重力のある状態での時間や空間の性質を説明する一般相対性理論によれば、天体の重力によって時空にゆがみが生じ、光や物体はそのゆがみに沿って進むため、軌道が曲げられる。天体に近いほど時空のゆがみは大きくなり、ある半径よりも内側からは物質ばかりか光さえも脱出できなくなる。これがブラックホールで、外側との境界は「事象の地平面」と呼ばれる。

<世界初、ブラックホールの撮影に成功 一般相対性理論を証明>

 今回撮影されたのは、事象の地平面の外側にできる「ブラックホールの影」だ。嶺重慎(みねしげ・しん)・京都大教授(宇宙物理学)は「一般相対性理論を直接証明する成果で、ノーベル賞の対象にもなるだろう」と意義を説明する。

 太陽の30倍以上の重い星が一生を終えた後、自己の重力によって収縮しブラックホールができると考えられているが、宇宙に無数にある銀河の中心にも、太陽の100万倍から100億倍もの質量を持つ巨大ブラックホールが存在することが、観測や理論からほぼ確実とみられてきた。

 巨大ブラックホールの周囲には、強い重力に引きつけられたガスが回転しながら形成する円盤(降着円盤)、さらに円盤と垂直に光速に近い速さで噴き出す長大なガスの噴流(ジェット)ができると予測されているが、実際に撮影できていたのはジェットだけで、ブラックホールが存在する確実な証拠はなかった。

 天文学的にも、銀河中心の巨大ブラックホールの存在が確定した意義は大きい。巨大ブラックホールにはまだ謎が多い。最大の謎の一つがその起源だ。巨大ブラックホールの一部は宇宙誕生からそれほど時間を置かずにできたとみられるが、その仕組みは分かっていない。

 また、銀河の質量が大きいほど中心のブラックホールも重くなっていることから、138億年の宇宙の歴史の中で銀河とブラックホールが互いに影響しながら成長してきたと考えられているものの、ブラックホールと銀河のどちらが先に形成されたのかなど、基本的な点は不明だ。今後、観測が進む中で、こうした謎が解明されていくことも期待される。

毎日新聞4月10日