年金月12万円・80代の母、突然「終の棲家の老人ホーム」を強制退去…50代の娘「突然出て行けって、そんな酷い話あります?」



年金月12万円・80代の母、突然「終の棲家の老人ホーム」を強制退去…50代の娘「突然出て行けって、そんな酷い話あります?」

終の棲家として人気が高まる「老人ホーム」。施設を選ぶ基準やこだわりは人それぞれですが、見学を繰り返し「やっと終の棲家を見つけた!」と入居が決まっても100%安心といえるわけではありません。時には、まさかの理由で「強制退去」になることも。みていきましょう。

増加する「有料老人ホーム」…その理由は?

近年、高齢者の住まいの選択肢として急激に増加した「有料老人ホーム」。民間企業が経営する介護施設で、大きく「介護付き」「住宅型」「自立型」の3つがあります。

「介護付き有料老人ホーム」は、その名の通り、介護サービスが充実した施設で、要介護認定を受けている人が対象の「介護専用型」と自立している人も入居可能な「混合型」があります。ちなみに「介護付き」を名乗れるのは、国が定めているサービスや設備の基準をクリアし、都道府県から「特定施設入居者生活介護」の指定を受けた施設だけです。

「住宅型有料老人ホーム」は、自立している人から軽度の要介護者を対象にした施設で、日常生活のサポートをしてくれます。介護サービスの提供は基本的になく、外部サービスを利用します。

「自立型有料老人ホーム」は、自立していることが条件。要介護となったら、基本的に転居や退去しなければなりません。有料老人ホームの1%程度しかなく、選択肢が少ないのがデメリットといえます。






特に「住宅型有料老人ホーム」は利用者の費用負担が安いだけでなく、運営元の初期投資も比較的安価なことから、異業種からも次々と参入。利用者は2011年9万1,369人から、2019年29万3,326人と3倍強に、施設数も3,368軒から1万0,029軒と3倍弱と、急激に数を増やしています。

死ぬまでこの老人ホームにいられます…そんな保証はどこにもない


そんな有料老人ホーム。入居が決まり「やれやれ」とひと安心。ただ楽しいセカンドライフが待っているとは100%言い切れないのが難しいところ。

――突然、出て行けなんて……そんな酷い話ありますか?

そう憤るのは、80代の母が「有料老人ホーム」に入居していたという50代の女性。母は要介護1、外部サービスを利用しながら自宅で暮らしていたものの、1人暮らしに不安を覚え、「有料老人ホーム」への入居を決めたといいます。

母の月々の年金は手取りで12万円程度。施設の月額費用も同程度ということが、入居の決め手だったといいます。

入居から2年ほど経ったとき、突然「運営元が自己破産」の連絡が入りました。まさに寝耳に水。この施設を運営していたのは元々は飲食店を経営していた人で、「美味しい食事を提供できるホームを作りたい」とカタチにした施設だったと聞いています。こだわった食事、それでいて入居費用もリーズナブル。「終の棲家としても魅力的」と母子は感じたといいますが……。

――結局、経営のセンスがなかったんですよね

昨今、増えているのが老人ホームの閉鎖。東京商工リサーチによると、2022年の「老人福祉・介護事業」の倒産件数は過去最多の143件だったといいます。多くは訪問介護業者ですが、有料老人ホームでも12件の倒産がありました。

前述の通り、今後ニーズが高まる成長市場として介護業界は注目を集め、さまざまな業種からの参入が相次ぎました。一方で競争が激化するなか、撤退を余儀なくされるケースも増加しています。

介護施設を選ぶ際のポイントを大きく3つ。

(1)費用だけで決めない

 (2)複数施設見学して話を聞く 

(3)「介護サービス情報公表システム」で調べる

(3)は厚生労働省のホームページ内にあるサイト。職員の勤続年数や、職員に対する研修の仕組みなどを見ることができます。職員へのサポートが充実し、長く働ける施設かどうかも、選択の材料となるでしょう。

[参考資料]

株式会社Speee/ケアスル 介護『有料老人ホームを選んだ理由や費用に関するアンケート』

東京商工リサーチ ~2022年「老人福祉・介護事業」の倒産状況 ~

ゴールドオンライン2024年1月4日閲覧