません(私の想像ですが・・・)。

 

しかし、たとえそうであったとしても、コウにとっては、そんなことはどうでも良かったのでしょう。

 

・・・何をするんだ!・・・

 

・・・これからどうなるんだ!・・・

 

・・・離せ~!・・・

 

ただただ、そういう気持ちで一杯だったのではないかと思います。

 

 

この日の午前中、コウの病棟担当医から私の携帯電話に、コウに身体拘束を行った旨、連絡がありました。

 

精神科病院において、隔離や身体拘束等の行動制限がなされることは、もちろん知っていました。

 

しかし、コウは、普段生意気な口の利き方で怒りっぽい性格をしていますが、たとえOCDを患っているとしても、自殺、自傷はもちろん、他人に対して暴力的行為を働く子では決してありませんから、このような行動制限は、コウとは全く無縁のことと思っていました。

 

まさか、まさかコウがそのような処遇を受けるとは・・・

 

私にとって、まさに、青天の霹靂でした。

 

 

このときの身体拘束は、結局、1週間続けられました。

 

拘束が解かれるのは、排泄と入浴のときだけで、食事のときは、手の拘束だけが解かれたそうです。

 

また、身体拘束の期間中は、面会ができませんでした。

 

 

コウの話しでは、拘束中は「天井を見る以外に何もやることがない」とのことです。

 

実際のところ、経験した者でないと、拘束の辛さがどれほどのものかは分かりませんが、このコウの言葉から、想像を絶する相当の辛さだったことは理解できました。

 

 

後日、コウの病棟担当医から、コウの行為(ドアを蹴ったこと)と、今回の処遇についての説明を受けました。

 

その説明によれば、他の子ども達と関わりを持つことが増えたことによって、脳に入る情報量が多くなり、自分で処理できなくなっているため、情報を遮断することを目的として、このような処遇をとった、

とのことでした。

 

 

当時、私は、病棟担当医の説明にとりあえず納得していました。

というよりは、精神科病院とはそういう所という先入観があり、自分で自分自身を勝手に納得させたのかもしれません。

 

しかし、今改めて処遇の理由について考えてみると、隔離をする理由としては適当な説明であったかもしれませんが、身体拘束をする理由としては不十分なようにも思えます。

 

 

余談ですが、事件の発端となって場所だった中庭は、事件から数ヶ月後に、そこから注射針が発見されたため閉鎖になり、その後、アスファルトで舗装されて駐車場になりました。