俺は3年前に東京から静岡に引っ越してきた。
それ以来、ずっとここに住んでいるという感覚がいまだになくて、家と職場の往復以外で少し出かけると、まだ旅行をしているような気分になる。
今日は、職場の友達と行ったことのない静岡の駅に降りて、散歩をした。
「知らない街を散歩がしたい」という提案をノリノリで受けてくれて、朝9時から集合してくれる友達がこっちでもいることが、本当に嬉しい。
2人とも行ったことがなくて、現実的に日帰りできる駅。俺たちが決めたのは、静岡駅からJR東海道線で7駅の、「新蒲原」という駅だった。
到着すると、じめっとしたぬるい風と、ほのかに海のにおいを感じた。
改札を出るとタクシー乗り場に船が飾られてて、この時点で面白え街だと思った。
駅前の時計は、17時36分で時が止まっていた。
駅前にはいきなりイオンタウン(スーパーとかマクドナルド、カツ丼屋、クリーニング、工具店などが並んだ商業施設)があり、最悪ここに戻ってくれば大丈夫だという安心感があった。
一旦はこの夢の施設を無視して、海があると思われる方向に歩くことにした。
海に向かう途中で、小さな神社があったので、入ってみた。
手水舎の水は溜まっていなかったし、賽銭箱などもなかったが、とても手入れされていて綺麗な神社だった。シーサーに軽く会釈をして、また海を目指す。
路地を歩いていると、洗剤の匂いが漂ってきた。誰にも人に会っていないのに、家の前にある自転車や干されている洗濯物を見て、ここに住んでいる人たちはいい人だろうと確信した。
道の行き止まりに、気持ち悪すぎる木があって写真撮った。形も気持ち悪いし、穴空いてるのも気持ち悪いし、普通に毛虫が乗ってて怖かった。
波の音がかなり近くに聞こえてきた。
この道の上は車が走っていて、車が通るたびにゴウゴウと音が鳴る。その音は嵐のようで、聞けばわくわくした。
駅に到着して約1時間、ようやく海に着いた。
行きがけ、電車から見えた健康ランドが遥か海の彼方にぼんやりと見えた。
2人とも朝から何も食べていなかったので、駅まで戻ってイオンタウンでマックか何か買って、この海で食べようという話になった。
イオンタウンに戻る道には小学校があって、プールの授業から戻ってくる、バスタオルを持った小学生がきゃっきゃと言いながら走っていた。
寄り道をしないと、イオンタウンには10分ほどで戻ってこれた。
マクドナルドもいいが、一度熱くなった体を冷やすために、スーパーを見てみることにした。
スーパーを見たら、マックじゃないことに余裕で気がついた。
これが正解。