べちー子’s駄文保管庫 -3ページ目

べちー子’s駄文保管庫

駄文保管庫です。
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徒然なるままに
http://ameblo.jp/xxbetty2xx/

受け取った本を店員に渡し、あわてて会計を済ませて店を出た。
あたりを見回すと少し先に先輩の後ろ姿を見つけて後を追う。


千鶴「斎藤先輩!」


先輩は足を止めてゆっくりとこちらを振り返った。
私の姿を見て「まだ何か用か」といわんばかりの顔をしている。


千鶴「本、ありがとうございました!」


斎藤「礼を言われるような事は何もしていない。
あの本はあんたが先に取っていた。それだけのことだ」


きっぱり言われて二の句も告げなくなってしまう。
私が言葉に詰まっていると、話は終わったと思ったのか先輩はきびすを返して歩き始めた。
先輩が離れていくのを見てなんとも言えない感情が私を襲った。

千鶴「あ、あの!お茶でも…しませんか?」


どうにか先輩を引きとめようと反射的に出た言葉だった。
なぜ引き止めなくてはいけないのか自分自身もよくわからない。
ただ、このまま話を終わらせたくなかった

千鶴「えと、その、本を譲っていただいたお礼というか何と言うか……
深い意味はなくて……だからその……」


しどろもどろになりながら苦しい言い訳のようなものを続けた。
自分でも支離滅裂なのに、どんどん訳がわからない方向に行っている。
ああ、消えてしまいたい。


千鶴「剣道部の親交を深めようかなって思いまして、
あ、でも親交というわけではなくて、剣道部とかは関係なくてですね…」


斎藤「…………」


斎藤先輩は無表情で私の顔を見つめて黙っている。
それが尚更いたたまれない。
喋れば喋る程、どつぼにはまっていく。


斎藤「……そこの喫茶店でどうだ」


千鶴「え?!」


予想外の返答に頭のてっぺんから抜けるように声が出た。


斎藤「……本の礼はいらん。割り勘だ」


言われている意味はわかっても状況が理解できずフリーズする。


……これはお茶を飲んでくれるということで合っているのかな?

まじまじと先輩の顔を見ているとスッと目をそらされた。


斎藤「……は、…入らないのか?」


千鶴「えっ?あっ!……は、入ります!入らせてください!」


先輩の言葉に我に返った。

先ほどまで私の顔を無表情に見ていた先輩はなぜか顔をそらしたままだ。

視線をそらしたままの先輩の顔を盗み見る。
あたりは薄暗く、ネオンや街灯の灯りに照らされてはっきりとは見えないけど、
先輩の頬が赤くなっているように見えるのは私の気のせいだろうか。

なんだかすごく珍しいものを見てしまった気がする。

先輩は気まずそうにスタスタと喫茶店に向かって歩いて行ってしまった。
あわてて私は後を追いかけた。
――花火大会の日

仲のいい友達はみんな花火大会に行ってしまったため、私は一人で家にいた。


千鶴「あーあ、今頃みんな楽しんでるかなぁ……」


ベッドに横になり、はぁーっと大きなため息をついた。
勉強しようと机にむかったけど全然頭に入ってこない。
机の上には開きっぱなしの参考書がそのままだ。


千鶴「やっぱり私も行けばよかったかなぁ……」


本を読んだり音楽を聴いたりして時間を潰してみたけどなんとなく落ち着かない。
花火大会に行かなかったことを激しく後悔した。


千鶴(気が滅入るなぁ……気分転換に外にでも出ようかな)


「よしっ本でも買いに行こう」決心して私はベッドから飛び起きた。


外に出ると空は夕焼け色に染まっていた。
本屋に向かう途中に浴衣姿の女の子と何回か擦れ違う。


千鶴「浴衣か……。いいなぁ…」


最後に浴衣を着たのはいつだっただろう。
父子家庭で育った私は着物はおろか浴衣も片手で数えるぐらいしか着た覚えがない。
いつも忙しそうにしているお父さんを見ると
自分の要望は我侭でしかないような気がして言えなかった。


千鶴「花火大会…行きたかったなぁ…」


擦れ違う女の子達の後ろ姿を見つめながら私はつぶやいた。
本屋に着くとまっすぐ新刊コーナーにむかった。
平置きしてある本の中から買い揃えている作家の文庫本が目にとまる。


千鶴「あっ!これもう3巻出てるんだ。2巻も一緒に買わなきゃ」


まわりを見ても平置きされた本の中には見当たらない。
きっと在庫本として棚に戻されたんだろうと私はそのまま店の奥に進み
本棚を目で追いながら2巻を探した。


千鶴「あった」


小さくつぶやいて本に手を伸ばした。

背表紙を持った瞬間……他の人の手が私の手にかぶさった。
驚いて反射的に手を払いのけてしまったものの、すぐに我に返りあわてて頭を下げた。

千鶴「す、すいません!」


驚いたとは言え失礼な態度をとってしまった。
頭の中でどうするべきか最善策を模索する。


「……雪村?」


聞き覚えのある声。
声の主を確認するまでもない。


千鶴「斎藤先…輩…」


顔を上げて一応確認してみた。やっぱり斎藤先輩だ。
部活以外ではあまり会いたくないのになんでこんな所でばったり会うんだろ


斎藤「あんたもこの本買うのか」


斎藤先輩の手には先ほど私が手を伸ばした文庫本があった。
私服姿の先輩は初めて見たけど今の私にはどうでもよかった。


斎藤「残念だが、1冊しかないようだ」


千鶴(はぁ…最悪だ……)


斎藤先輩はいつも無表情で何を考えているのかわからない。
話しかけても必要最低限のことしか言わないし端的に物をズバッというのも苦手だ。
まさに近寄りがたい存在。


斎藤「だからこれは……」


千鶴「あ、大丈夫です!私予約しますから!それは斎藤先輩がどうぞ!」


斎藤「お、おい……!」


この状況をなんとか打破するべく話を無理矢理切り上げ。
私はカウンターに小走りで向かった。


店員「この本予約殺到で入荷未定なんです。近隣の本屋にも在庫がないみたいで…」


店員が申し訳なさそうに私を見る。きっと今日の運勢は最悪なんだろう。
本屋に来なければよかった。


斉藤「雪村」


急に名前を呼ばれて勢いよく振り向いた。
いつのまにか斎藤先輩が後ろに立っていて思わず身構えてしまう。
先輩は先ほどの本を私の手に置いてまっすぐに私を見た。


斎藤「これは雪村が先に手に取った。だからあんたが買え」


そういうと斎藤先輩は出口に向かい歩き始めた。
以前アップした薄桜鬼ゲームの斉藤ルートをそのまま文章に起こしました。
なので文章的におかしなとこもちらほら。
自分なりに直したつもりですが、大目にみてやってください。
これからゲームするつもりの方はゲーム終わってからのほうがよろしいかもしれませぬ。
盛大なネタバレですので。
それではどんぞ。

******************************


千鶴「どうしよう。間に合うかな…」


ハァハァと息を切らせながらつぶやいた。

今日は全体朝礼のある日。
うっかり目覚ましをかけ忘れた私は校門のしまるぎりぎりに校内に入った。


「雪村、時間ぎりぎりだ。学校にはもっと余裕をもって来ることを心がけろ」

物静かなたたずまい。
風紀委員と書かれた腕章を袖につけた斎藤一先輩が名簿を手にこちらを見据えていた。
斎藤先輩は剣道部副部長。

感情の起伏がない人で無口というか……寡黙な人だ。
私はちょっと苦手だ…。


千鶴「はい、すいません…」


斉藤「今日は朝礼の日だ。早く体育館へ行け」


軽く頭を下げて私はきびすを返した。
斎藤先輩を前にすると変に緊張してしまう。
やっぱり苦手だ。

体育館には既にほとんどの生徒が集まっていて、ざわついている。
私は自分のクラスの列がわからずうろうろとクラスメートを探していた。


「千鶴、こっちだ。早く並べ」


ふいに腕を引っ張られて列に並ばされた。
横を見ると原田先生が顔を覗き込むようにして笑っている。
お礼を言うと手で私の頭を軽くポンポンとたたいた。

原田左之助先生は私のクラスの担任。
なにかしでかしてはよく土方先生に注意されてる。
この間は「課外授業だ!」と言ってクラス全員で鬼ごっこやって怒られていた。


左之助「お前がぎりぎりなんて珍しいな。次はもっと早く来いよ」


そういって原田先生は壁際に並んだ先生達の列にまぎれてしまった。

チャイムが鳴り、ざわついていた生徒がしずまる中、朝礼が始まった。
簡単な情報伝達の後、南雲校長が壇上に上がる。


南雲校長「最近この学校の風紀が乱れています。実に嘆かわしいことです」


校長はため息をゆっくりと吐いて続けた。


南雲校長「今週末に花火大会がありますが、毎年少数のおろか者のせいで学校の品格に傷がつきます。よって、今年は花火大会に行くのを禁止します」


生徒達がどよめくと南雲校長は咳払いをひとつして静かにするように促す。


南雲校長「静粛に。破ったものは停学に処します。学生の本分は勉強。
くだらない娯楽にうつつを抜かす暇があるなら英単語のひとつでも覚えなさい。以上。解散」


ざわついたまま生徒達はそのまま教室へ移動を始めた。

教室でも花火大会の話題でもちきりだった。
クラスメートは「また禁止かよ」「楽しみにしてたのに酷い」と口々に文句を言っている。

南雲校長は今年就任してきた人だ。
先代の校長は厳しくもありやさしくもある人望の厚い人だったらしい。
南雲校長に代わってからはイベントは全て禁止。
校則も厳しいものに変えられた。


千鶴「楽しみにしてたのにな・・・」


ぽそりとつぶやくと、「ちーづる!」の声と同時に後ろから抱きしめられた。
同じクラスの千姫が大きな瞳を私の肩からのぞかせた。


千姫「花火大会、行くでしょ?」


千鶴「え?……でも朝礼で禁止って」


千姫
「守るわけないじゃない。しかも花火大会って何千人って人がくるのよ。
行ってもばれないわよ!ね、行くでしょ?」


千鶴(どうしよう…)


南雲校長の言葉と千姫の言葉が脳内をこだまして私は考え込んでしまった。
なげえ!調子にのった結果がこれだよ!
薄桜鬼SSLの小説です。
若干配役違いますが大方一緒です。

千鶴・・・剣道部マネージャー
土方・・・剣道部顧問・教師
平助・・・剣道部・幼馴染
沖田・・・剣道部部長
斎藤・・・剣道部副部長・風紀委員長
千姫・・・親友
南雲・・・校長
山南・・・教頭

長いですが、覚悟のある方どんぞ


薄桜鬼小説ぐるっぽつくりました。
よかったら参加してください。




****************

「やっべえ、寝過ごしたー!」

「もうっ平助君!またゲームで夜更かししたんでしょ!?」

私は平助君に手をひっぱられ朝の通学路を走っていた。
平助君は朝ごはんを食べる暇もなかったらしく食パンを口にくわえている。
私の幼馴染で同じ剣道部に所属する、といっても私はマネージャーだけど。

「セーブポイントが見つかんなくてさ!」

「言い訳になってないよ」

「おはようふたりとも」

走る私達の後ろから聞き覚えのある声がする。
沖田先輩だ。
一生懸命走っている私達の後ろを息も乱さずついてきている。
先輩は剣道部部長。全国大会で何回も優勝経験のある実力者。
でも普段はそんな素振りを全くみせない。

「沖田先輩・・・おはようございますっ」

「げっ総司?!もうそんな時間かよ!」

「人の顔見てその反応は傷つくなぁ」

くすくすと余裕の沖田先輩。あせっている様子は全くない。

「だってお前がいるって事はオレらも遅刻決定じゃん」

「大丈夫だよいつもより5分早く出たから」

沖田先輩が遅刻したところを見たことがない。
ということはいつもこの時間でも間に合っているということだ。
俊足なんだなぁ。なんて事をぼんやり考えていると平助君が私の手を一層強く引っ張る。

「走るぞ!」


チャイムが鳴り始める中、私達は校門にたどり着いた。

「よっしゃ!ゴール!」

「残念だったな・・・少しばかり遅かったようだ」

物静かなたたずまい。
風紀委員と書かれた腕章を袖につけた斎藤先輩が名簿を手にこちらを見据えていた。

「3秒ほどオーバーだ」

「たった3秒?!」

平助君と声がかぶる。

「3秒といえども遅刻は遅刻。校則第8条により失点2だ」

「なんだよそれ!横暴だっつの!」

「まぁ別に僕はそれでもいいけど。失点なんて無視すればいいしさ」

喚く平助君とは対象的にゆったりと話す沖田先輩

「それぐらいにしとけ」

斎藤先輩の後ろから低い声がした。

「斎藤。3秒ぐらい大目に見てやれ」

切れ長の瞳。漆黒の髪。道行く人が振り返るほどの丹精な顔立ち。
美々しいとはこういう人をいうのだろう。
黒いスーツを着た土方先生。女子生徒にも人気が高い。
剣道部顧問で鬼のようなしごきを知らなければ私もその女子生徒の一人だっただろう。

「土方先生がそうおっしゃるのなら」

斎藤先輩は先生に丁寧にお辞儀をして門を開けてくれた。

「てめえらも、次はもっと余裕を持って来い。あと、早くしねえと朝礼に遅れるぞ」

そういって土方先生は校舎に歩いていってしまった。

*********

講堂に入り私達は各クラスの列に並ぶ。
簡単な情報伝達の後、南雲校長が壇上に上がった。

「最近この学校の風紀が乱れています。実に嘆かわしいことです。
今週末に花火大会があります。
毎年少数のおろか者のせいで学校の品格に傷がつきます。
よって、今年は花火大会に行くのを禁止します」

生徒にどよめきが起きる。

「静粛に。破ったものは停学に処します。
学生の本分は勉強。
くだらない娯楽にうつつを抜かす暇があるなら英単語のひとつでも覚えなさい。
以上。解散」

「横暴だ」「楽しみにしてたのにひどい」など生徒の間でも文句が飛び交う。

「楽しみにしてたのにな・・・」

ぽそりとつぶやくと後ろから「ちーづる!」と抱きしめられた。
同じクラスの千姫が私の肩から顔をのぞかせた。

「花火大会、行くでしょ?」

「え?でも今禁止って・・・」

「守るわけないじゃない。
しかも花火大会って何千人って人がくるのよ。行ってもばれないわよ
ね、行くでしょ?」

千姫の押しに負けて私は花火大会に行くことになってしまった。


********

花火大会当日。
私は船姫の部屋で千姫のお母さんに浴衣を着せてもらっていた。

「浴衣って久しぶりだ~」

髪を結ってもらって私は鏡の前で自分の出で立ちを確認していた。
父子家庭で育った私は着物はおろか浴衣を着た機会も数えるほどしかない。
久しぶりにきた浴衣に私はうれしくてしょうがなかった。

「おーい。迎えにきたぞー」

窓の外で声がする。
窓から覗くと平助君を含む数人のクラスメートがいた。

「いま出るわねー」

千姫が片手を挙げて返事をして私達は外にでた。


**********

花火大会会場はたくさんの人でごった返していた。
少し気を抜くとはぐれそうだった。
慣れない下駄で鼻緒部分が靴擦れのようになる。

「千鶴、はぐれんなよ」

平助君が手をつないでくれ、
なんとかクラスメートが取ってくれていた場所にたどり着いた。

夜空に浮かぶ花火は実に見事で幻想的だった。
花火も終盤にさしかかった時、私はトイレに席を立った。

「すごい人だなぁ」

ごった返した人ごみにもまれながらもなんとか前に進む。
やっとの思いでトイレを済ませて外に出ると足元に激痛が走った。

「いったぁ・・・」

鼻緒部分が赤くはれ上がっている。

---慣れないことはするもんじゃないなぁ

「大丈夫か?」

屈んで鼻緒をゆるめようとしていると頭上から話しかけられた。
見上げて私は凍りついた。

「・・・・土方先生!」

「おまえ!・・・雪村!」

どうしよう。見つかってしまった・・・。
固まって動けない私を土方先生は物陰に移動させた。
直後にまた別の声がする

「土方先生?うちの生徒はいましたか?」

「ああ、山南教頭先生か。いや、いなかったぜ」

「そうですか。それではそろそろ切り上げますか」

「そうだな。じゃあ俺はこのまま帰らしてもらうぜ」

山南教頭は「わかりました」と答えるとそのまま行ってしまったようだ。
私、もしかしてかばってもらったのかな。
しばらくすると隠れていた物陰に土方先生が来た。
どうしよう、やっぱりすごく怒ってる・・・。

「お前、何やってんだ」

「えっ・・あのっ・・・」

「花火大会は禁止って言われただろ」

「はい・・・すいません・・・」

はぁーっとあきらめたようにため息をつくと「来い」と私の腕をつかんだ。
歩き出そうとして痛みに足がもつれる。

「どうした」

「あの・・・足が」

「ったく」

私の足を見てすぐに状況を理解したのだろう。
つかんでいた腕を放してふわりと私を抱き上げた。

「わっ!あ・・あの?!」

「おとなしくしてろ」

あわてる私の事なんか眼中になくスタスタと歩き出してしまった。
男性に抱き上げられるなんて初めての経験だ。
人ごみの中をすいすいと抜け、
駐車場まで来ると停まっている車の助手席側に降ろされた。

「乗れ」

おずおずと助手席に乗り込むと先生は運転席に座って車を発進させた。

「お前の家はどこだ」

「えと、商店街のはずれにある雪村医院です」

「わかった」

「・・・・あの・・なんでかばってくれたんですか?」

沈黙が流れる。
聞いちゃだめだったのかな。そもそも話しかけるべきではなかったのかも・・・。

「学生だっつっても、たまには息抜きしてえだろ」

そういってやさしい笑顔をむけてくれた。
もしかしたら先生はすごくやさしい人なのかもしれない。
先生の意外な一面をみたせいか私の鼓動が少し高鳴った。
いつも冷たい表情で回りを寄せ付けない迫力なのに、すこし先生に近づけた気がした。
先生のことがもっと知りたい。
しかし、車はすぐに家についてしまった。

「ありがとうございました」

助手席を降りて先生にお辞儀をする。

「あんまり羽目外すんじゃねえぞ」

私の頭を軽くこずくとくしゃっと前髪をなでてから先生は帰っていってしまった。


***********

次の日、私は先生にお礼を言うために部室に早めにやってきた。

「お礼を言うためであって、話がしたいわけじゃないんであって・・・」

なぜか自分に言い訳をしながらドアをあける。
部室には案の定先生一人だけだった。
部屋の隅に置いてある机で書き物をしている。

「おう、早いな」

先生はちらりとこちらを見たがすぐに手元の書類に視線を落としてしまった。

「あ、あの、昨日は送って下さってありがとうございました」

すると先生はこちらを向いた。
とても冷たい表情で。

「お前がやったことは校則違反だ。今後は二度とない」

あの笑顔を期待していたわけじゃない。
でも、何かしらの会話ができるんじゃないかと期待してた。
冷たく刺すような物言いに私は何もいえなくなってしまった。

「用がそれだけなら、さっさと部活の準備しろ」

「・・・はい」

近づけた気がしたのは私だけだったのかな・・・。
私の心は真っ暗に塗られてしまったように落ち込んだ。