ウルトラッシュ!!
戦う意志で融合(ダイブ)する。
世界各地で突如連続的に発生した地震。
それは恐怖の大怪獣時代の幕開けだった…!!
円第2高校に通う《郁須出 ハイサ》は、不思議な電波を受信した直後、地底怪獣《テレスドン》に遭遇してしまう。
「なっ!!なんでこんなところに!?」
ニュースではまだ、関東圏には怪獣の出現はないって今朝言ってたばかりなのに!
慌てて自転車にまたがり、怪獣から離れようと坂を下った。
そこからは記憶も曖昧で、気付いた時は麓の神社の前でへばっていた。幸い、怪獣が追ってきているような様子はなかったが、日がだいぶ傾いでいた。
(このまま、家に帰る?また坂を上がるの?またでてくるかもしれないのに…)
かといって学校に戻ったところで、どうにもならない。散々悩んだ挙句、意を決して帰宅することに決めた。
途中、大家さんと連絡が取れアパートは無事ということがわかった。
『都内北部で、関東圏発の怪獣出現が確認されました。特防隊の活躍で怪獣は地底深くに逃亡。沈黙をしています』
テレビのニュースが言うには、退かせたがトドメはさせていないようだ。学校からは一斉メールで明日から休校の連絡が届いた。
「再開するまで実家に帰ろうかな…静岡も確かまだ怪獣災害も無かったはず」
「いや、特防隊の基地のあるココを離れるのはあまりお勧めしない。それに根本を解決しなければ、何処に逃げてもいつかは怪獣災害に合うことになるだろう」
想定外のことに、思考が止まる。
独り言に相槌を打つ相手などこの部屋にいるはずがない。
テレビは、天気予報が流れていて偶然でも会話が成立するような内容では無かった。
一人暮らしのアパート。よほどの大声でもない限り、隣からの合いの手もありえない。
誰か忍び込んでいるのか!?
有事の際はすぐ110番出来るよう、スマホを手に持ち辺りを警戒する。
「どうした?まさか怪獣の気配でも!?」
「また声が!?一体何処から…!!??」
ふとスマホに目をやると、スマホ画面に見知らぬアプリが起動していた。
「まさか…これ!?」
「ん?やぁ!私はウルトラマンエックス!訳あって君のスマホに電波(テレパシー)を送っ…なにをする!!」
「は!?なんで!?なんで閉じないのこのアプリ!!まさかウイルス!?再起動しなきゃ!!」
電源を切ろうとしても、切れる気配はない。
音量ボタンなどもいじってみたが、反応しない。
「ちょちょちょ!ちょっと待て!!一旦落ち着いて私の話を聞いてくれ!!」
途方に暮れていると、慌てた声でスマホがなだめてきた。
「落ち着いて聞いて欲しいんだが、この世界はいま侵略者に狙われている。怪獣はその尖兵に過ぎない。本来なら、そういう輩は我々ウルトラマンが取り締まるのだが、この世界への入り口は狭く、声を届けるのが精一杯なのが現状だ」
「そんな漫画みたいな…てか、だとしてもなんで私!?もっと特防隊の隊員とかに話しかければいいんじゃ!?」
「それが、そうもいかないんだ。我々ウルトラマンは波長の合うものでなければ、力を授けることが出来ない。この世界で一番波長の近い人間は君だったんだ」
「そんなこと言われても…」
「!?…詳しい話は後だ!奴が動き出しそうだ、裏山からで出て来るぞ!!」
エックスと名乗ったそれが、そう言った直後地震が起きた。
暫く地響きが続き、収まらないまま今度は怪獣災害を知らせるサイレンが鳴り出した。
「まずい!奴はこちらを狙っている!正確には私と融合可能である君を狙っている!学校の校庭を目指してくれ!!」
判断する余裕もなく、言われた通りに自転車を走らせる。地響きの間隔が段々と短くなってきていることに気付き、一旦足を止めた。
「あれ!?でも裏山の側に行くのは危険じゃ!?」
「みんなと同じ方に逃げたら巻き込んでしまうだろう!我々が学校側に逃げることでみんなから気を反らせる!」
「囮になれってこと!?」
「いいや、戦うんだ!君と私の力で、敵を迎え撃つ!!」
そうこうしているうちに、山肌の一部が崩れ、昼間の怪獣が顔を出した。
「昼間のヤツだ!!なんかあの時より凶暴になってない!?」
「奴は夜行性の怪獣だ。昼間は寝ぼけていただけ、今のヤツが本来の姿だ!!」
「なっ!?ちょっ!?火吐いてる!?無理無理、逃げよ!!」
「いや、君なら戦える!!アプリの中央をタッチして、次元融合(エクスライブ)するんだ!!」
「そんなこと言われても…ううん、もうこうなりゃヤケクソだ!!」
目を瞑って中央のボタンを押した。
《ハイサ×エックス 時限融合!!》
光に包まれた身体は次第に巨大化し、怪獣の進行方向を塞ぐように立ち上がった。
「なっ!なんだコレーーー!?」
てっきり光の巨人になるかと思っていたが、見た目はぱっと見魔法少女のような姿だった。