ヘルメットの先端がまゆの上に(C)日刊ゲンダイ

自転車を利用する人にとっては気になるニュースだろう。4月から自転車に乗るときは、ヘルメットの着用が努力義務になることだ。街中で自転車を見かけてもヘルメットをかぶっている人は少ない気がするが、さてどうしよう?

道路交通法第63条は、13歳未満の子供について自転車乗車時にヘルメットの着用を努力義務としている。それが改正されて4月1日からは、自転車に乗るすべての人でヘルメット着用が努力義務になる。



■着用の有無で致死率は3倍の差



JAFは人形を使って自転車で転倒したときに頭部にかかる衝撃を調べる実験を行っている。それによると、ヘルメットをしていないときの衝撃は、着用時の17倍だったという。これは自転車単独での転倒だから、車との衝突ではね飛ばされたりすると、頭部への衝撃はより大きくなるはずだ。


これらの人たちはヘルメットの選び方や正しいかぶり方が分かれば、ヘルメットを着用する可能性が高いはず。では、どう選ぶか。スポーツサイクル専門店Y'sRoad新橋店の田渕喬介店長に聞いた。

快適な「スポーツタイプ」とお洒落な「キャップ型」



上から、スポーツタイプ、キャップタイプ。女性スタッフが手に持っている物とかぶっている物もキャップタイプ(C)日刊ゲンダイ

ヘルメットは、外殻のシェルと、ライナーの2層構造。ポリカーボネート樹脂のシェルは軽量で首への負担が少なく、スポーツタイプによく使われる。ABS樹脂はポリカーボネートより重いが丈夫で、オシャレなキャップタイプに多い。シェルの内側を発泡スチロール製のライナーが覆っている。

「スポーツタイプには適度な空気穴があって通気性に優れていて、蒸れたり熱がこもったりしにくいのが特徴です。趣味で長い距離を乗る方、通勤で30分以上走る方などには快適性に優れるスポーツタイプをお勧めします。しかし、スポーツタイプはレーサー的な外観でオシャレではない。オシャレ度を重視する方や女性は帽子のようにカジュアルに使用できるキャップタイプがおすすめです」

キャップタイプの見た目は帽子そのものでも、中にはシェルとライナーが備えられていて、しっかりと頭を守る。ただしキャップタイプは、スポーツタイプより空気穴が少ない、あるいはない。通気性に劣るため、蒸れやすい。

■横から見て水平、あごひもに「指2本」が適正

いずれかを選んだら、正しいかぶり方だ。

「ヘルメットは、ぶかぶかでも、きつ過ぎてもよくありません。必ず試着して頭にピッタリのサイズを選ぶこと。ヘルメットを深くかぶって頭頂部をしっかりと覆った状態で、先端がまゆ毛の上に来るのが正しい状態。横から見るとヘルメットの下のラインが水平になります。スポーツタイプには後頭部にアジャスターがついているので、それを締め、あごひもを留めればOK。あごひもは長さを調節し、指が2本入るくらいがジャストフィットです」

ときどき、ヘルメットをかぶって、おでこが見えている人がいる。これはペケだ。国内ブランドと海外ブランドでは、ヘルメットの形に違いがある。これもチェックポイントだという。

「ジロやベル、ボントレガーなどの海外ブランドは、欧米人の頭の形に合わせた形状のため、やや楕円形になっています。一方、カブトやブリヂストンなど国内ブランドは日本人に合わせて円形です。そのため、海外ブランドを選ぶとサイズは適正でも、耳の上など横がきつく感じることがあります」

海外ブランドの中には日本人モデルやアジアフィットモデルを用意しているケースもある。海外ブランドを選ぶときは、そちらがベターだ。それでもサイズに違和感があれば、国内ブランドが無難だという。

■売れ筋は1万円前後、法人の一括需要も

気になる価格はどうなのか?

「6000円くらいから2万円を超えるものまであり、6000円から1万円くらいの価格が売れ筋です」

前述のau損保の調査では、ヘルメットの着用はまだ後ろ向きの結果が見られたが、Y'sRoad全店ではヘルメットの売り上げが伸びているという。

「今年2月と3月のヘルメット売り上げは前年同期比で約150%。店舗によっては310%を超えています。従来はレーサータイプの自転車に乗るような方が自転車と一緒にヘルメットを購入するケースが多かったのですが、いわゆるママチャリや電動自転車を利用する方が報道を受けてヘルメットを購入していて、客層がかなり広がった印象が強い。営業で自転車を使う企業から数十個単位の注文を受けるなど法人需要も伸びています」

ヘルメットは、雨や紫外線などの自然環境のほか、利用者の汗や皮脂などによっても、材質が少しずつ劣化する。3年を目安に買い替えが勧められる。それ以前でも、事故で破損したり、落下などで強い衝撃が加わったりしたら、買い替える方が安全だという。

日刊ゲンダイ2023年4月1日閲覧