私は何かを失敗したときの報告や、
口頭での確認作業は大の苦手です。
一際自身の価値観や相手からの信頼が崩れる瞬間を恐れているのかもしれません。

しかし、もう少し勇気を出せば、この事件はもっとシンプルに解決したでしょう…

はじまりは一昨日の朝、
久しぶりにウォーキングをしようと玄関まで行き、所定の場所に自分用の自宅の鍵がないのに気づいた時です。

(あれ、昨日置いたと思ったのに)

自室に戻り、鍵を置きそうな場所を隈無く探しましたが見つかりませんでした。

最後に見たのは何時だったか、その後どうしたのか…
懸命に記憶を手繰り寄せても不透明で、
愛犬の介護と家事の合間に自室・食卓まわり、リビング、玄関…手当たり次第捜索する日々がはじまりました。

2日間で玄関とテーブルや椅子の隙間を徹底的に調べ、
リビングのテレビ周辺も収穫なし。
万が一のために軍手をしてゴミ箱内も調べ尽くしました。

(明日も見つからなかったら…)

と情けないことに、昨晩は過呼吸に陥ってしまったのです。

今朝はマイナスの空気を打ち破るべく、ホットヨガからスタートし、
最後の砦ともいえるベッドの下や壁側の隙間を徹底的に大掃除兼捜索をしました。

埃と幾つかのなくしものが発掘されたものの、肝心の鍵は気配すら見せず。
徒労感が増していくばかりでした。

午後になり、母から気分転換に外へ出るよう促された時、
いよいよ、隠しきれまいと覚悟を決めて、

『鍵が玄関にあったはずなんだけれど…』

とできるだけ冷静に切り出しました。
ところが母は予想外に咎めることなく

『あら、少し前に拝借したままだったわ、ごめんなさいね』

と鍵を返してくださりました。
母への憤りなぞ露ほども感じることなく、
安堵と解放感で心満たされて礼を伝え、
川沿いの桜の蕾見物へ出発したのです。

声出せば 現にかえる 鍵握り