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私は怒りを含んだその滅多に聞かない声色に何も言えなくなってしまう。
「…俺が、誰の欲しいのとか…解らない?」
翔太くんを見れなくて…見たら泣いてしまいそうな気がして下を向いたままの私に。
翔太くんは私が怒っていると思ったのか、帰るなと鞄を持つ。
言わなくちゃ…違うって。
謝らなくちゃ…ただのヤキモチなのに、
だけど何も言えなくて。
…どうしよう、
翔太くん凄い怒っていた。
いつも一緒に居たからこそ何に対して怒るのか解る…だから余計に翔太くんを追いかけられなかった。
どうしよう、と思うばかりで…チョコレートのラッピングを終えた私は
一緒に買った小さい千代紙を取り出す。
私はペンのキャップを外して言葉を書いたあとそれで鶴を折って、チョコレートと一緒に紙袋に入れた。
…あの様子だと、直接は渡せないかもしれないから、でも渡したいから、学校に持っていくことにして、
一日かけて機会を伺おう。
バレンタイン当日は、あちこちでチョコレートが本命だったり義理だったりで飛び交っていた。
勿論翔太くんは朝から下駄箱やら机の中やらにいろんな華やかな包みが置かれていたみたいで、
教室に来るまでにもう手に持ちきれない位で…。
「やっぱりすげーなあ、俺にもひとつ位分けろよ、この。」
男子にちゃかされて、翔太くんが仏教面でその男子にひとつ渡す。
えっ…、
翔太くんらしからぬ行動に私も目を見張っていたら
「…ってやるか、」
とチョコレートに同封されている手紙を見て、立ち上がった。
…そしてどこに行ったのか、暫くして戻ってきた翔太くんの手にチョコレートの包みはなかった。
「お前…どうしたの?」
「返してきた。」
何て勿体ないことをと言う男子を尻目に翔太くんは涼しい顔で座り、またひとつのチョコレートに目を通し始めた。
「…翔太になんか言ったの?」
友美がこっそり耳打ちしてきて、
言ったというか…
昨日、翔太くんに言ってしまった事を話すと。
唯一私と翔太くんとの事を解っている友美は
「翔太も男だね、優しいじゃん。○○にいらない心配かけたくないんでしょ。」
翔太くんを見ると、厳しそうな顔をしてて、私と目が合う。
すぐにそらされてしまったけど…
授業はてんで手につかなかった。
心配…違う。
翔太くんはいつだって私に心配なんかかけていない。
翔太くんは小さい頃でも、幕末でも、沢山の人にモテたけど
それで心配をかけたりとか、心配させる様な言葉や行動をとった事は一回もない…、
私が、
いつだって自分に自信がない私が勝手に怒ったり泣いたりして。
でもいつだって翔太くんは私の事を想っててくれてて…それなのに。
「翔太ーっ、なにー?何してんのっ!?」
いつもの様にお昼休みにはバスケ部の彼女がきて。
すっごいアンタ噂だよと。
でも、その手にはチョコレートだと思われる包みを持っていて。
私はどんどん心臓の音が大きくなる。
彼女のを受けとる?
いつもならもう少し思わなくて良いのに…。
やっぱり不安で。
ものすごい不安で。
それに、翔太くんが目の前でチョコレートを渡される光景も見たくない。
これ以上、私が不安がって翔太くんを困らせたりもしたくない。
…私は、机の中で自分の包みをぎゅっと持つ。
「でもさ、私のは…」
彼女が周りに冷やかされながらチョコレートを差し出すその時に
「し、…翔太くんっ、」
声が思ったより大きく、変に上ずりながら名前を呼んじゃって。
でも私は席を立ち上がった。
それからは顔に火がついた様になっちゃって…あまりよく覚えていないけど。
私はバスケ部の皆以外に、教室中からの視線を集めながら翔太くんにごめんなさいとチョコレートを差し出して。
翔太くんがぽかんとした顔をしたのまでは見れてた。
…そのあとは、皆の驚く声が聞こえて。
強い腕の中に包まれて、
「…さんきゅ。」
そう耳元で聞こえる声は暖かった。
「お邪魔します…。」
あれから、部活帰りの翔太くんが迎えに来てくれて私は翔太くんの部屋に久しぶりに上がった。
翔太くんはチョコレートを食べて「美味しい」って笑ってくれたけど
私はまた今度別に作るから食べてと言った…あの時、怒りながら作っていて。
今度は翔太くんの事を考えて作りたかったから。
そしたら、何だこれ?と私も忘れていた折り鶴を翔太くんが袋の下から見つけて、
返して欲しくて暴れたのに…結局見られてしまって。
「…俺も。」
私が『ごめんね、大好き』と口に出しては言えない言葉を見た翔太くんは
顔を赤らめて…そう私に返してくれる。
…私も真っ赤になりながら頷いて、
ほっとしていると翔太くんが開いた鶴を戻そうとしていて難航しててつい笑ってしまう。
ムキになった翔太くんは折り方教えてとノートを切り正方形に切り、
「おかしいな、向こうにいた時は龍馬さんより上手かったのに。」
すぐに忘れるなんてと悔しそう。
「…ふふ、龍馬さんも手先器用そうだよね。」
あの時はこんな綺麗な紙じゃなくても、折られた鶴は綺麗に見えたよねと二人して笑い、折っていると
「…アンタ達、何してんのよ。」
わっ、振りかえると翔太くんのお姉さんで。
「何だよ、ノック位しろよ。」
「静かだから…少しは大人になったかと思えば鶴を折ってるなんて、…はあ我が弟ながら情けない。」
赤くなる私に、煩いなと翔太くんがお姉さんが持ってきたお茶を受け取りお姉さんを部屋の外に押し出して。
「…ったく。」
ごめんなと言う翔太くんに首を振り、堪らずお茶を頂いてると
机の鶴に、ふと目が行く。
「翔太くん…?」
翔太くんがしたの?
二人で折った鶴が、くちばしとくちばしがくっついている。
まるでキスをしているみたいに…。
なんか、可愛くて。
でも偶然?
翔太くんを見ると…
いつの間にか、すごく近くに翔太くんが居て…
私たちは、机の上にいる鶴と同じ…キスをした。
**【Eternal Love】~結城翔太編~終**