ある日、その彼が有名人と交際していることが、メディアで明らかになった。
写真を見たわたしは、こんなものでいいの?と正直笑えた。
不思議なくらい現実感がなく、嫉妬も湧かなかった。
しかし、気にはなる。
検索をかけて、調べてみると、有名店の売り子でもあるらしい。
どんな店なのか。
店をのぞいては見たが、もちろんいなかった。
他の売り子に何か聞こうとも思わず、のぞいただけである。
ずっと後に分かったことだが、すでにこの時、相当お腹が大きかったはずで、いるはずもなかったのだ。
そう、ずっと後になって、その彼の奥さんとなった人が嫌がらせをされたと噂が流されたとき、誰かそういうことをした人がいたのだろうかと、本人にたずねたことがある。
――奥さん嫌がらせされたんだって?
彼はキョトンとして、返ってきた答えが秀逸。
――誰の?
交際が明らかになってしばらくの後、結婚が発表された。
わたしの応援する気持ちは変わらなかった。
彼のプレイのよいところも悪いところも知っている。
2軍で終わる選手だとは思っていなかった。
選手として、すごくよいものも持っているのだ。
わたしに優しくしてさえくれれば、プライベートなんか気にしない。
結婚してすぐに、1軍の試合で初めてのブレイク。
初めて彼の力を、人々に見せつけた試合となった。
練習場で声をかけたわたしに、彼はじっくりと相手をしてくれた。
やっと、みんなに、わたしの応援している人がいい選手だと分かってもらえて、わたしは嬉しい――そういう内容の手紙を先に渡してあった。
――僕も嬉しかったです。
彼はまずそう言って話し始めた。
途中、奥さんから電話が入った。
――今、ファンの人にサインをしているから。
彼は、そう言って、奥さんからの電話を切ってくれた。