この小説を読んで３週間が経ちました。

まだ、重い気持ちを引きずっています。

だけど、嫌な気持ちになる本は、生き方を教えてくれます。

神さまを待っている　　畑野智美

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≪あらすじ≫

３年間勤めた会社から派遣切りされた主人公・愛は、正社員にこだわって就活をするがうまくいかない。

切り詰めても、貯金を取り崩しても、やがて家賃が払えなくなる。

家族は頼れない。友達には言いたくない。

そんな愛が選んだのはホームレスになること。

ネットカフェで暮らしながら日雇いのバイトをする愛の生活は、この先どうなる？

感想

精神力も体力も奪われ、思考力も低下していく愛の姿は、読んでいてかなり重い気持ちになりました。

愛は貧困女子になりたくてなったわけじゃないけれど、読者としてはほかにも選択肢があっただろうとイライラしてしまいます。

だけど、そんなふうに思うのは、愛と同じ状況じゃないからかもしれません。

愛のバックグラウンドや性格もしっかりと描かれていて、だからこそ選んだ道だとわかるけれど、いや、でもなぁ……という感じでした。

愛の嫌なところ

※ここからネタバレを含みます。大きくバレないようにしますが、まっさらな状態で読みたい場合は、小説を読んでからでお願いします！

・同じ立場の人を見下している

愛は日雇いのバイト先や出会い喫茶で出会った人から、「あなたはわたしと違うって、見下しているよね」というようなことを言われます。

愛の態度から、「これはわたしがする仕事ではない」というプライドの高さが見え隠れしています。

また、周りの人に対して、「生活保護の申請をすればいいのに」とか、「この人がこの状況から抜け出すためにはどうすればいいんだろう？」と考えている（お節介を焼いている）のが透けて見えて、自分の環境や状況を受け入れている人から嫌悪感を示されます。

それより、自分を客観視したほうがいいのでは？

と読んでいてイラっとしますが、自分のことを棚に上げて他人のことをあれこれ言いたくなるのは、愛と同じなのかも。

・すぐに「できない」と言う

就職の話があるのに、「自分にはできない」とか、「できるかどうかわからない」と、愛はすぐに言います。

今の生活から抜け出すことよりも、チャレンジして失敗することのほうが、愛にとってはダメージが大きいのかもしれません。

愛の良いところ

・決断の基準を持っている

すぐに「できない」と言うけれど、できる・できない、したい・したくないという決断の基準をしっかりと持っています。

日雇いバイトの事務所で正社員の誘いを受けたのに、即座に「無理」と言って断ります。

正社員にこだわっていたのだから働けばいいのに……と思ってしまいますが、その職場はモラハラ、セクハラが当たり前。愛は経験上、それがわかっていました。

正社員の働き口は逃したものの、そのあとの苦痛や苦労を考えれば、断ったのは賢明な判断だったのではないでしょうか。

また、どんなにお金が欲しくても、出会い喫茶では肉体関係は持たないというように、自分ルールを決めています。

・まっすぐなところ

人を疑わない、お人よしなところがあります。

相手を悪く思いたくないという気持ちが強く（そんなところも読んでいてイライラしてしまいますが）、だからこそ土壇場で助けてくれる人もいるので、愛の長所だといえます。

婚活と共通する部分はある？

愛は学生時代の友達に自分の状況を知られたくなくて、連絡を絶ちます。

ネットカフェで知り合った同年代の女性と仲良くなり、その人の言うことを信じます。

結婚している友達に引け目を感じて疎遠になり、同じ境遇の人に居心地のよさを感じるという点は、婚活と共通していると思いました。

婚活仲間と一緒にいると、情報を共有したり、気持ちに共感したりできる良さがあります。

それから、愛に熱心にアプローチしてくれる出会い喫茶の客がいて、「この人と付き合えば、結婚して、この状況から抜け出せる」と想像します。

今のところ好きではないけれど、条件もいいし、好きになろうと頑張るのも、婚活をしている人なら一度は経験したことがあると思います。

重く苦しい物語が教えてくれること

第三者として、そして読み終えたから言えることだと思うのですが……

わたしが思う、愛がとればよかっただろう行動は

・周りの人を頼る

・視野を広げる

・情報を集める

の３つです。

同じ境遇の人から冷たくされたり、裏切られたりしても、自分を心配してくれる、本来の自分を知ってくれている友達には連絡しませんでした。

でも、本当に信頼すべきなのは誰なのか、よく考えればわかったはず。

ネットカフェで暮らしながら正社員の働き口を見つけるのはハードルが高く、本末転倒ではないかと思いました。

派遣とバイトを掛け持ちすればなんとかなったのでは？　まかないが出る飲食店でバイトをすればよかったのでは？　と思ってしまいました。

ネット環境もスマホもあるのに、愛は新しい情報を得ようとしていませんでした。

これらはわたしの感想です。

今、苦しい状況にある人に、「これをやったらいいよ」と押し付けたいわけではありません。

重く苦しい物語が教えてくれるのは、自分にとって大事なこと、そして、必要としていることだと思います。

今の自分にとって大事なことを確認させてくれた、良い物語でした。

わたしに在り方を教えてくれた小説

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２０代でこの小説に出会い、「松子のようにならない生き方をしよう」と心に決めました。

松子という女性が亡くなった後から物語が始まります。

世の中や周りの人をうらんで死んでいった松子の人生を、松子の親戚の男性とその恋人がひも解いていきます。

不運が重なったり、出会う人が悪かったりした松子の人生ですが、もともと頭が良かった松子が人生を立て直すチャンスは何度もありました。

この物語を読んで、

・できるだけ人に流されない

・自分で決めたことを人のせいにしない

・「違う」と思ったらやめる勇気を持つ

と、決めました。

決めた後に、人に流されたこともあったけれど、強く心に決めたからこそ、軌道修正ができたこともたくさんありました。

もう１冊

判断を間違い、人生があらぬ方向に進んでしまった。でも、松子と同じように立て直すチャンスはあったと思う物語です。

読んだ後、寝込みました。

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