第59話 デザインを考える
夜のファミレス。窓の外では雨が降っていた。
テーブルの上には、ノートが何冊も広がっている。
“Love letter”
ソウマは同じ文字を何十回も描いていた。
丸い形。
細い形。
鋭い形。
でも、どれも決め手がない。
「難しい…」
ユナがストローをくわえながら言う。
「描けてるのにね」
ソウマは首を振る。
「“自分の形”になってない」
カズさんはコーヒーを置く。
「デザインってのは、見た目だけじゃない」
ノートを一枚めくる。
「その形に、“理由”があるかだ」
理由。
ソウマは考える。
なぜ王冠を入れるのか。
なぜ矢印を使うのか。
なぜ“Love letter”なのか。
全部に意味が必要になる。
その時、RAVENが遅れて入ってくる。
イスに座るなり、ソウマのノートを見た。
「線が多い」
一言。
「え?」
「飾りすぎだ」
RAVENはペンを取る。
そして、一気に線を減らした。
王冠を小さく。
文字を太く。
矢印を一本だけ。
それだけなのに、急に強く見える。
「うわ…」
ユナが思わず声を出す。
RAVENは言う。
「大事なのは、“一番見せたい場所”だ」
全部を目立たせると、全部弱くなる。
だから削る。
残すものを決める。
ソウマはその言葉をノートに書き込む。
その時、店の外。
向かいのビルに赤い光。
NOXのメンバーがいた。
レーザーポインターで、街の壁を指している。
まるで次の場所を決めているみたいだった。
カズさんの顔が変わる。
「…始まるぞ」
NOXは街の目立つ場所を順番に奪っている。
残された時間は少ない。
ソウマはノートを閉じる。
「決める」
雨音の中、静かに言う。
「“Love letter”の形を」
そしてページを開き、新しい一枚に描き始める。
今度は迷わない。
太い文字。
小さな王冠。
一本の矢印。
そして、文字の流れは街を進むみたいにつながっていた。
RAVENがそれを見る。
少しだけ笑った。
「やっと、街が入ったな」
その瞬間、ソウマは気づく。
これはただのタグじゃない。
街そのものを使った、一つのデザインなんだと。