スパーホークが怒鳴った | いであたた

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「あと五十リーグほど――五日かそこらだろう。スパーホークを三日以上引き離しているとは思えないから、今の調子で進むしかない」
「もうくたくただ。こんな調子で進むのは慣SCOTT 咖啡機れていない」
「疲れたと文句を言いたくなったら、スパーホークの剣が自分の腹を貫くところを想像してみるんだな。エラナに首を斬られるときの苦痛を思ってもいい。裁縫用の鋏《はさみ》か、パン切りナイフでな」
「おまえになど会わなければよかったと思うことがある」
「それはまったくお互いさまだ。ゼモック国に入ってしまいさえすれば、スパーホークの足取りを鈍らせることもできる。街道に待ち伏せ部隊を配置したから、少しは慎重になるだろう」
「殺すなと言われているんだぞ」アニアスが反対する。



「何を寝言を言っている。ベーリオンを持っている限り、人間にやつを殺すことなどできん。やつを殺すなと――たとえ殺せてRF射頻も殺すなと言われてはいるが、ほかのことについては何も指示はないんだ。仲間を何人か失えば、われわれの敵も多少は動揺するだろう。本人は認めたがらないが、スパーホークは心やさしい男だからな。少し眠っておいたほうがいいぞ。アダスが戻ったらすぐに出発だ」
「暗い中をか」アニアスが信じられない顔になる。
「何がまずいんだ、アニアス。闇が怖いのか。腹に突き立った剣か、首の骨をがりがり削るパン切りナイフのことを考えろ。そうすれば勇気が出る」
「クワジュ! もういい! 消えろ!」。
 炎はたちまち正常に戻った。
「青い薔薇、ノームの声を連れてこい!」スパーホークはさらにそう命じた。
「何をするつもりです!」セフレーニアは叫び声を上げたが、ベーリオンはもう反応を始めていた。輝く群青の花弁の中に黄緑色の点が生じ、スパーホークの口の中にいやな味が広がった。腐りかけた肉のような味だ。
 スパーホークは鋭く声をかけた。
「ノーム、わたしはエレニアのスパーホークだ。指輪を持っている。ノームは命令に従わなければならない。わたしは狩りをする。ノームはわたしの狩りを手伝う。わたしは獲物の人間から二度の眠りだけ離れている。ノームはわたしの狩人とわたしが、獲物の人間に追いつけるようにしろ。その時がきたらエレニアのスパーホークが言うから、ノームは狩りを手伝う。ノームは従わなくてはならない!」
 またしても虚ろな、反響する怒りの声が響いた。今度の咆哮には何かを噛《か》むくちゃくちゃという音と、恐ろしげな舌なめずりの音が混じっていた。
「ノーム! 消えろ! エレニアのスパーホークが命令したら、ノームはまたやってくる!」
 黄緑色の光点が消え、スパーホークはベーリオンを袋の中に戻した。
「気でも狂ったのですか!」セフレーニアが叫んだ。
「そういうわけじゃありません。マーテルが待ち伏せを仕掛けたりできないように、すぐうしろに迫っておきたいんですよ」眉根を寄せて、「わたしを殺そうとしていたのは、どうやらマーテル独自の考えだったらしい。だが今は違う命令を受けているようです。事情は少しはっきりしましたが、今度はあなたや仲間たちの身を心配する必要が出てきました」スパーホークは顔をしかめた。「いつだって何かしら心配事があるんですからね」
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