時速六十キロで感じる風は女性の胸と一緒の感覚であるという。
その風の魅力に取り憑かれた和泉長次郎は今日も風を楽しみ、酒を飲み、下品な会話をして回る。
一方、真っ当に生きる親友、淡路浩太は彼の偏愛を更生すべく奮闘する。
「幸せになりたい」と願う人は多くとも、既に幸せであると開き直れる人は少ない。
「幸せになりたい」と願う人は自分の思う環境にない人を不孝だと決めつけ、お節介を焼いてしまう。
己が当たり前だと思っているものが他人にとって当たり前とは限らない。長次郎の常識か浩太の常識か、答えは風のみぞ知っている。
「偏愛」をテーマに書いた短編集「あの心地を求めて時速六十キロ」略して「あのここ」の表題作。
第十八回文学フリマにて頒布予定。
上住断靱他七名が参加した文学アンソロジー。
近日中に執筆陣公表予定!