
オーストラリアに到着した航空自衛隊のF35A戦闘機。日本との間を往復する訓練にあたった=8月26日、オーストラリア空軍基地、防衛省提供
防衛省は、航空自衛隊の戦闘機をオーストラリア空軍基地に一定期間派遣するローテーション展開の検討に入った。早ければ来年度にも段階的に始める方針だが、法的根拠が乏しく、事実上の海外配備との指摘もある。豪州軍への攻撃に集団的自衛権を行使し、自衛隊が反撃することも視野に共同訓練する。集団的自衛権の適用範囲が広がる可能性がある。
軍備増強を続ける中国に対処するため、日豪両国は近年急速に安全保障面で協力関係を深めている。昨年1月には、共同訓練する際の入国手続きを簡単にする「円滑化協定(RAA)」に署名。今月19日に都内で開かれた日豪防衛相会談では、RAAを適用して共同訓練の実績を積み重ねることで一致した。ローテ展開も念頭に置いたとみられ、これを受けて検討が本格化し始めた格好だ。
ローテ展開は、一定規模の部隊を派遣し、入れ替えながら一定期間とどまらせる運用。米軍は在日米軍基地を含む世界中の海外基地で繰り返している。
自衛隊も、アフリカ東部ソマリア沖アデン湾の海賊対処にあたるため、海賊対処法に基づき、ジブチの拠点に陸上自衛隊や海上自衛隊の部隊が展開しているが、海外での訓練を理由にしたケースはこれまでない。
空自の戦闘機部隊が豪州の空軍基地に間借りする形を想定し、広い空域で効率的に共同訓練することが目的という。
期間は年間数カ月程度を見込み、日本の防空任務に影響が出ない範囲でF35やF15、F2を数機程度ずつ投入し、部隊を入れ替える運用もすることを想定。部隊が交代し、基地に機体が不在になっている間も整備員を残すことも検討する。防衛省はローテ展開の目的は訓練だとしており、自衛隊の教育訓練について定めた防衛省設置法4条が法的根拠としている。
朝日新聞社2023年10月30日閲覧