第20話 アルファベットの形の作り方
早朝の公園。まだ人が少ない時間、ベンチに座るソウマはノートを広げていた。昨夜の「つながっている感じ」が頭から離れない。そこへユナと、新しく来た女の子ミオが現れる。「朝からやってるんだ」とミオが笑う。
起。少し遅れてカズさんも来る。手には空き缶とチョーク。「今日は“形の作り方”をやる」。地面に大きく一本の線を引き、「全部の文字は、線と丸と角でできてる」と言う。「むずかしく考えるな。分けて考えろ」
承。カズさんは「A」を三角、「O」を円、「E」を横線の組み合わせとして描いていく。ミオが感心する。「分けると簡単に見えるね」。ユナはそれを応用して、自分の名前を“丸多め”で組み直す。やわらかい形になる。
ソウマは自分の「S」を何度も分解してみる。曲線、角度、太さ。少しずつ変えていくと、昨日の自分の形とは違う“もう一つの形”が見えてきた。
転。昼。場所は変わり、商店街の裏のシャッター前。試しにチョークで大きく描く。するとミオが指をさす。「それ、昨日の壁のタグに近いよ」。ソウマはハッとする。同じ形に引き寄せられている感覚。
その時、カズさんが真顔になる。「似るのは悪いことじゃない。ただし、“なぞる”のと“つながる”のは違う」。そして小さく続ける。「その違いが分かるやつだけが、先に進める」
結。夕方。ソウマは自分の名前をもう一度書く。線と丸と角に分けて、組み直す。すると自然に手が動き、昨日と今日の間にある形が生まれた。「これだ…」
ユナがうなずく。「ソウマの形になってきたね」。ミオも笑う。「でも、まだどこかで誰かとつながってる」
ソウマは遠くを見る。あの謎のタグの主。なぜ同じ形に近づくのか。答えはまだない。ただ一つわかるのは、この“形のルール”の先に、何か大きな秘密があるということだった。
その秘密が、第80話で「形は記憶を持つ」という形で明かされることになるとは、まだ誰も知らない。