4月と先日の2回行った「北斎と広重」展。
今回の目玉は、なんと言っても、葛飾北斎の『冨嶽三十六景』の全46図が見れたこと。
『富嶽三十六景』は、もちろん、様々な場所から見える富士山を描いたシリーズもの。
1831年から1833年に制作されました。
ベロ藍と言われる、輸入化学染料が使われていることが特徴の一つ。
また、構図に丸や三角を取り入れて、メリハリを生み出し、これまでにない風景版画になっていることも、人気が出た理由かも。
当初は36図だったのが、あまりの人気のために、10図追加されました。
今回、前期、後期で作品が入れ替えられ、私も46図、全てを見ました。
その中で、私が良いなって思った作品を。
順不同です。
『相州七里浜』。
富士山や鎌倉山を右に寄せて描き、左半分は相模湾。
私は富士山よりも、海原の広さに惹かれます。
『甲州三島越』。
大胆にも真ん中に大木が描かれています。
富士山の裾野の方にまで描かれた雲が、富士山の高さを強調してる。
こういうデフォルメされた構図も、私が浮世絵が好きな理由の1つです。
『磯川雪ノ且』。
この作品、初めの頃は明けてくる朝の風景なんだけど、版によってはブルーの空が茜色に変えられ、夕景になってるらしい。
横に並べて、対比して見たいなぁ。
『身延川裏不二』。
これ、今見返すと、なんで写真を撮ったんだろう。
多分、川の流れの速さを表す、波のデザインに引かれたんだと思う。
『深川万年橋下』。
富士山が小さくて、気づかないかも。
どれだけ橋が高くかけてあろうが、実際は富士山の方が高く見えるんだろうけど。
『武州玉川』。
これ、写真では分からないですが、川面のさざ波を表現するのに、手前の白い部分は空摺という手法が使われています。
浮世絵の初版に近いものは、こういう摺の細かな手法まで見れるのが面白いんです。
何版も摺られてくると、木目の模様もなくなってくるし、細かな技法も省略されがち。
『相州梅沢左』。
着色にほとんど藍しか使われていない。
藍の濃淡が美しい作品だと思う。
『甲州三坂水面』。
これ、夏景色。
富士山には雪が積もってないのに、水面に映る富士山は雪が積もってる。
1枚の図に、夏と冬が混在する不思議な作品。
『凱風快晴』。
赤富士。
裾野の方の木々も細かく描かれてます。
斜めにぶった斬ったような構図が良いですね。
『神奈川沖浪裏』。
富嶽三十六景で一番有名なThe Great Wave。
これを無くして、富嶽三十六景は成り立たたないですね。
確かに、私も、このめちゃくちゃデフォルメした構図、富嶽三十六景の中で一番好きです。
この波を描くまでに、北斎は波の表現に色々と試行錯誤しています。
日本で一番高い富士山が小さくな存在に見える、波の荒々しさが素晴らしいですね。
そして、私、実際この作品を見るまで、もっと大きなサイズのものだと、勝手に思い込んでました。
横1mくらいかな、なんて。
The Great Waveのgreatにイメージが引っ張られてましたね。
実際には、想像よりずっと小さかった。
浮世絵ってほとんどが、B4くらいのサイズです。
もっと小さいのもあるけど。
そりゃ、版画だもの、大きなものは摺りにくいし、作るの大変ですよね。