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昨日山形市ビックウィングにて、TPPについての学習会が開催されました。アメリカからパブリックシチズン国際貿易監視部門代表のローリー・ワラックさんを迎え講演をいただき、私からは4月の訪米調査の報告をさせていただきました。ワラックさんは3日前に来日し、全国各地を回りTPPの問題について講演活動を行っています。昨日の講演では、TPPが秘密協定であり、内容が公表されないことの異常性、ロビーストや企業側の利益が国民の安全に優先される危険性から、アメリカ国内においても反対運動が巻き起こっている現状について報告がありました。アメリカは、NAFTA(北米自由貿易協定)締結以降、国内の雇用や労働環境は悪化の一途を辿っています(500万人の失業、4万2千の工場閉鎖など)。平均賃金も1973年レベルに低下し、一方で経営者側への配当は右肩上がり、まさに「1パーセントと99パーセントとの闘い」と言われる所以です。締結前には65パーセントの国民がNAFTA賛成だったものが、今では国民の大多数が反対に。この経験からTPPについても懐疑的な声が多く存在し、反対運動が広がっているのです。
そして印象的だったのは、このTPPを止めるためには日本の反対運動がとても大事であるとのワラックさんの言葉。全く同感です。
私からは、訪米調査の目的と成果について。安倍総理は、「聖域なき関税撤廃が前提でないことが明らかになった」として3月15日に参加を表明、4月12日に日米協議に合意しました。「聖域なき関税撤廃が前提でない」とはどういうことか。多くの皆さんは、関税撤廃の例外が確保できる、つまり、少なくともコメなど重要品目については関税撤廃をしなくて済むのだ、と受け止めていると思います。しかし、「例外なき関税撤廃を前提とする」TPPにおいて、果たして本当にそれが可能なのか。本当に「聖域」が確保できるのか、そもそも「聖域」とは何なのか、アメリカ国民は日本の交渉参加をどのように受け止めているのかなど実際に訪米して実感したことを報告しました。
アメリカ国内では日本は無条件でTPP交渉参加に舵をきったと受け止められており、USTR交渉担当官も「コメ」についてさえ除外はあり得ないと明言しています。この双方の認識ギャップの背景には極めて曖昧な日米合意があります。そもそも合意とは名ばかりで、実態は、日本はTPP交渉に参加するためにこれだけのことをします、と一方的にアメリカに約束した内容で、実際にアメリカ側はそう受け止めています。たとえば自動車について。「(略)4月12日、日本は輸入自動車特別取扱制度(PHP)(日本へ輸出を行う米国自動車製造業者が頻繁に用いる貿易かつ迅速な認証手続)に基づき取扱いが許される車両数を2倍以上に増加させるとの一方的決定を発表した(略)」とアメリカ側は公式に発表していますが、日本の発表文書はこのことに全く触れていません。さらには保険について。
アメリカ側の文書には「(略)日本は、かんぽ生命による新たな又は改変されたがん保険、単品医療保険商品につき、これらについての民間保険会社との適正な競争関係が確立され、かんぽ生命の業務の適切な遂行体制が確立されたと判断されるまでは、その認可を行わず、日本としてその達成のためには最低数年間を要すると思われることを一方的に発表した。」
と明記されていますが、日本側文書には一行たりとも触れられていません。これは認識ギャップというより、むしろ隠蔽というべきではないでしょうか。私はこのことについて、予算委員会においても質問主意書でも、なぜこのような日米の認識の違いがでるのか、アメリカが一方的に勝手な解釈で発表したのであれば抗議すべきと、政府に問い質しましたが、回答は、「アメリカ側が国内の議会対策としてどのように説明しようと、それは我々が干渉することではありません」とのことでした。日本政府は日米の認識の相違を明らかにしたくない、このことはつまり、日本政府はTPP参加のために相当高い入場料を払ったものの、そのことを国民にはできるだけ知らせず、騒ぎにならぬよう、曖昧なまま突き進みたい、との明確な意思の表れであると思います。そもそも国際交渉の途中参加というのは、今までの合意を丸呑みするのが当然で、有利な条件どころか、口出しさえできないはずです。同時スタートでさえ日本はアメリカに交渉で勝ったことはほとんどありません。自民党は今になって早く参加すべきだったといってますが、菅総理の突然のTPP参加検討発言の時点でも交渉は相当進んでいて、日本は後発組でした。アメリカTPP交渉参加が日本より早い時点で日本が優位に交渉を進めるということはあり得なかったのです。
他に、条約との整合性を図るため、国内法が相当置き換えられる懸念があります。
お隣韓国では、米韓FTAによって、63の法律等が改正されており、例えばソウル市における学校給食への地産地消条例も非関税障壁として見直しを迫られています。
一方アメリカでは国内法が優先されており、(正確には国内法に抵触するような条約は批准できないことになっている)、アメリカ側のルールが他国に及んでいく理由がこのあたりにあるような気がします。
最後に、かつて1.5パーセントの農業のために残りの98.5パーセントの人が犠牲になってもいいのかと発言した方がいましたが、1パーセントの企業の利益のために残りの99パーセントの国民が犠牲になっていいのか、TPP反対運動を自らの問題としてみんなで取り組み、広げていく以外に道はない、と申し述べさせていただきました。