ある日、子犬のとらちゃんが手紙をもらいました。だれがくれたのかわからないけど、とらちゃんなりに返事を書きました。どこへ届ければいいのかわからない手紙、とらちゃんはどうしようかなと、あちこち歩きまわり、宛先もわからないままポストに入れてみました。明くる日、とらちゃんに手紙が届きました。宛先不明と書いてある、自分の出した手紙でした。けれど中を開いて読んでみると、自分が書いた手紙への返事が書いてありました……いったい誰?……手紙が届いてるわよ、と、とらちゃんに手紙を手渡したお母さんは、とらちゃんが首をかしげてる後姿を見て、クスッと笑いました。手紙の主は実はお母さんでした。昨日とらちゃんが手紙を受けとって、さて、どうするだろう?と、ワクワクドキドキしながら見守っていたお母さんは、とらちゃんがポストに手紙を入れてくるとは思いませんでした。宛先不明で戻ってきた手紙を急いで読んで、手紙を新しく書いて、中身を入れ替えてたのでした。「とらちゃん、誰からの手紙?」「うーん、わかんない」お母さんはまたクスッと笑ってキッチンへ行きました。「とらちゃーん、おやつのクッキーが焼けたわよー」「はーい」とらちゃんは、手紙を机の上に置いてキッチンへ歩いていきました。春風の強かったその日、窓を開けたままのとらちゃんの部屋に、ビューっとひときわ強い風が入りこみました。すると、机の上にあった手紙は風に乗って、外へ、さらに上空へと舞い上がっていきました。とらちゃんもお母さんも、キッチンでクッキーを食べていて気がつきません。手紙は空高くを舞い続けて、町をぬけて、野山の方向へ飛んでいきました。山里の畑にフワッと舞い降りた手紙は、ちょうど畑をたがやしていた、とらちゃんのおじいちゃんに拾われました。「何だこれ?」おじいちゃんは中を読むとニッコリ微笑み、小さくたたんで、ズボンのポケットに大切にしまいました。手紙の内容はこのようなものでした。「とらちゃんへ。毎日学校で楽しく過ごしてるみたいですね。僕は学校には行ってませんけど、とらちゃんの手紙で、楽しそうな様子が伝わってきて、うれしくなりました。またお手紙しますね。さようなら」……………………………おじいちゃんは畑をたがやしながら、「とらちゃんは元気に学校に行ってるかあ…このお友達はきっと風に手紙をさらわれてしまったんだろう…新しく書いてるだろうから、とらちゃんには見せずにおこう。家のたんすの引き出しにでも入れておこう。思わぬ所でとらちゃんが元気な事がわかって、わしもうれしくなってしまったな…ワハハ……」一人つぶやきました。春風に花の香りが混ざる、ポカポカ陽気の午後でした。~とらちゃんの手紙、おしまい~……………思いつきの童話、絵本の種、でした。