悲しすぎる。辛すぎる。自分と置き換えて考えると、眩暈がする。楽しかったお正月のはずが。こんな事故、防ぎようがない。どうしようもない。幸いにも生きている全ての人は、他人の命や心を傷つけて良いはずがない。


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あの日、石川県警の警察官、大間圭介さん(42)(金沢市)は、妻はる香さん(38)、長女優香さん(11)、長男泰介君(9)、次男 湊介そうすけちゃん(3)とともに、珠洲市内にあるはる香さんの実家にいた。居間のこたつでくつろぐ、いつもどおりの元日だった。突然の揺れに、大間さんは屋外に出て、安全を確認した。その直後、2度目の揺れに襲われた。目の前で裏山の土砂が崩れ、家を押し流した。気が動転し、「何とか生きていてほしい」と4人の名前を叫び続けた。

 消防などの捜索で4、5日に4人全員が見つかった。「寒かったね。怖かったね。助けてあげられなくてごめんね」と声を震わせた。

医師を目指していた優香さんは、大間さんに頻繁に手紙をくれた。2021年、東京五輪・パラリンピックの警戒警備で東京に出張する前日にも、「向こうで読んでね」と手紙を渡してくれた。「頑張ってね。大好き。帰りを待っているよ」。きれいな字がぎっしりと詰まっていた。仕事中に思い出すと、「頑張らなだめやな」と気が引き締まった。

 家族思いの泰介君は、率先してゴミ出しをしたり、洗濯物をたたんでくれたりした。小遣いを家族のために使うこともあり、「自分に使え」と言っても聞かなかった。昨年の大間さんの誕生日には暖かいトレーナーを贈ってくれた。「だからクリスマスには、ゲームも服もカードもいっぱい買ってあげた」

 甘えんぼの湊介ちゃんには、赴任先から帰るたびに抱っこと高い高いをせがまれた。きょうだいと年が離れていることもあり、家族全員からかわいがられた。

 土砂崩れでは他の親族も犠牲になった。「自分だけ生き残った罪悪感がある」と大間さん。「家族が頑張って生きた証しを残したい」と語った。

 13、14日に金沢市で行われた通夜と告別式。会場では、子供たちの友達らのむせび泣く声が響いた。喪主のあいさつで、大間さんは家族に呼びかけた。「かけがえのない時間を与えてくれてありがとう。生まれてきてくれてありがとう。永遠に僕の宝物だよ」