艦内・軍用区画にある、ラウンジバー【クワトロ】。気分屋のマスターが切り盛りしている、乗組員達の憩いの場だ。
「やぁ、エース。来る頃だと思っていたよ」
入り口のドアを開けると、マスターが歓迎してくれた。戦闘のあった日の夜は、ボクが必ず寝付けずにここにくる事を、マスターも覚えてくれてるのだ。
「いつもすみません」
席に座ると、間も無くしてコーヒーが出された。仕入れからこだわっているというコーヒーは、知識のないボクでも缶コーヒーとはまるで違うことがわかる程だ。
「まだまだ坊やな君には、これも必要かな?」
シュガーポットとミルクディッパーを追加で出してくれる。
小言を言ってしまうのは、本来の味を楽しんでほしいという気持ちと買ったものにケチを受けるのは職人失格という気持ちの葛藤によるものらしい。
「そのうち飲めるようになってみせますよ」
「ほう!楽しみにしておくよ。さあ、冷めないうちに」
「いただきます」
薫り高く、深みのある味は、心と体の緊張をこの解し、リラックスさせてくれる。
そらは睡眠薬すら効かないボクの精神にも作用し、眠気を誘ってくれる。
「おや?相変わらずお寝んねの時間か。気取ってはいるが、やはりまだまだ子供だな」
マスターがそっと毛布を掛けてくれたことにも気付かず、深い眠りにつく。
残弾は僅か。敵影は倒しても倒しても湧いてきてキリがない。
「何が起きてるのさ!?」
ここにくるまでの前後の記憶がない。けど、ガンプラバトルにこんなステージはないし、こんなミッションも今まで見た事ない。
「数が分かんない以上、接近戦をするのはリスクが高い…こうなったら残弾掃射して煙幕を」
敵機の足元に標準を定め、引き金を引こうとした瞬間、プライベートチャンネルで通信が入った。
『奴らは遠隔操作の無人機だ!そのまま南に舵を取ってセンサー圏から抜けろ!!』
「誰ですか!?」
『生きて会えたら教えてやる!戦闘が長引けば敵さんの大将が出てくるぞ、急げ!!』
知らない男性の声だったが、何故か信頼してもいい気がした。それに、どの道現状を打開する方法は他に無さそうだ。
追手を躱しながら、支持された南の方角を目指す。無事に抜けたのか、気がつくと追手は居なくなっていた。
『無事抜けれたようだな。こっちだ、マシンライダーが見えるだろ。そこに降りてきてくれ』
手を振る人影を目視し、側に着地する。ハッチを開けて降りると、今まで乗っていたガンダムが手のひらサイズに縮む。そこには軍服をまとった金髪の男性が立っていた。
「貴方がさっきの…」
「こりゃ驚いたな…こんな子供が乗っていたとは。いや、失礼。俺は反政府軍リベンジャーズのルドガー・アルシュタインだ。君のような者達を救う活動をしている」
「ボクのような者"達"…?」
「細かい話は艦に戻ってからするとしよう。後ろに乗ってくれ。この辺は敵地だからな。MSを動かすのは危険なんだ」
そう言うと、ルドガーはマシンライダーのシートからヘルメットをもう1つ取り出した。
「飛ばすから捕まってろよ!」
「お手柔らかにお願いします!!」
エンジン始動とともにホバリングを始めるマシンライダー。今まで生身で体感したこともないスピードで砂漠地帯を駆け抜けていく。
「少しスピード落として貰えませんかっ!?」
「もう少ししたら中立地帯にはいる!そこまでは我慢してくれ!!」
「わ、わかり、ました〜」
そう返事をしたっきり、気を失った。
第2話[ファースト・コンタクト]