私の講義を受けている学生さんの復習のために講義内容を簡単にまとめたものになります。

よろしくお願いいたします。


問9

図はエチレンへの塩化水素の付加反応における反応の進行度とポテンシャルエネルギーの関係を表している。

塩化物イオンが求核攻撃する段階の活性化エネルギーはどれか。

1つ選べ。


1:E1

2:E1-E2

3:E3

4:E3+E4

5:E4


推考術で問題を解くと生徒さんが持っている有機化学の知識量にもよりますが、下記の2通りの解法になります。


有機化学の知識が有る程度有る生徒さんの場合。


有機化学の知識が有る程度有る生徒さんの場合、推考術で問題を解くと下記の通りになります。


まず、問題文に、エチレンへの塩化水素の付加反応における塩化物イオンが求核攻撃する段階がグラフの何処に該当するかを特定する所から始まります。


続いて、エチレンが、塩化水素と反応する時にエチレンには、炭素-炭素による電荷的に偏りの無い二重結合が有り、電子が豊富なため、エチレンは、求電子付加反応を起こすことが分かります。

また、エチレンの構造をみて、エチレンが二重結合を持ちアルケンであることが分かることから、アルケンが起こす一般的な反応は求電子付加反応である判断しても問題有りません。


そして、電子密度が高いアルケンは、塩化水素の内の正の電荷を持つH+(プロトン)と反応してカルボカチオン中間体になります。

また、問題文に塩化物イオンが求核攻撃すると書いて有ることから、負の電荷を持つ塩化物イオンが攻撃する相手は正の電荷を帯びていることが分かります。

そして、反応物であるエチレンは、構造的に電荷的な偏りが無く、かつ、二重結合が有るため電子が豊富であることから、エチレンは、そのままでは、負の電荷を持つ塩化物イオンと反応出来ないことが分かり、加えて、生成物のクロロエタンが電荷を持たないことと、求核試薬である塩化物イオンが負の電荷を持つことから、求核試薬が攻撃できる基質として、正の電荷を持った中間体が必要なことが分かります。


加えて、問題文に活性化エネルギーと書いてあることから、上記の反応を踏まえて、図の中で正の電荷を持ったカルボカチオン中間体と負の電荷を持った塩化物イオンが反応する場所は、選択肢3のE3の部分であることが分かります。


有機化学の知識が無い生徒さんの場合。


有機化学の知識が無い生徒さんの場合、推考術で問題を解くと下記の通りになります。


まず、選択肢とグラフを見比べてみると下記の選択肢は、次の様に分類されます。


1:E1(上がる)

2:E1-E2(下がる)

3:E3(上がる)

4:E3+E4(反応の最初から見て上がる)

5:E4(反応の最初から見て下がる)


そして、今回の問題では、活性化エネルギーを聞かれていることから、上がる反応の段階の選択肢1、選択肢3、選択肢4に絞り込めます。


加えて、エチレンへの塩化水素の付加反応における塩化物イオンが求核攻撃する段階と、具体的な反応の説明が書いてあることから、反応の最初から見ての活性化エネルギーである選択肢4は、正解の選択肢から外れて、選択肢は、1と3のみに絞り込まれます。


この後は、運の部分も有りますが、通常は、後の反応の選択肢が正解の解答となることが多いことから、正解の選択肢は、3になると推測されます。

ただ、当て勘で選択肢を選んだ場合、正解の選択肢を選べる確率は20%ですから、推考術を利用して正解の選択肢を選べる確率を50%まで向上出来れば十分かと思います。


推考術の目的としては、今ある知識の中でも正解の選択肢を選べる確率を向上させるためのものですから、今回の必須問題では正答率を30%、理論問題、実践問題の5問2択問題についても、当て勘で選択肢を選ぶよりも正答率を最大40%程度上げる効果が有りますので、特に理論問題、実践問題について、正解の選択肢の片方は選べて、もう片方は絞り込み切れない生徒さんの役に立てるのではないかと思います。


薬剤師国家試験直前の1-3ヶ月で、35-70点、点数を上げた生徒さんもいます。

今ある知識で正解の選択肢を絞り込む感覚をつかんでください。


頑張ってください。

応援しています。