第57話 ソウマの決意
夜明け前の屋上。街はまだ静かで、遠くにだけ車の音がする。
ソウマは一人で立っていた。
下には、昨日見たNOXの巨大な文字。
消えかけた“Love letter”。
そして、残された巨大な壁。
全部が頭の中でつながっていた。
「…どう残すか」
ノートを開く。
何度も書いた「Love letter」。
でも、まだ足りない。
TRACEの言葉がよぎる。
――消えたら、なかったことになる。
RAVENの言葉も重なる。
――人に届く線にしろ。
そして、カズさん。
――名前は育てるものだ。
ソウマはゆっくりペンを動かす。
同じ文字。でも、少しずつ形を変える。
太さ。角度。流れ。
何枚も破って、また書く。
その時、ドアが開く音。
ユナが来た。
「やっぱりここにいた」
ソウマは振り向かない。
「決めた」
短い言葉。
ユナは隣に立つ。
「どうするの」
ソウマはノートを見せる。
そこには新しい「Love letter」。
前よりシンプル。でも、芯が強い。
王冠は小さく。
矢印は一本、前へ。
「全部つなぐ」
ユナは少し驚く。
「新しく描くだけじゃない」
ソウマは続ける。
「消えかけたのも、巨大な壁も、全部“今”にする」
バラバラだったものを、一つにする。
それが自分の役目だと、やっと分かった。
その時、背後から声。
「面白いこと言うな」
振り向くと、RAVEN。
いつの間にかいた。
「やるなら一人じゃ無理だ」
屋上の縁に立ち、街を見下ろす。
「街全体でやることになる」
NOXは場所ごと奪う。
なら、こっちは場所ごとつなぐ。
スケールが違う戦いになる。
カズさんも現れる。
「覚悟はいいか」
ソウマはうなずく。
迷いはもうない。
「やる」
その瞬間、遠くのビル。
新しい“N O X”が増えていた。
まるで宣戦布告。
ソウマはそれを見て、小さく笑う。
「全部、取り返す」
夜が明ける。
第四章の終わりに向けて、動き出した。