YOUTAオフィシャルブログ「夢飛行」 ~すべてのバリアをこえて~ -517ページ目

実習の記録(5)

 今日は音楽というものを専門性とは異なる視点で考えてみたい。
 先生はある学会の「音楽が心身に障害を持つ子どもたちに有効な理由」という資料を元に、
知的障害児や自閉症・ダウン症を抱える生徒の指導法についてお話ししてくださった。
 その内容の概略を次に示してみる。

1. 音や音楽を媒介として発達を促すことができる。
 ①音楽はもっとも受けとめやすい感覚へ訴えることができる。
 ②音楽は情緒に働きかけやすい。
 ③音楽は向き合う姿勢をつくりやすい。
 ④音楽はパターンをもち繰り返すので、予測しやすくわかりやすい。
 ⑤音楽は動的にも静的にも活用でき、情緒の安定に役立つ。
 ⑥楽器類は、初期的な手先操作で音を出すことができる。
  さらに役割取得や、社会性の発達に関与できる。
 ⑦音楽は、合わせることによって自己調整力を高め、さらに自我を発達させる。
 ⑧音楽は、聴覚運動と視覚運動の協応性を増し、さらに認識する力や
発声する力を高める。

2. 音楽のいろいろな活動をとおして、表現の体験をさせることができる。
 ①自分で音を創り出す喜びの体験
 ②表現能力の成長
 ③自分を知り、自信をもつ
 ④自分を外に向けて表出する

3. 音楽のいろいろな活動に参加して、社会性の基礎を育てることができる。
 ①自然発生的な無意識の表現
 ②他の人を意識した表現となり、意志や思考が含まれる。
 ③他の人の表現を見聞きして、他の人の世界を知る機会となる。
 ④他の人とともにあることを知る。
 ⑤自分自身を知る。
※3.の①~⑤は上から下へ順番に育っていくもの

 上記の内容に関して端的に述べるなら
音楽という媒体を1つの教育手段、
ないしは1個の道具と考える方法だと言える。
 都内養護学校に赴任した当時、
このような考え方に対して先生自身、非常に抵抗があったという。
それは音楽大学という場所で、
音楽を専門的に追求してきた人間にとって、
非常に屈辱的だとさえ感じたそうだ。
 「音楽は手段や道具なんかじゃない!
音楽は音楽だ!」
 そう感じつつも現実問題として考えた時、
音楽を手段や道具として用いることは必須条件だった。
そして実際に行なう授業の中では、
音楽を手段や道具として利用している先生自身がいた。
 そんな日々の中、養護学校での新採当時は、
音楽家としての自分、教員としての自分、
相反する2人の自分自身がいることに気付き、
その矛盾に疑問をいだき、葛藤と戦う日々が続いたという。
 次に、このお話しの中で書き留めた自分のメモを、参考までに示してみる。

 音楽を道具として用いる。
 音楽という媒介を通して社会性の学習が可能。(役割分担)
・大人が伴奏し、子供が歌う。
・子供がリズムを打ち、大人がそれに合わせて演奏する。
 知的障害・自閉症・ダウン症などにとっては音楽療法の側面が効果的。
生活性→創造性
小学生→高校生
 音楽を通して、多種多様なことを学ぶことができる。
・準備と後片付け~ものは初めから用意されてはいない~
 歌うこと、楽器を鳴らすことにより喜びを感じ、学習意欲を促進させる。
 視覚と聴覚の協応性。
 教える側の一方的な指示だけではなく、選択の機会を与えるべき。
・「今日はどの言葉で発声練習する?」

 私のメモにもあるように、この考え方には音楽療法的側面もある。
先回の日記でも書いたように、私は最近、音楽療法という考え方に少し興味を持ち始めている。
その意味では非常に興味深い内容のお話しだったし、
大変参考になる資料である。
 この経験は私の生涯を通して、かけがえのない宝物となるに違いない。2006-07-08 21:47:15

実習の記録(4)

 さて、研究授業に向けては、指導案作成との格闘が続いた。これまで2回の授業においてはいわば未完成の指導案をもとに授業を行なってきた。しかし研究授業では完成された指導案を提出しなければならない。指導教官の先生から手とり足とり、重複学級における指導案作りを教えていただく日々が続いた。
 参考までに今回私が作成した指導案の概容を下記に示してみる。

1.単元名
2.単元設定理由
3.単元の指導目標
・I講座の指導目標
・N講座の指導目標
・共通の指導目標
4.各生徒の実態
・学年、講座、名前、性別、出身校、視力
・生徒の実態(音楽)
・単元の個人目標
5.単元計画(時間扱い)
・単元時間数の設定
・時数配分
・時数ごとの学習内容と活動
・時数ごとの教師の支援及び指導のポイント
6.準備
7.本時の展開
(1)単元名(共通)
(2)ねらい
・I講座のねらい
・N講座のねらい
・共通のねらい
(3)対象生徒
(4)各教員の役割(MTおよびSTの役割分担)
※MTはメインティーチャー、STはサブティーチャー
導入(学習活動、指導内容、教師の働きかけ)
展開(学習活動、指導内容、教師の働きかけ)
まとめ(学習活動、指導内容、教師の働きかけ)
8.本時の個人目標と指導の手だて
9.単元および本時の評価規準(項目)
・I講座の評価基準
・N講座の評価基準
・場合によっては個人の評価基準が必要(今回は設定しなかった)
10.本時の評価

 ご覧いただいてわかると思うが、重複学級における指導案の特徴は、個人の存在を非常に重視しているという点である。そのために最初に必ずやらなければいけないこと。それが「各生徒の実態把握」である。
 しかしこの作業は特殊教育の現場で実際に働く熟練教師でさえも手をわずらわす作業。たかが教育実習生の私にはとうていこなすことのできない仕事だ。さらに特殊教育を専門に学んだ経験もない。ましてや実習期間はたったの2週間。
 「この作業を完全にこなすことははっきり言ってしまうと、今の勝島さんにはまだ無理なんですよ~(わらい)。」
 先生も思わず苦笑い。実際に先生自身も1年生に関してはまだ実態を把握しきれてない部分もあるという。それでも先生はこの学校に赴任する以前、養護学校勤務が長かったこともあり、普通校から赴任した教員よりは、はるかに経験豊富なのだ。
 今回の実習で初めて経験したことの1つにTT(ティームティーチング)と呼ばれるものがある。これはつまり、1つの授業内で複数の教員が協力して指導にあたる手段を刺す。
 指導案の概容の中でMT(メインティーチャー)、ST(サブティーチャー)という言葉が出てきた。メインティーチャーがリーダーとして授業を進め、数人のサブティーチャーが1人ないしは複数の生徒につき、指導の支援・援助をするのである。
 STの役割の具体例をいくつかあげてみよう。
・自分からなかなか声を出せない生徒に対して随時声かけをし、その活動をうながす
・曲の歌詞を後ろでささやいてあげる
・生徒とともにさりげなく歌い、生徒の合唱を支援する
・MTの師事伝達を生徒のそばで援助する
・生徒の授業参加を支援・援助する
 このように重複学級のせいと、とりわけ1番重度のI講座の生徒に大して重要なことは、常に声かけをし、常にコミュニケーションをとってあげることなのだ。その点に関して私は一番うまくできなかった。そのことが1番心残りかな。
 話しは変るが、2回目の授業終了後に先生から知的障害児や自閉症・ダウン症の生徒と音楽療法との関わりの話しを聞かせていただいた。最近私は音楽療法という分野に興味を感じ始めている。そのこともあり、大変興味深くそのお話しを聞かせていただいた。
 「音楽が心身に障害を持つ子どもたちに有効な理由」というある学会の論文をもとに、音楽というものを1つの道具として使う、という発想のお話しだった。
 次回はこのことについて少し触れてみようと思う。

実習の記録(3)

 私が担当させていただいた音楽の授業は週に2単位。2週間の実習期間中に計4回授業があった。最初の授業は見学させていただき、その後2回で実際に授業を担当し、最後の1回が研究授業という流れだ。
 また2校時続きの授業は、1校時が歌唱指導、もう1校時が器楽指導ということで、私の担当は歌唱指導のほうのみだった。
 この学校では学年の他に講座というのを設けている。生徒のレベルに応じて4つのカリキュラムが設定されているのだ。ここでは仮にI,N,S,Yとする。私が今回担当させていただいた講座は重複学級に当たる2つの講座、IN講座合同の音楽だった。
 このクラスで取り扱った教材は混声3部合唱曲。ただし人数などの関係から男女の2部合唱にして、どうしても内声がないとハーモニー的にうまくいかない部分だけを3部合唱にした。
 22日(木)には初の授業を担当。何とも支離滅裂な授業だったが、生徒たちの力に助けられた。前にも書いたけど、彼らの合唱力がなかなか素晴らしい。
 余談だが、この学校の生徒たちは校歌が大好きで、この授業でも準備運動として合唱したりするし、音楽部でも手始めに合唱したりする。
 それと上記のように、当校の校歌は合唱曲。だから式典でも「校歌斉唱」とは言わず、必ず「校歌合唱」と言うそうだ。現在は生徒数の減少から男女の2部合唱で歌われるが、原曲は混声4部合唱だったみたい。ちなみに作詞は原田重久、作曲は団伊玖磨。
 この校歌がなかなかの名曲で、私はすっかり気にいってしまった。当校のホームページから生徒の校歌合唱をダウンロードできるのだが、早速DLさせていただいた。何とも親しみやすい曲で、自分の母校の堅苦しい校歌とは全くイメージが違う。すーっと自然に身体の中に入ってくる感じで、とてもすてきな曲。
 27日(火)には2回目の授業を担当。前の時間とは比べものにならないぐらい、気持ちに余裕をもつことができた。
 前の時間は合唱の伴奏はST(Subteacher)に演奏していただいた。しかし今回は自分で伴奏し、ピアノで合唱をひっぱることを試みた。
 1回目は生徒により近い位置で直接接していたのに対し、今回の授業では生徒からやや離れたピアノの位置からの指導に固執していた。
 1回目の授業ではより生徒に対して直接的に接することができた一方で、変な間があったり緊張があったりした。2回目の授業では前回の授業に比べてやや生徒との距離があったが、ピアノ伴奏の表現によって、生徒たちの合唱をうまくひっぱることができた。
 この2回の授業のいいところを合わせた授業を、研究授業では目指したかった。
 だけどやっぱり研究授業は多くの先生方が見に来るということもあり、予想以上に緊張を要した。