洋裁系男子 | 山口粧太オフィシャルブログ『東京生活』

洋裁系男子

「ミシンを踏む」 と時に言いますが、アメリカ人のクリスはこれに疑問を呈します。
「なぜ踏むの?足で踏んだり蹴ったりしたら、ミシン壊れるでしょ」
ああそうか、最近のミシンはペダルが無い?と思い、
「えーとね、ミシンを、ミシンをかけるんだ」 と言い直してみると、クリスは、
「何にかけるの?ソルトみたいに?Pass me the ミシン!」 だって。確かにそだね。マイク
*英語では、use a sewing machine と辞書に載っとります。

死んだ母は洋裁が趣味だったので、旧式の足踏みミシンを毎日のように使っていました。
私が小学校から帰宅すると、家の奥の南向きの部屋から、ガタガタガタとミシンを踏む音が、いつも聞こえていました。
母はなにか始めると夢中になってしまう性格だったので、私が 「おやつは?」 といくら駄々をこねても (クリス、こねるとはね・・まあいいか)、「もうちょっと待って」 と、しょっちゅう待たされていたのです。
そしてようやく、おやつのマドレーヌがガスオーブンから出てくるのは、いつも夕食の直前でした。しかも既に冷めてるし。
そうは言いながらも、そんな母がいたおかげで、私は姉のお下がりの赤やピンクの服を着ることはなく、渋い男らしい服?を幼少の頃はよく着ていました。
特に小学校の入学式用に縫ってくれたツイードのジャケットは、だいのお気に入りでした (ちょっとチクチクしたけど)。

私も物づくりは好きなほうなのですが、裁縫だけはどうしても好きになれません。
ボタン付けとかは、吐き気を覚えるほど嫌いなのです。
いつだったか、外れたボタンを縫うのが億劫で、接着剤で服に貼り付けたことがありました(使用不可能のボタンになりましたが)。
やはり男子たるもの、お針ごとなどできぬわ!と避けてきたのですが、先日TV番組でさんまさんが、
「俺は家でいつもミシンかけとるし、革も縫える高いやつも持っとるで」 と話していたのです。
これには驚きました。しかし同時に、へえ素敵だなーと感心してしまったのです。

 実は食わず嫌いなだけで、案外楽しいのかも?キランっ

単純な私は早速、以前から寸法を直したいと思っていたコートを手がけることにしました。
そうは言ってもミシンは持っていないし、いざ買ったとしてもチンプンカンプンなのは目に見えてます。
で、いろいろ調べてみて・・ 
見つけたんですよ!ミシンのレンタルスペースとやらを。
そこでは多種類のミシンが常設されていて、時間貸しでどのミシンを使ってもいいらしいのです。
使い方を教えてくれる先生もいるとのことで、見学がてら、アポなしで押しかけてみることにしました(実は電話だと未経験者は断られるかも?というのが真相アセアセ)。

「こんにちは、ミシンを使いたいのですが」
「はいはい。どういった物をお縫いですか?」
「このコートを直したいんですが、実は私・・」
「はい」
「まったくの素人なんです」
「ミシンを使ったことがない?」
「つゆほども」
「なるほど・・ じゃあ先生に教えてもらいながらやりましょうか」
「いいんですか?やった! あの、それと料金は?」
「ミシンだけの使用だと時間600円で、先生の指導付きだと400円プラスの千円です。でも先生は今、具合が悪くて」
「はあ、今日は無理ですか」
「2階で休んでるんですけど、一応呼んでみますね」

やはりアポ無しはまずかったかな・・と反省しているところに、ミシンミシンと おいっ、 階段を踏む音が聞こえ、先生らしき御夫人が姿を現しました(私の母ぐらいのお歳かな)。

「う~~ん、ごめんなさい。どうも具合がすぐれなくてね」 頭を押さえながら話す先生に、助手らしきかたも心配の様子だったので、
「いえ、ダメモトで来たので、改めますよ」 私がそそくさとコートをしまいかけると先生が、
「まあまあ、せっかくおいでになったのだから、やっていけば?」 と優しい笑顔でおっしゃってくれました。
「でも私はまったく経験が無いので、えらくご迷惑をかけると思うのです」
「まあいいから。このコートを直すのね?」
「は、はい」
「いきなり上級者向けだけど、頑張りましょう」

先生は道具の使い方、そして作業の手順を丁寧に説明してくれました。と言うより、どんどん御自分で仕事を進めていくのです。

「先生、お疲れなのにいいですよ」
「手を動かすと・・ ね・・ 気分が乗ってくるのよ・・ ほら、ここよく見てて」
「はい。さっぱりわかりません」
「あはは、そうよね。まあ、たっくさん解体する分には構わないわ。縫うのはワケないから」
「なるほど」

とはいえ、何重にも糸が縫い合わせてあるので、そう易々とはいきません。
ん?え?と、早くも泣きを入れる私に先生が、

「結構面倒でしょ。お直し屋さんでも安くないと思うわよ」
「ええ。来る途中にひやかしで訊いてみたら、1万5千円かかると言われました」
「そうでしょ。大変なんだから」

しかしさすがに先生の手際は見事で、アレヨアレヨとう間に右半分が解体されました。

「はい。残りはウチでやれば、次回はもう縫うだけよ」
「ありがとうございました」
「最近は男性のかたもよくいらっしゃるし、遠慮しないでいつでも来てちょうだい」
そして、とりあえずの必要な道具をメモにおこしてくれて、「あとの他の道具は教室のを使えばいいわ」 とか、「しつけ糸は“しろも”と言うのよ」 とか、終始親切にしていただきました。
「ホント楽しかったです。あ、料金をお支払いしないと」 そう私が尋ねると助手のかたが、
「先生どうしましょう?1時間たってないんですけど」
「なら、600円ね」

!! いいのかな・・(笑) 感謝

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・・・・
24ヒデノリの打点と盗塁に興奮したヒデノニャが、「裁縫もいいけど、おいらを描け!」 と言うのでそろそろ描きますか。
「あ、でも解体が終わってないし、撮影もあるから」 と言ったらいじけました。

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代貸の役。だいがしと読みます。まあ・・ふつ~の人じゃないわな。ムンクの叫び