
判決を受けて東京地裁前で紙を掲げる原告弁護団=東京都千代田区で2022年6月24日午後3時6分、
生活保護費の引き下げは生存権を保障した憲法に反するとして、東京都内の40~80代の受給者計31人が減額決定の取り消しなどを国や居住自治体に求めた訴訟の判決で、東京地裁(清水知恵子裁判長)は24日、減額決定を取り消した。地裁は、国による生活保護費の基準額引き下げについて、最低限度の生活を保障した生活保護法に違反すると判断した。国の違法性を認める判決は大阪、熊本両地裁に続き3件目。
全国29地裁に起こされている同種訴訟(原告総数約900人)で11件目の1審判決。これまでの10件の判決は、大阪、熊本両地裁が「減額した厚生労働相の判断には裁量権を逸脱する違法があった」とした上で各自治体による個別の減額決定を取り消した一方、札幌や名古屋など8地裁は国の違法性を認めず原告側敗訴とした。
国は2013~15年、生活保護費のうち日常的な食費や光熱費などに充てる「生活扶助」の基準額の算定に、生活保護世帯と一般の低所得者世帯の生活費を比べる「ゆがみ調整」や、物価下落率を基にした「デフレ調整」を反映。3年間で基準額を平均6・5%引き下げ、計約670億円を削減した。
訴訟では、二つの調整を用いたことが適切だったのかが主な争点となった。原告側は「国が専門家の検討を経ずに独自の指数を用いて引き下げを決めた。判断過程に過誤や欠落があった」と主張。これに対し、国側は「ゆがみ調整とデフレ調整には合理性があった」などと反論していた。
毎日新聞2022年6月24日閲覧