『Tokyo middle 30』のことだ。
まず、確認しておこう。この主人公3人って、本来、ちゃんとしていれば、経済的に困る可能性がまったくないよね。くるまき(麻紀)はかつて会社の売り上げを爆増させた広報の手腕、薫子ちゃんは教師という国家資格ありの安定職業を10年以上しっかりと勤めている、はるきゃん(遥)は高級ブティックで売り上げ目標を下回ったことなし。そして、それが達成できるということは、この3人は、極めて聡明で優秀で有能であるということにほかならない。
第8話だったかな、観てて思ったんだよ、教師という職業の信用度すげーって。薫子ちゃんが別居するための物件を爆速で用意してた。
第9話が終わった時点で、はるきゃんは、そのままの会社では異動必至だけど、実績を引っ提げれば、ほかの会社に余裕で入れて東京を離れる必要もないという道もあったよな。選ぶかどうかはともかくとして。
薫子ちゃんには入籍の前に目覚めてほしかった。クズ彼氏(義孝)がやっとのことで「結婚しよう」って言ってきた時に、「はあ?結婚しようだ?お願いします結婚してくださいだろうが。こちとらシンママでも産み育てるってもう覚悟を決めてんだ。てめえとの結婚なんてすでにオプションに過ぎないんだよ!」くらい言ってほしかった。
ここからが最終話を観て、だ。
くるまきが離婚しないってどういうことだよ。興信所は使わず、宗司本人に直接浮気疑惑を問い詰めて、宗司からいかに浮気はしていないかを切々と訴えられたら、ぽろぽろと涙をこぼして仲直り、仲良し夫婦を続けるって。宗太に発達障害の可能性が持ち上がった時にさんざん「そんなことはない」って否定してきたこととか、くるまきが仕事に復帰したいって言った時に断固拒否して聞く耳持たなかったこととか、宗太の発達障害が確定したあとの療育施設探し等対応のくるまきへの丸投げとか、くるまきが仕事復帰したと知ったあとも家事・育児をまったくせずくるまきをワンオペにしたこととか、くるまきが宗司の健康やクリニックの経営・危機管理を考えていろいろした的確なアドバイスをお小言としてうるさがって文句をたれたこととか、たとえ浮気「だけ」はしてなくても充分クズだろうが。
薫子ちゃんもなんなんだ?別居して3ヵ月後に、喫茶店で義孝と会って、その場で義孝が離婚届に記入するけど、その前に「義孝は優しかった」だの「一人暮らしして気づいたけど義孝は私が苦手な家事をやってくれていた」だの「私も義孝を愛してた」だの、義孝がそんなに悪かった訳でもないかのようなフォローを入れて、義孝が離婚届に記入するのを見ながらぽろぽろ涙をこぼすって。そして、ラストに、たいやき屋の前で薫子ちゃんと義孝がばったり会って、薫子ちゃんが先に買ったたいやきがラス1だったことが分かって、薫子ちゃんはたいやきを義孝にシェアしてやって、まるでこの先2人はよりを戻す可能性があるかも知れないかのような雰囲気を醸すって。5年間の同棲で、結婚の話を嫌がり続けて、薫子ちゃんの意見を一切聞かず、自分は魚を次々と飼うくせに薫子ちゃんに猫を飼わせなかったり食事の内容を制限したり自分のわがままだけは押し通して、薫子ちゃんが妊娠してもなかなか態度をはっきりさせず、結婚して薫子ちゃんが流産したあとは薫子ちゃんの心身を思い遣ることもせず妊活を逸った、あのクズと?だいたい、「一部の家事をする」って、2人以上で暮らす上での最低限の義務であって、「優しさ」でもなんでもないよな。
晃之助のことを考えよう。晃之助が会社の金で愛人と住む家を借りたことは、特別背任や業務上横領という違法行為だ。次に、里奈のことを考えよう。10年以上一緒に暮らし、晃之助の収入のみで2人の支出をすべてまかなって生計を一にしており、入籍はしないものの一生をともにするとの意思表示を受けていたから事実婚は認められる状態にあり、晃之助が繰り返し愛人を作っては別れ話を里奈にさせていたことからも里奈が正妻の地位にあることは歪ながら強固に証明される状況で、繰り返し愛人を作るという度重なる不貞と愛人との別れ話をさせられるという多大なる精神的虐待を受けていた訳だ。そして、なおも晃之助は新しく愛人を作った。そこで里奈が求めたものが、離婚と財産分与と慰謝料ではなく、入籍?しかも、入籍さえすれば愛人は許容する?なんなんだその話は?女を馬鹿にするのも大概にしろよ。それから、はるきゃんのことを考えよう。独身と偽られて関係を持たされ(貞操権の侵害)、一緒に住もうと言われて家まで用意された(会社名義で賃借)から、それまで住んでいた家を引き払って家財道具をすべて処分した。里奈が職場に殴り込んだため、キャリアも失った。すべての生活基盤を喪失した。その上、「俺に養われる身のくせに。身に着けているものもすべて俺が買い与えたものだろ」と蔑まれて高級レストランで下着姿になって、翌日には「ハイスペックな俺の隣を占めて自分も一廉の者であると思いたかったんだろ。友達に付き添ってもらわなきゃ話もできないのか。でも、女の友情なんて表面的な薄っぺらいもんだよな」と暴言を吐かれた。これで、晃之助が、一発はたかれて、消火器あびせられて、無罪放免?冗談じゃない。晃之助に真に与えられるべき制裁は、里奈から離婚され、はるきゃんと里奈から損害賠償と慰謝料と財産分与をむしられ、会社から解任されて背任で告発され、地位と名誉と財産と家庭を失うことじゃないのか?さらに、最悪なのが、はるきゃんが、故郷に帰って、母親の店(美容室)で働き始めたこと。はるきゃんの高級ブティックで売り上げ目標未達なしのスペックを活かせよ。東京に好待遇で迎える会社はいくらでもあるだろ。なんなの?その、結局頼れるのは「地元」と「血縁」だよね、女は親元に帰るのが幸せ、みたいなヘルジャパンエンディング。ふざけるな。
「消火器ぶっかけ」が「スカッとした」?違うだろ。制作側であるおっさん(および名誉おっさん)たちが、「どうせ女にできることなんて、感情にまかせてひっぱたいたり消火器ぶちまけたりするのが関の山」って言いたかっただけだろが。
多分だけどさー、ネットに流れる『Tokyo middle 30』の感想に、「消火器ぶっかけ」の違法性を指摘するものはあっても、晃之助の背任や横領を問うものはないんじゃないの?
性犯罪に無頓着なのも大問題と思ったな。凪子が宗司にいきなり無理矢理キスするシーンがあったけど、性犯罪(不同意わいせつ罪)だよ。即刻警察通報案件だよ。
メインキャラではないから注目されていないけど、一番ひどい扱いを受けているのって、里奈だよね。そもそも、男を財布と考えていて、男に養われるしか能のない女という、もともとの造型がふざけてる。晃之助みたいな気の多い男を10年以上にわたって繋ぎ止め続けているって、ものすごく有能だと思うけど、作中でそんな評価もされてない。上にも書いたけど、10年以上一緒に暮らし、晃之助の収入のみで2人の支出をすべてまかなって生計を一にしており、入籍はしないものの一生をともにするとの意思表示を受けていたから事実婚は認められる状態にあり、晃之助が繰り返し愛人を作っては別れ話を里奈にさせていたことからも里奈が正妻の地位にあることは歪ながら強固に証明される状況で、繰り返し愛人を作るという度重なる不貞と愛人との別れ話をさせられるという多大なる精神的虐待を受けていた訳だ。そして、なおも晃之助は新しく愛人を作った。そこで里奈が求めたものが、離婚と財産分与と慰謝料ではなく、入籍で、しかも、入籍さえすれば愛人は許容するって、本当に舐め腐ってるよ。
日本のおっさんは、なんだかんだ言って、どんな形であっても不倫をするような女(はるきゃん)に成功(東京でバリバリ)されたくないんだろ。それから、男が女から本当に捨てられることには耐えられないんだろ。あと、男のキャリアが女によって傷つけられてはならないんだろ。
「男のキャリアが女によって傷つけられてはならない」と考えてる一方で、「女のキャリアは男が好きに断絶させていい」と考えてるよね。
別の番組の話になるけど、バラエティだったかで、とってもいい話として、文通から始まって結婚に至った夫婦がとりあげられていたんだよ。佐賀に住む夫婦で、文通を始めた時、男性は佐賀在住、女性は千葉在住だったと言っていた。私はそれを聞いて、ああ、この男は結婚で暮らしも仕事も人間関係も何一つ失ってなくて、女性は暮らしも仕事も人間関係もすべてを断って結婚したんだなあ、って思ったんだよね。
『Tokyo middle 30』のことに戻ると、後日談のFOD特別編があるらしいけど、そのあらすじ「最終回から半年後。高校からの親友である麻紀、遥、薫子の3人が、遥が久しぶりに東京に帰ってくるというので、麻紀の自宅でお泊まり会を開催。深夜にお酒を飲みながら、それぞれの仕事や結婚、離婚、そして過去の恋愛の失敗談を赤裸々に語り合います。遥のあざとい元彼・晃之助ことチョロノ助の話題や、15年越しに発覚した『Tシャツ事件』の真相を巡り、やいのやいのと言い合いながら、話題は思いがけない展開へ・・」、どう読んだって、おしゃべりして終わりだよね。晃之助が里奈から離婚されてはるきゃんと里奈から慰謝料と損害賠償と財産分与むしられて会社から背任で訴えられ解任されて地位と名誉と財産と家庭を失ったり、くるまきが改めて宗司の無責任・無理解・非協力に気づいて離婚してついでにくるまきの助力を得られなくなった宗司のクリニックが業績悪化して倒産して宗司は地位と名誉と財産と家庭を失ったり、薫子ちゃんが新たな恋を始める一方で義孝が孤独死したりはしないよね。そして、なんなんだ、犯罪者である晃之助の「あざとい元彼・チョロノ助」という矮小化は。
中国の元のドラマのことよく知らないけど、ちょっと調べてみたら、ずいぶんと結末が改変されてるんじゃないの?そして、きっと、その改変から分かるのは、「日本では女に自立なんて絶対にさせないぞ」という強固な意思なんだろうな。
配偶者は「確かに終盤の展開はもやっとした(うまく言葉にできないけど薫子ちゃんが別居したあと急激に失速した感じがする)けど、それだけでこのドラマのすべてを否定したくない」って言ってるんだけど、違うんだよ。最終話すなわち結末がだめってことは、この話のすべてが台無しってことなんだよ。むしろ、9話までが面白かったからこそ、最終話があんなだったことの罪深さが増すんだよ。
でも、本当に同じ人が書いたのかな。何話だったか忘れたけど、薫子ちゃんが、義孝との関係について、かつてマッチングアプリで知り合って交際・同居を申し込まれた時のことを「結婚に対して焦っていた」「自分の義孝への気持ちについてはよく考えてなかった」みたいに言って、「義孝を愛してない」と明言してたんだよね。それが、最終話で「私も義孝を愛してた」?おかしすぎる。配偶者も「最終話でくるまきの上司の早苗さんが『興信所を使うなんて、離婚する覚悟があるの?』って言ったの、『女性が自分らしく生きることを応援する』って言ってる人だったのに、変だなって思った」と言っていて、確かに、もともとの早苗さんであれば、「判断の材料にするためにも事実を明らかにしないとね」って言って興信所を使うことを後押しして、「どんな結果になっても私はあなたの味方よ」って励ましそう。矛盾してるし、終盤、なんか急に頭悪い感じの脚本になったんだよなー。
9話まではなー、すごかったんだよなー。くるまきには、授かり婚退職からの仕事復帰にまつわる苦労、子どもが発達障害(ADHDと軽いASD)と判明したことへのケア、ワンオペ家事・育児に加えて配偶者の仕事のフォロー、配偶者とのコミュニケーション不全、配偶者に言い寄る女性の影、薫子ちゃんには、クズ彼氏との5年におよぶ不毛な同棲からの妊娠からの入籍からの流産からの別居からの離婚、教師としての仕事のあれこれ、後輩教師長野郁くんとの交流、はるきゃんには、自身のキャリアに対する不安、産廃男との出会いからの恋愛からの泥沼巻き込まれからの公私すべての喪失、と、とても10話程度のドラマに詰め込んでいい量じゃなくて、これだけの内容が、まったくごちゃごちゃせず、すっきり分かりやすく描かれていて、脚本家さんの力量すさまじいな、と思っていたんだよ、9話までは。
ここには2つの矛盾した思考が働いているんじゃないかと思うんだよな。1つは、制作側は、くるまきと薫子ちゃんとはるきゃんを、特に有能と思ってないんじゃないかということ。どこにでもいる(能力も含めて)普通の女性だとでも思ってるんじゃないかと。なんならはるきゃんに至っては無能寄りと。広報はちょっと気が利く程度、教師なんて子どもの相手をするだけの誰にでもできる仕事、アパレル店員は「いらっしゃいませー」と言ってるだけの存在と。一方で、本能的に恐怖を覚えたんじゃないかな。中国の原作に沿って主人公3人を造型したら思いのほか聡明で優秀で有能な女になっちゃって、「男の立場が脅かされるー」って。だから、ことさらに貶めた。
また別の番組の話になるんだけど、私、今、『ビーファイターカブト』を観てて、蘭/ビーファイターテントウって、プログラミングの能力はすさまじいがいささか社会常識に欠ける、くらいの造型だったのが、22話「轟く三味線炎の女将」で旅館の女将を極めて有能にこなしてて、旅館の女将として有能ってことは、どんな職場でも凄腕のマネジャーとして働ける能力があるってことだから、矛盾してるなー、って思ったんだよね。女将の仕事を舐めてるのかなあ。まー、深く考えてない、が正解なんだろうけどね。ただ、その深くは考えていない裏に、女将の仕事への軽視がある。
『Tokyo middle 30』のことに戻ると、配偶者は、『Tokyo middle 30』の結末があんなことになった件について、「あんまり強烈な行動をとることに(仲里依紗さん・深川麻衣さん・のんさんの)事務所がNGを出したんじゃないかな」って言ってたけど、そんなことあるかなあ。私はないと思うけど。だって、そんなこと言ってたら、殺人犯の役とか作れなくなっちゃうよ。
私、最終話を観る直前、「本当に3人ともクズ男を処分できるのかな。もとは中国のドラマで、中国人はドライだからスカッと決着つけられそうだけど、日本人はウエットなんで、『日本ではそういう極端な結末は好まれないから』みたいなぬるい理由で、軟着陸に話が書き換えられていたらいやだなー」って言ってたんだよね。実際は、別方向でそれどころではない大事故だった訳だけど。
もしかしたら、当初は中国の原作ドラマに沿ったクズ男処分・自立・大成功の脚本が書かれていたけど、上層部(おっさん)に書き直させられたのかも知れない。もし、本当にそういうことが起こっていたとすれば、書き直させる理由に使ったのは「日本ではそういう極端な結末は好まれないから」だったんだろうな。
もし、『Tokyo middle 30』がクズ男処分・自立・大成功の話で終わっていたら、すさまじい非難が起こっていたんだろうな。でも、必ず、3人(里奈も含めた4人かも知れない)の生き様に勇気づけられた女性たち(そして間違いなく男性も)がいたと信じているよ。
なんで『三十而已』とやらを輸入してリメイクしようと思ったんだろ。ちゃんと中身をみてなかったのかな。「なんかアジアで爆発的に売れてるドラマがあるらしい。同じプロットで日本版にリメイクしたら売れるだろ」くらいの考えだった?頭悪すぎない?
『Tokyo middle 30』は大チャンスだったのになー。全国ネット・地上波・プライム帯というメインストリームのどまんなかで聡明・優秀・有能な女性たちのクズ男処分・自立・大成功を描くという日本のドラマ史を変える快挙を成し遂げる。もし猛批判を受けたとしても「中国の原作ドラマどおりに作っただけだから」って逃げ道すらあったのになー。
余談になるけど、子ども向けのコンテンツの方がよほど人権に配慮してるよね。『超宇宙刑事ギャバン インフィニティ』で、レイジが記憶喪失になったキキの手を握るシーンがあって、記憶喪失のキキにとってレイジは見ず知らずの体の大きな歳上の男性になる訳だけど、レイジはキキに「手を握るよ。いいね」って言って同意を得てから手を握ってた。
まー、でも、あれだな、特撮も昭和・平成初期は(悪い意味で)すごいよね。『ウルトラマン』の第1話では、フジ隊員のことを「彼女も科特隊員とはいえ女の子ですからショックで気がおかしくなったんじゃないですか」とか言ってた。
面白いのは、昭和・平成初期の特撮であっても、意外と敵(悪の)組織は、性別役割分担だったり女性蔑視だったりしないこと。女性がトップのこともあるし、幹部に男女両方いる場合も別に性別で役割が違ったりしない。
最後に配偶者の名誉のために言っておくと、私がきちんと話せば、配偶者はちゃんと理解するよ。
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