仕事と戯れ言と小説の日々 -12ページ目

仕事と戯れ言と小説の日々

何気ない日々や小説を綴っていきます

灯りが煌々と点る真夜中の街に、線の細い雨が降り注ぐ。

その街の一角の、ビルの屋上に、一人の男の姿があった。

闇夜と同色の髪を腰までのばし、スーツの、ワイシャツのボタンを二番目まで開けて着崩している。


かけた細い銀縁の眼鏡の奥には髪と同色の瞳が細められ、フェンスの向こうの街を眺めていた。


吹いた風が、ズボンに手を入れた格好の男の髪を靡かせ、白い首筋を露にした。

「ここも違ったか……」


呟くその声は低く、言葉が出ると同時に、男の端正な顔立ちを歪めさせた。


「一体…どこに…」

「まだ見つからないの?」


背後から甲高い女の声がして、男は静かに振り返った。

「……菊(キク)」

男は低い声で女の名を呼ぶ。


ボーイッシュに切り揃えられた栗色の髪。

ジーパンに白いTシャツ。その上に、焦げ茶色のジャケットというラフな格好だ。


ジャケットと同色の瞳は面白くなさそうに歪められていた。


菊と呼ばれた女は、手を後ろに組んで、男の隣に立った。


「これでもう10カ所目でしょ?」


「……あぁ」


はぁ、と一度嘆息して、菊はコンクリートの床を蹴って、フェンスの上に立った。


「で?次はどこに行くか決めたの?新月(シンゲツ)?」


新月と呼ばれた男は、一瞬黙ったが、やがてゆっくりと頷いた。


「そっか、じゃ行かないと。もう私飽きたよ」


菊はそう言うと、二度跳躍して、フェンスの向こうへ消えた。


「全く……せっかちなやつだ」


新月はやれやれとため息をつき、自分もフェンスの上に立つ。


再び風が吹き、新月の長い髪を靡かせた。


煌々と輝く街並みを眺め、新月は静かに呟いた。


「『力』を持つ者…必ず探し出す…」


そして、新月の姿もフェンスの向こうに消え、屋上からは一切の人影もなくなった。