愛をください | 山口粧太オフィシャルブログ『東京生活』

愛をください

先日読んだ新聞の記事に、

- 政府は大学、高校などの卒業後3年以内は新卒扱いとするよう経済界に求めており‥

というのがありました。
御存じの方も多いはずですが、どんな感想を持たれましたか?
私もアレコレ考えたのですが、結局意味が解らないままです。
もちろん就職氷河期の救済という政府の意図は読み取れるのですが、やはり子供手当と同様、ヤッツケのような気がします。社会人が増えなければ税収も増えませんしね。
3年の猶予を貰えれば、よしこの期間にMBAを所得するぞ、という人もいれば、シメシメあと3年も遊べるぞ、と考える人もいるでしょう(もちろん私は後者ですが)。
でも思うに、この二択は少数派であって、多くの浪人生たちは就職セミナーと称する、胡散臭い予備校の様な所にせっせと通うんでしょうな。ソニースクールとか、フジテレビ学院とか(そんな施設はありませんが、まだ)。

最近の事ですが、元俳優の友人が務める内装の現場に応援で駆り出されました(貧乏俳優は何でもできるのです)。
大手ゼネコンが施工する巨大な建物で、若い監督さん達が沢山いました。
が、揃って皆、おとなしいのです。
中には、何も言わずにジロジロ傍で見ているだけの監督さんもいて、友人に、

「あの若い監督君、何も言わないんだね」と訊くと、
「あいつはね、こっちから話しかけないと何も喋らないんだよ」
「ご苦労さんとか、進み具合はどう?、とか普通言うだろ」
「なんにも。注意とかもしないし」
「へえ。それじゃ職人に舐められるんじゃない?」
「だから何も喋らないんだ。職人と喋れば、怒鳴られるばかりだからね」
「理系のエリート大学出たのに、無理やり現場監督やらされてるって感じだな。本当は設計だけしたいとか」
「賢いかもしれないけど、バカばっかだよ」

別のフロアでは、かれこれ2時間以上、一人で重い資材の片づけをしている監督さんがいました。もちろん暗い顔をして。
彼は自分の腕時計ばかり、チラチラ見ていました。
またしても違和感を憶えた私は友人に、

「あの監督君は、時間ばっか気にしてるけど」
「早く帰りたいんでしょ。もうすぐ5時だし」
「え、こんな突貫の状況なのに?」
「全然気にしてないよ。この前なんかスゲえ大変な日に、今夜は寿司屋で食事会なんです、って帰った監督もいてさあ。もう笑っちゃうよ」
「それじゃあ工程が滅茶苦茶になるわな」
「そう。職人も、やってられるか、って残業しないで帰っちゃうし」
「そりゃそうだ。音頭取りがそんなんじゃ、みんな帰るわな」
「ヤツら(ゼネコン)の上司も現場に残らないで早々に帰っちゃうしね」

あと少しで帰れるかもしれない監督君は、何度もため息をついていました。
それを見た私は、呆れるというより、可哀相に思いました。
その昔、景気の良い頃は、日雇いの酒臭いおっさん達を常時2、3人連れて、一緒に片づけをしたり、ブルーシートを敷いたりしてワイワイやっていたのです。若旦那!とおだてられたりしながら。
そうやって人の使い方や、細かな仕事の手順を覚えていったんですな、多分。
そんな愛すべきダメダメなおっさん(人生のベテラン)達を雇う予算も、今のご時世では、どうやら無いようです。
私は友人に言いました。

「人が育つには、人が必要なんだよ。こんなんじゃ、辞めちゃうんじゃない?」
「多分ね。でもどんどん新卒が入ってくるから会社は気にしないんでしょ。大手だし」

……
ハードディスクに溜め込んだ、ある1本の映画を観ました。
タイトルは既に削除してしまったので忘れてしまいましたが、仲のいい2組の夫婦が互いの伴侶とデキてしまうという内容のものでした。
ホームパーティーの最中に、飲み物を買ってくるわね、とA家の夫人が言い、B家の亭主が、じゃあ僕が運転しよう、と出掛け、いなくなったと同時にB家の夫人とA家の亭主との情事がキッチンで始まり、買い物に出掛けた2人は、車の中で、みたいな。
皆、自分の伴侶の事は疑っていないのですが、徐々に事実が明るみに出てきます。
亭主達は火遊び的な感じなのですが、夫人達は本気で苦しみ始め、クライマックスではそれぞれの夫人が自分の亭主に告白するのです。
「あなたは愛してくれないじゃないの。女はいつだって誰かに愛されていたいの。愛してくれる人が必要なのよ」

……
少子化に伴い一人っ子の家庭が増え、両親に過保護に育てられたが故、我儘に育ってしまう子が多いそうです。
そして兄弟もいないので、仕切る事も憶えられないらしいのです。
彼らにしてみれば、愛される事はあたりまえ、というか、おそらく無意識だったんでしょうね。

大事なこと。それは、愛することなのです。 ちょっと面倒だけど。

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新宿御苑に寒桜が咲きました。
毎年、新しい花を迷いなく咲かせます。万物からの愛情のおかげで。