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今となってはもう
名前も思い出せないし、
いつごろ好きだったひとなのかも
忘れてしまうくらいの…、
きっと失礼ながら
どっちでもよくて
なんでもよかったんだろうな
っていう頃の思い出なんだけれど、
ちょっといいなと思って
ねらっていた男の子と、東野圭吾の話。
たしか
2013くらいだったのだろうか
友達の紹介で引き合わされた
穏やかで物静かで
真面目そうな感じの男子に、
私は一生懸命好かれようとしていた。
ご飯に誘ってみたり、
彼のすきなものに興味を持ってみたり、
好きになろうとしてみたり、
ラインをまめに送ってみたり、
またご飯に誘ってみるなどした。
私にしてはなかなか積極的であった。
今思えば
あさはかなことに、
おそらく
たいしてすきでもなんでも
なかったのだろうが、
こんな穏やかで真面目そうな
良い大学出の公務員男子を、
のがしてなるものかと
思っていたのである。
優しい彼は
私からのラインに
とても丁寧にお返事をくれた。
そして、
自分から誘ってくれることはなかったが
私からのごはんのお誘いを
断ることは一度もなく、
いつだってちゃんと会ってくれた。
ただ、その進みはとてもゆっくりで
会う日を決めるのにも、
時間を決めるのにも、
お店や食べたいものや
待ち合わせやそういう
あれこれを決めるのにも、
途方もなく時間がかかり、
当時の私には大変もどかしく、
「ねえ!!!!
ちゃんと返事くれるにしても遅いの!
で、仲良くなるにしても、
ものすごーーーく!
ペースがゆっくりなの!
ううん、べつに拒否されてる感じは
まったくないの!
でも本当に手ごたえがなくて、
ラインのやりとりで仲良くなるのに
1か月かかり、
ごはんに行くまでに3か月かかり、!
次の約束も2か月先とかで!!!
このままいくと
付き合うまでに何年もかかって
私はおばあちゃんになるまで
結婚にたどり着けないかもしれない!!!!」
と、友人の前で泣いたり
嘆いて見せたりしたわたしであった。
丁寧、安心、親切、優しい、穏やか
しかし
受け身の姿勢くずさず、
その気がないんだなと
こちら側がおちこんでしまうくらい、
こちらから積極的に誘い続けるしか
仲良くなる方法がなかったのである。
しかし
友人の見解は明るかった。
「頑張ってよ!!
〇〇くんあんなかんじだから
見るからに草食系なの!
でもハリ子のことは気に入ってるから!
それは見ててわかるから!」
今までちやほやされてきていた私は、
友人からそんなふうに励まされながら
心折れそうになりながらも、
根気強く少しずつ少しずつ、
かたつむりの歩みのごとく、
遅々として
じわじわと
連絡を取り続けていた。
こんなゆっくりの男とは、
どうやって
仲を深めたらいいんだろう
それで、
ご飯を食べながら
彼の好きなものを聞いた。
サッカーと
東野圭吾だった。
サッカーはまったくわからないし
わかりたくもなかったが
とりあえず
テレビでやっていたら
結果だけはわかるように
見どころだけは言えるように
職場の先輩に解説を願い、
話せるようにだけはしておき、
問題は東野圭吾だった。
本を読むのはさほど苦じゃないが、
それにしても
ミステリー小説だなんて!!!
確実に事件性があって
人がしんだり、ころされたり
さまざまな復讐劇や陰謀や
連れ去られてころされたり
犯人が分からなくて
最後までドキドキさせられたり
やりきれないあらすじに
ドラマでさえ見るのを避けてきたというのに!!!?
東野圭吾のファンは
探せばまわりにいくらでもいて、
当時ドラマ化、映画化された作品が
本当にたくさんあって、
でもどんな話題作も私は避けてきた。
だけど…
彼と仲良くなるため、
そして
好きな本を読めば
彼という人物が分かるような気がした。
実際、
わたしは
じりじり時間をかけて
彼と距離を縮めようとしつつも、
彼という人間の実態がつかめずにいた。
仮にも好きだったんでしょ?
狙ってたんでしょ?
と思われるかもしれないが、
そのときの彼はわたしにとって
どんなに掘り返そうと思っても
何も出てこなく、
なんのおもしろみもなく、
毒にも薬にもならないような
いかにもいいおじいちゃんになりそう
といったかんじの
口数の少ない、
あたりさわりのない、
ただただ優しい、
きっと職場でも
お役所勤めの中で
穏やかな毎日を送っているのだろうな
というかんじの読めない男であった。
なんでそんなに
一生懸命に
仲良くなろうとしていたのだろうか、
彼のどこになんの
どんな魅力があったのだろうか
というか、
本当に彼に魅力を感じて
ねらっていたのだろうか、
失礼ながら謎に包まれている。
(顔も名前も思いだせない)
会っても会っても、
会話の中身も
関係性の前進も見込めない、
味のしないガムそのものみたいな
生産性のない日々の中で、
もしかしたら、
彼が好きだという本を読めば、
彼の人間性、感性に少しは
触れられるのかもしれない
そう思って、
ある日の食事のあと、
彼と一緒に本屋に行った。
東野圭吾の中でも、
彼のおすすめをとにかく聞いた。
そして、
片っ端から買おうとすると、
彼をそれを手で制して、
「今度会うとき持ってくる。
買わなくていいよ」
と言った。
そしてどっさりと
彼から貸してもらい、
片っ端から読んでいった。
本の中で
殺人事件は次々に起こった。
悲惨なものが多くて、
後味の悪いものもたくさん。
騙されて連れ去られた女子高生とか
思い出したくもないような事件とか
身震いしながら読んでいった。
これが本当に彼の本質に
触れられるのかは疑問だった。
借りていた本を読み進めるたびに、
彼はうれしそうにしていて、
話もやや弾んだ。
少しずつだけれど、
仲良くなっていった。
これは
私の悪いところなのだけれど、
ついつい突き詰めて
相手より詳しくなってしまうくせがある。
次の会う約束が決まっていないまま、
彼に借りた以外の本を
古本屋で買い集めて読むことにした。
もちろん、
彼のおすすめだと言っていた本を
中心に買い集めた。
が、
1冊だけ
東野圭吾の小説にはちがいないが、
彼が一度も名前を出さなかった本を手に取った。
なんだかタイトルが妙に気になって
そしてなんだかおもしろそうな気がしたから。
東野圭吾先生ファンには
大変申し訳ないが、
一個人としてのただの好みとして、
読んでも読んでも
わたしはどの本も好きになれなかった。
読まされるハラハラドキドキ感や
ぐいぐい進む書き手の才能は感じるけれど
ミステリーがミステリーである限り
そして殺人や事件が次々悲惨に起こる限り、
どんなに天才的人気作家であろうとも
わたしにはとてもじゃないが、
つらいつらい読書であった。
次に彼にあったときに
彼ともっともっと親しく話せる、
そのためだけに読んだ。
「え、それももう読んだの?すごい!」
って、笑ってもらいたかった。
ただそれだけのために、
こわい事件の数々や
頭がおかしくなりそうな
パラレルワールドの話を
おっかなびっくりに読み進めていった。
本を読むことが忙しく、
あまりラインをしていないタイミングで
それが思いがけず、
うまいこと駆け引きに
なっていたのかもしれないが、
あるとき急に、
彼から、
彼のほうから連絡が来て、
公開になったばかりの映画を
一緒に見ないかと誘われた。
たしか、
思い出のマーニーだ。
「見たいって言ってたよね。
見に行かない?」
私が見たいと言っていたのを
覚えていて、
彼も見たいからと誘ってくれたのだ。
そして、その日の段取りは
すべて彼が、
映画の時間を決めて予約して、
車で自宅まで迎えに来てくれて、
終わった後にご飯を食べて、
なんだかめずらしく
いろいろと決めてくれていた。
会話もいつもより口数多め、
大変友好的であった。
これだよおお、これ!
このかんじだよおおおお
てごたえ!!!!!
距離がやっとここまで縮まり、
彼も私をほんの少しでも、
にくからず思ってくれようと
しているのだろうかと思った。し、
あとで話した友人にも、
「そうだよ!!!
〇〇くんにしてはそれ、
相当頑張ったと思うよ!
だから言ったじゃん!
だいぶ気に入られてるんだって!」
と太鼓判を押されたのである。
ここまでの感じまで来るのに
おおよそ1年半ほどかかったわけだが、
もちろんそれでもまだ、
われわれはつきあっていなかった。
せっかちなわたしにしては
大変にめずらしいことである。
それでもまだ、
友人に毛がはえたくらいの関係性である。
そしてその日、
映画を見てごはんを食べて、
楽しく家まで送ってもらいながら
今度いつ会おうかと、
彼のほうから言ってきたので、
次の約束をした。
先ほどまで
マーニーの話ばかりしていたので、
最後の最後に
東野圭吾に話になった。
これとこれとこれも読んだよ
と言うと、
「もうそんなに読んだんだ?
おすすめほとんど読んじゃったね!」
と彼は嬉しそうに言った。
だしぬけにわたしは
とっておきの本の話をした。
彼のはなしには出てきたことのなかった、
自分で面白そうだと思って選んだ本、
東野圭吾のそれは、
「虹を操る少年」という本だった。
これまで、
こわごわ、いやいや、下心だけで
読んできた東野圭吾の小説だったが
その作品だけは違った。
なんていうか、
それまで読んできた東野圭吾の中で
わたしにとっては
いちばんしっくり読めて、
いちばん心に残り、
大変おもしろかったのである。
もちろん、もちろん、
それは東野圭吾だったから、
もちろん人は死んだ。
ハラハラドキドキさせられた。
でも、なんだかこう、
知性と好奇心が同時に
満たされる気持ちがしたのである。
読み終えて、とてもよかったと思った。
後にも先にも、
どんなにたくさんの東野圭吾を
読んだにせよ、
タイトルを覚えているのは
この本だけだ。
そのタイトルの話を出したとき、
彼はちょっとだけ怪訝そうな顔をした。
自分の知らない本が出てきたのが、
かすかに予想外であり、
ほんの少しの不愉快さが感じられた。
「え。知らないな、その本。
それほんとに東野圭吾?」
と言った後で、
穏やかにハンドルをきりながら、
少し黙って、
私のスマホの画面越しに
ちらりと表紙の画像を確認すると、
思い出したかのように言った。
「ああ、これか。
ちょっと読んでみたけど
おもしろくなかったから
途中でやめたんだった」
「へえ、そうだったんだ」
まだ、
その本の感想を言う前だったので
私はそのまま黙った。
車は古い昭和の懐メロを
流したまま穏やかに走り続け、
そのまま私の自宅前に停まった。
とくに告白されるわけでもなく、
手を握られるわけでもなく、
このままきみを連れ去ってもいいかな
などと言われるわけでもなく、
もちろんケーアイエスエスなんぞ
されるわけもなかった。
「送ってくれてありがとう!」
と伝えると、
「じゃあまたね」
と、次の約束を確認して、
彼は礼儀正しく、
そのまま穏やかな運転で帰っていった。
感性のちがいだった。
わたしが好まないミステリー。
それを読んでいく中で、
これはよかったな、
と思う本に出会ったが、
彼はそれを面白くなく感じ、
すでに読むことを放棄していた。
そしてそれだけでなく、
私と話していても、
「それ読んだの?それ面白かった?」
「また読んでみようかな!」
と興味を持つわけでもなく、
否定だけで終わった。
思えば彼から、好みや好きなものを
積極的に聞かれたことはない。
この日の映画だって、
私が見たいとは言っていたが、
彼が部類のジブリ好きで、
その話から、
「私もすき!新作楽しみじゃない?」
なんて言って、
見に来ることになったのだ。
感性のちがい、
そして
彼は私に興味がない。
1年半かけて
やっと縮まったのかもしれない距離。
でも、
そのときわたしは
もう彼に会うことはないんだろうな、
と思った。
そして、
次の約束の数日前、
私は本当に風邪をひいて、
会う約束をキャンセルした。
「大丈夫?
ゆっくり休んでよくなおしてね」
という彼からのラインに
ありがとうと言って、
結局それが、最後のやりとりになった。
温厚で、優秀で、
いいおじいちゃんになりそうで、
公務員で、
きっと優良な人材として、
結婚願望ありの女子たちから
引く手あまたであろう彼だったが、
私じゃなかった。
私には違った。
虹を操る少年に
興味を示さない時点で、
私の中で何かがすうっと
冷めていった。
ああ、ちがうな
一緒に生きてく人じゃなかった
同じ星の住人じゃなかった
きっとお互いに。
ずいぶん長い時間をかけて
これだもの
あきらめようと思った。
もうやめようって。
驚くほど
何の未練もなく、
何の感情もわかなかった。
風邪が治っても、
自分から連絡することはなかったし、
彼から連絡がくることもなかった。
そうして、
1年か2年たたないくらいのある日、
久しぶりに友人が
ハリリーナの活動中に会いに来て、
「〇〇くんこないだ結婚したよ!」
と言った。
え???
だってあの彼である。
あの、、草食でものすごくゆっくりで
なかなか距離縮まらない彼である。
私はそのあと、
誰とも付き合ってすらないというのに!?
そんなにすぐ?だれと?
すると、友人は言った。
「いやあ、早かったよお
出会って、すぐ付き合って
2週間くらいで結婚の話になって!
ハリ子は残念だったけどさ、
お嫁さんは全然ハリ子と正反対のタイプの子。
〇〇くんはさ、かわいい子より、
頭のいい子がすきなんだよ!
だからしょうがないって!」
私が絶句していると、
友人は
「かわいい子とか
見た目が美人な子より、
頭の良い感じの、
インテリな感じの子がすきなんだよ!
だって彼女知的な感じだったもん。」
と、同じことを繰り返した。
何も言えなかったし、
そのとおりかもしれない
わたしがかわいいかどうかは
さておいて、
私は彼の好みじゃなかった、
私は彼のタイプじゃなかった、
だから進まなかった。
でも、
好きなタイプの子と出会ったら、
そこには草食系なんて言葉は存在しない。
積極的に、自分から、
とんとん拍子にスムーズに
スピーディーに進むのだ。
彼のその後なんて知りたくなかった。
そして、
とってもみじめで
否定された気持ちになった。
紹介してくれた友人は、
私を応援して
励ましてくれていたと思ったのに、
しれっと彼の結婚式に行き、
しなくてもいい報告と、
余計な言葉を2回もくりかえし、
悪気もなさそうに帰っていった。
それ以来、会っていない。
*
ちょっと後味悪い感じに
なってしまったけれど、
私は確かに、インテリではない(笑)
私は確かに、頭がよくない!(笑)
ああ、つらい。(笑)
男はあんまり頭のいい女は
好まないんじゃないの?
一般的にね?←偏見。
でもわたしは
自分の感性を信じて疑わないの。
おばかなりにこれからも、
一生懸命に頭をフル回転させて
負けずに幸せでいよう
って思ったのそのとき。
今思い出してみてもね、
これでよかったのよ
その友人のことは
今でもよく思えないけれど
きっと悪気はなかったんでしょうけど
もうこの先会うこともないしね!
確かに私はかわいいしね!!!!!(号泣)
おい
おぼえてろよ
わたしに!見向きもしなかった男子たち!
おぼえてろよ!!!
なんて
東野圭吾先生の訃報(ふほう)を知って、
東野圭吾を一生懸命読んだ夏を
思い出したわけです。
自分の偏った好みや感性を
どんなきっかけや下心でもいいから
無理やりにでも、
外側へ向けるために、
わたしたちは
いろんな人に出会うのかもしれない。
きっと無駄なことなんて
本当はひとつもない。
結局彼とはつきあえなかったし、
もう顔も名前も忘れたけれど、
東野圭吾を読みまくったあの夏は
忘れないと思うの。
【出店情報!!!!】
■8/1(土)
マルシェCherry🍒Cherry
10:00〜18:00
伊勢崎境赤レンガ倉庫
伊勢崎市境765-1
■8/15(土)
はっぴーわーるどNight
roomsstandard
前橋市元総社町823
(個室ではありません)
■8/29.30(土日)
ごきげんマーケット
ららん藤岡
花の交流館(室内)
藤岡市中1131-8
■9/6(日)
roomsstandard
前橋市元総社町823
(個室ではありません)
■9/20(日)
はっぴーわーるど
10:00〜17:00
roomsstandard
前橋市元総社町823
■9/23(水祝)桐生
ゆうきこよみFes.
西企画様のイベントに出店させていただきます
美喜仁桐生文化会館小ホール
群馬県桐生市織姫町2−5
ハリリーナはロビーにて出店。
出店時間は10:00〜14:30くらいまでです♡
入場無料・申し込み不要です
■9/26(土)
11:00〜17:00
広瀬川河畔緑地
前橋市千代田町3丁目3
■9/27(日)
神々の遊び
10:30〜16:00
伊勢崎境赤レンガ倉庫
伊勢崎市境765-1
■10/4(日)藤岡
11:00〜16:30
よりどころ
藤岡上州諏訪神社
藤岡市藤岡495
■10/10.11(土日)前橋
■10/12(月祝)
おうちやさんのマルシェ
アーキスホーム様
藤岡市中920-1
■11/15(日)上里
法泉寺マルシェ
埼玉県児玉郡上里町七本木3215-1
※法泉寺様は墓地分譲中♡
■11/21.22(土日)桐生
2026蔵KURAデザインフェス大祭典
10:30〜15:30
桐生市織姫町2-5
桐生地域地場産業振興センター
第一・第二ホール
■11/23(月祝)
性教育フェスタ
群馬県青少年会館
群馬県前橋市荒牧町2番地12
性教育推進プロジェクト
■11/29(日)
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お待たせしたり、
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今年も元気に!

















































