とあるテレビ番組でボクシング解説者が集まり、古今東西のボクサーのなかで誰が史上最強なのか議論していました。
タイソン、レナード、チャベス、ロイ・ジョーンズ、トリニダードなどそうそうたるボクサーの名が挙がるなか、結局落ち着いたのが、モハメド・アリ。
彼を最強とする理由は、その抜群の対応力にあるといいます。
モハメド・アリは、磨きあげた自身のファイトスタイルで勝負するというより、相手ボクサーのタイプに合わせて柔軟に戦法を変えて戦いに挑んできました。
だから、どんな敵を相手にしても戦い方に困らず、本来の実力を発揮できたのですね。
その結果、61戦56勝37KOという輝かしい戦績を残すにいたったわけですが、そこには、パンチ力、スピード、テクニック以上に、彼の対応力によるものが大きかったのでしょう。
相手に合わせて自在に自分の姿を変えてみせる有用性は、かの剣豪、宮本武蔵も“水”の性質にたとえて「五輪書」に記しています。
ところで、私は編集の仕事に携わっているのですが、仕事柄たくさんの人とお出会いします。特に多いのがクライアントであるホストさん。
ホストと一口に言っても、実にさまざまな性格・タイプの方がいらっしゃいます。
そんな方たちと良い仕事をしようと思うなら、やはり相手に合わせたコミュニケーションをとるのが望ましいのではないでしょうか。
自分の性格はこうだから、コミュニケーションの取り方も性格通りの一種類だけ。それで全員と渡りあっていこうというのは、あまりにも想像性に乏しいように感じます。
どんなホストさんが相手でも大丈夫。話も弾んでお互いに気持ちよく仕事ができる。
願わくばそんな編集者になりたいものです。
幸いにも編集部の先輩にそういう人がいるので、ぜひ見習いたいと思います。
『肯定の繰り返しが信念につながる。その信念が深い確信になると、物事が実現し始める』
――モハメド・アリ