米国・オバマ大統領の訪越 | ベトナムからの風

米国・オバマ大統領の訪越

今夜、米国のオバマ大統領がベトナムを訪れる。

米国の大統領としては、2000年に訪れたクリントン大統領以来だ。

今、ベトナムは厳戒態勢が敷かれていると情報が入る。


そりゃそうだ。

3月来のメコンデルタ地域の大干ばつ。

1999年ごろから大きくなり始めた南シナ海の問題。

近々では、先月のフォルモサ事件からのデモ行進と続き、オバマ大統領の訪越もすべて対中を意識している。



そういや、ソンミ村大量虐殺事件以降、2009年に米国でウイリアム・カリー元中尉が謝罪した際、ベトナムで現地民の想いを取材し、記事を書いたことを思い出した。


そのとき、オバマ大統領の訪越の話していた男性がいた。


それの予測が、今夜実現する。




2009年9月26日、WEB新聞のJANJANに僕が寄稿した記事。


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「ソンミ事件」カリー元中尉なぜいま謝罪?

「オバマ大統領の訪越と関係?」「本人が現地訪れて謝罪を」


 ベトナム戦争中の1968年3月、南ベトナム(当時)の村を襲撃し、女性や子どもを含む504人を殺害した「ソンミ村大量虐殺」で、米陸軍部隊を率いたウィリアム・カリー元中尉(66)が、先月22日までにジョージア州コロンバスで、「41年の沈黙」を破り謝罪したと、米メディアが21日に伝えた。このことは、ベトナム全土でも大きく報じられた。

 カリー元中尉は事件について、「良心の呵責(かしゃく)を感じなかった日は1日たりともなかった」と述べた(フロリダ・トゥデイ 8月22日)という。なぜ今になって謝罪したのだろうか。




ベトナムで報道されたカリー元中尉の謝罪の記事を読むチュン・ゴック・ロックさん。「裏に政治的な何かがあるのでは?」

 ベトナム・ホーチミン市在住のチュン・ゴック・ロックさん(48)は、78年から約2年間、クメール・ルージュとの戦いにベトナム軍の衛生兵として参戦した過去がある。「今回の謝罪の理由は簡単。政治的に米国は戦勝国ベトナムを味方につけたいだけでしょう」と笑顔で話した。

 「現在、米国は、独裁的ともいえる共産国家・中国の脅威を意識しています。数年前からベトナムでも報じられている南沙諸島の領有権問題では、全国紙の「トイチェ」や「タンニエン」が報じたように、中国は今、ベトナム、インドネシア、マレーシア、フィリピン、ブルネイ沖の海域に9つのボーダー(国境線)を張り、諸島を含む海域を『わが国』だと主張しています。油田とガス田を独占しようとしているのです。近い将来、バラク・オバマ米大統領がベトナムを訪問する可能性があるかもしれませんね」




ソンミ村虐殺事件記念館で館長を務めるファム・タン・コンさん。カリー元中尉が実際に村に来て、「本当の意味の謝罪を」と願う

 ソンミ村事件の生存者のひとり、ファム・タン・コンさん(51)は、現在、ソンミ村虐殺事件記念館で館長を務める。10歳のとき、5人の家族を目の前で米兵に殺害された。「今になって謝罪したのはなぜなのか、わたしも疑問に思います。虐殺された504人の霊魂が、彼に今、謝罪させたのでしょう。ただ、誰かの命令によって、口先だけで謝ったとすれば、それは許される行動ではありません」と、心のうちを語った。

 「虐殺を逃れた人たちは今、貧乏な1人暮らしのお年寄りばかりです。わたしは『すみません』という言葉だけではなく、実際にカリー氏自身がここに来て、行動で謝罪して欲しいのです。人間は誰しも、良いことばかりではなく悪いこともします。しかし、悪いことをしたときには、すぐに謝り、行動で対処することが、人間の一番大切なことだ、とわたしは思います」




8月18日のベトナム全国紙「トイチェ」と「タンニエン」。1面に大きく南沙諸島領有権問題の記事

 カリー元中尉の謝罪の本当の理由は本人にしかわからない。ロックさんが話すようにオバマ大統領の訪越はあるのだろうか。そして、ウィリアム・カリー元中尉は生きている間にソンミ村を訪れ、コンさんの言う「本当の意味の謝罪」 は実現するのだろうか。


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ロックさんが2009年に話していたオバマ大統領の訪越が実現した。

これからのベトナムは、どのように動くのだろうか。

期待と不安が交差する。