とべるひとよ | 山口粧太オフィシャルブログ『東京生活』

とべるひとよ


オリンピックが始まるよ!誰が金メダル!?

と訊かれても、ピンと来ないというか、TVもCMも未ださほど盛り上がってませんな。
まあスポンサー重視の近代オリンピックでは、大人の事情とか戦略とが、誰が鉄板とか大穴とか色々あるのでしょう。
とは言え、個人的には内村君の1等賞に単勝1万円です。

何故なら、あたし、むかし、体操部にいたからです。

小4の時、右にならえで野球部に入ったのだが、50人近く部員がいて、サードの守備練習に並ぶ行列にすぐに飽きてしまい、そのままグローブを頭に乗っけて体育館へフケてしまった。
外の暑さに比べ、体育館の中はひんやりとして心地いい! 野球部専用の「バッチなんとか~」みたいな訳の解からん掛け声もせんでええし、なにより静かぁ~!、孤独っ~!、と、プチ軽井沢御一人様を堪能していたのだが‥、どうやら他にも先客がいたようだ。

お、体操してる連中がいる。え、なんと、女子、多し。

ざっと数えると、女子が5名で男子が4名。
えー、自然の摂理?を尊ぶ俺は天命に従い、その日の内に転部した。
「だから内村君を応援するのです」と、めっちゃ端折り過ぎだが、まあそんな訳です(その後の体操部日記はまたあらためて)。

そんなエピソードに関連するのかしないのか、最近の関心ネタをお知らせします。
先日のロケ先での事。メークさんに呼ばれて鏡前に座った。

「山口さん、また無駄に日焼けしてますね」
「歳とると、趣味が近所の徘徊ぐらいだからねえ」
「あ、長い眉毛見~っけ。歳ですかねえ」
「うむ。本田博太郎さんはどうなの?」と、今回久しぶりの先輩俳優の様子を訊いてみた。
「もちろんもっと無駄に日焼けしてますよ。で、『俺、メーク要らないよ』ですもん」
「素晴らしい。自然体の姿を晒してこそ俳優。ってなってくるんだよキミ」
「でも私が監督とかカメラマンに叱られるんですからね。今日はめっちゃ塗らさせていただきます」
「やれやれ‥」

見事に若返った厚塗りの顔をぶらさげ控室に戻った。そして煙草を1本吸い終える頃、ドアを叩く音がした。

「山口さん、出番にはもう少し時間がかかりそうです」と、見慣れぬ制作スタッフが汗だくで入ってきたので、「了解。すごい汗だね。少しここで涼んでいきなよ」と座布団を放り投げた。
このスタッフ君、今回は応援で呼ばれたようで、普段は戦隊物のキャスティングを任されているという。

「あそう。しかし夏場の戦隊物は暑くて大変だね。熱中症が心配でしょ」
「おっしゃる通りです。と言うかそれよりも、人手が足りないのがもっと深刻なんですけどね」
「人手?」
「アクションの俳優さん、いわゆるスタントマンが全然足りないんです」
「へえ、知らなかった」
「昔は大勢いたんですけど、最近はアクションは流行らないんですね。あ、もちろん番組は沢山あるんですよ」
「うん、意味は判るよ。要は成り手が減ったという事でしょ」
「そのようです。毎回、よその番組と取り合いなんですよ」
「へえ」

言われてみれば俺が子供の頃は、猪木さんや馬場さんやザ・ファンクスに熱狂し、皆がブルース・リーやジャッキー・チェンの物真似をし、ドラマと言えばアクション全盛。いつかは優作さんや真田さんみたいになりてえなあと思ったものだ。
特に真田さんの影響は絶大で、「千葉さん主催のジャックに入れば、いつかは俺も‥」と夢を追う連中が大勢門を叩いたのだ。確か多い時は数千人もの人間を抱えていたと思う。
そして戦隊物でシヨッカースーツを全身にまとい、「イ~ッ!」という台詞?を発し、蹴られたり飛び降りたり爆死したり‥、言わば下積みが当たり前の時代であったのだ。
しかし頑張るやつは監督も見ているもので、「今度は役を付けてやるぞ。ショッカーじゃないぞ」「イッ~(嬉しい)」と、少しずつ階段を昇ったり下りたりしながら、汗と文句をスーツの中にドロドロに吐き出していたのだ。
今では、何とかボーイとか、モデル出身のイケメンとかが簡単に主役に抜擢される時代になってしまい、裾野で頑張る連中には益々チャンスが無くなってしまった。
誰のせい?という事も無く、これが時代の流れ。仕方ない。

「俺がもう少し若かったらなあ。手伝うのになあ」
「ははは。中年ライダーですね」
「ちげーよ、ショッカーだよ」
「ショッカーは暑いですよ」
「でも、どうらん塗らなくていいでんでしょ」
「そりゃそうですが‥」
「俺、体操部だったし」
「しかし山口さん、そんなにギャラは良くはないですよ」
「あそう。じゃあやらない」

あ、俺みたいなのが、元凶か。

出てこい、飛べる人よ! 頑張る君を応援します。

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風靡の頃の俺。この頃、既に跳べなくなっていた。内村君とは何がちがうのだろう。