アスペルガーの教訓 1
アスペルガー症候群 と言う言葉は、英国のローナ医師が1981年に初めて用いたそうです。
彼女は、自閉症の子を持つ親でもありました。
それまで自閉症は、ドイツ人のカナー医師の研究によって特殊な疾患だと誤解されていました。
カナーはナチスから逃れ米国で活動しましたので、この事も彼の主張を社会が受け入れる事に影響したのかも知れません。
ローナは自閉症が非常に幅の広い状態であると考え、これを解釈したドイツ語の論文を発見して、その著者をたたえて アスペルガー症候群 と命名しました。
アスペルガー医師はナチス政権下のオーストリア人でした。
ナチスは 人間の優劣 を判断して障害児を排除する優生思想を実行していましたが、彼はこれに抵抗して自閉症の子供たちを 小さな教授たち と呼んで尊重し、守っていた、はずでした。
この病院で働いていた他のすべての医師はナチスによる障害児の安楽死に加担したとして追放され、彼だけは1980年に亡くなるまでキャリアを全うしました。
反ナチスのヒーローでした。
自閉症が特殊な疾患として誤解される元となった米国のドイツ人医師が反ナチスなら、その誤解を解く研究をした医師も反ナチスでなければなりませんでした。
特殊な疾患でなく 小さな教授たち なのだ、という主張は彼をヒーローにしていましたが、2018年4月に衝撃的にこれは覆りました。
当時の資料を再検討したところ、障害児を安楽死させていたナチスにアスペルガーは 積極的!に 加担していたことが判明しました。
またこの政策は、ナチスによる民族浄化達成の目的の前に、ある障害児の父親からの安楽死を求める訴えから始められたことも示されました。
論文により実際には彼は反ナチスのヒーローではなかった事が分かったため、研究者は アスペルガー の名称を使用しないように求めています。
ナチス政権下で安楽死させた障害児の脳を解剖して調べた医師をたたえて名付けられた スパッツ病 と言う名前も使われなくなりました。
アスペルガー症候群 と言う名称も使われなくなるかも知れませんが、実はすでに学術的には障害を単純にくくれない事が認められるようです。
高機能 と言う言葉で示される通り人は多様性に富み、優劣 を単純に区分できません。
そしてこのころ自閉症はワクチンが原因だとの間違った仮説が出されたため、多くの人が接種を拒み感染症が広がる事にもなっているとされます。