卒業 | Ys Notizen

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ハウステンボス歌劇団をひそかに応援するYpsilonの備忘録。ときどき日常のことも。




入学式の日、学部で集められた私達1年生に、ある教授が言った言葉が未だに忘れられません。

「まさか金儲けしようと思ってここ、文学部に入ったヤツはおらんやろな。」

みんなそれを聞いてヘラヘラ笑ってたけど、心の中では疑問や不安が渦巻いていました。
長い冬を乗り越えてここに入ってはみたものの、正直何がこの先待っているかなんて誰も知らなくて。

じゃあ、ここでは何をするんだろう…?


「文学部は、死者と対話するところや。」


死者と対話…???


何かわかんないけど、とにかくかっこよかった。


そんな衝撃的な初日から今日まで、あっという間の日々。


分からないままに死者と対話するつもりで本を読み始めたら、本の活字を通して作家の想いが自分の中に飛び込んできました。
本にしたい、後世に残したいと思って書かれた作家の人生を賭けた一字一句は、ときに大学生の私が受け止めるにはあまりに重く、読んでいてとても辛いこともありました。

それでも、いろんな時代、地域にたくさんの成功や失敗、夢や現実、希望や絶望があるんだということを知り、それらは一見バラバラなようで実はすべて主体が「人間」だということで共通しているのだ、ということを学べるのが読書の一番の醍醐味なのではないか、と思いました。

先人からの教えを生かしていくのも人間だし、教えから学べずに同じ過ちを繰り返してしまうのもまた人間なのです。



…もちろん、生きた人間ともたくさん話をしましたよ 笑

学部の同級生はみんな個性的で、私達の畑特有の自虐性を持ちながらも何か一つは必ず譲れないものを持っていました。
興味の対象がみんなあまりに違いすぎて、研究室はバラバラの所へ進んだけど、お昼になるといつも大講義室に集まってきて、購買パンやカップ麺を食べながらくだらないことについて真剣に議論する毎日でした。
何気ない会話の中の、すばやくて少し毒のある言葉のテンポ感が大好きでした。

今日も久しぶりに揃ったいつものメンバーは、1年の頃からちょっぴり大人になりつつも、でも相変わらず個性的でした。
袴で飾ったってスーツでキメたって、やっぱりいつもの同級生だ 笑


私達はそれぞれこれからいろんな地域でいろんな仕事に就くけど、大学時代に磨いた毒矢を懐に忍ばせて、しれっとした顔で社会に溶けていくんだと思います。


私も4月から就職します。きっと想像できないくらい忙しい毎日が待ってるんだと思いますが、本を読むことだけは忘れないように… 多分たくさんの死者たちが、迷ったり困ったりしている私に声をかけたくてうずうずしてるだろうから。

もちろん生きた人間も頼りますよ!笑

時代も場所も超えて、たくさんの人に支えられて生きていけますように。



大学も、長い間お世話になりました。

今日は学位授与式の後、研究室の方々が茶話会を開いてくれました。
勉強面から生活面まで何もかも相談にのってくださった、母のように頼れる先生。
学ぶ姿勢について授業でも休み時間でもいつも優しく示してくださった院の先輩方。
自分が教えることで、逆に自分の反省点をたくさん気づかせてくれた後輩たち。
少人数の研究室はとてもアットホームで、先生から学生までが平等にわいわいと活発に議論できる自慢の研究室でした。

また名古屋に帰ってきたときには、ちょっとした手土産とともに、先生や研究室のみなさんに元気な顔を見せられるといいなと思います。



だから、どうか、
この国が、この社会が、
私の愛する学部を、研究室を、
何十年と残してくれますように。

どうか、人々が文学の価値を忘れてしまうときが来ませんように。



今日の最後に学部長が、
「卒業生は自分の学んだこの学部を残していくために、大学の外からその重要性について訴えかけていかねばならない」
と言われました。


未来の学生たちが、本から語りかけてくる死者の言葉に耳を傾けることのできる環境が残り続けるように、私は社会の片隅からひっそりと、自分の存在を通じてその大事さを静かに主張していきたいと思います。



2017, 03, 27   Ypsilon