夜に起きるようになってしまってから、数か月経つ。
起きるのはたいてい、相撲中継が終わったあとだ。夏の間はそれでも日が差している時間もあったが、この季節になると寒さとともに、街は喪に服したような昏さになる。


川の近くの街だ。
電力は制限される前から、この街の夜はもともと昏い。この昏さの中、『死んでるさん』と呼ばれる死者が徘徊していると聞いたが、俺はいまだに出くわしたことのない。
川の近くに、キリン型の鉄塔がある。
そのキリン型の鉄塔の近くに、携帯型ラジオを持っていく。夜、その鉄塔の付近でのみ、声を拾えるラジオがあるのだ。俺はその声を聴きに行く。

 

「家族! ……本当の家族には言えないあなた日常を送ってください。採用された方には、ひょんめんみゃんもんすう、もうぺんはるもにあ、あごす、よごるよごろてりあ、まくろまふすう……」
深夜のラジオだ。時々、人間ではない違う生き物の言葉も入ってくるのは、この鉄塔が気持ち悪いせいだと思う。
「本当の家族には言えないあなたの日常」を送るという、そういう趣旨のコーナーにもかかわらず、投稿リスナーたちは次から次へと、ありえないシュールな日常を送ってくる。投稿のあまりの狂いっぷりに、パーソナリティの二人は笑い続ける。狂った言葉と、笑い声が、死体の匂いのする川の、小さい範囲に響いている。なぜこのラジオは、ここで聞けるのか。そもそも電力が制限されている中、深夜に聞けるラジオなんて、どうして存在できるのだろう。こんなに人が死んでいるさなか、どうして俺はまたここに、ラジオを聞きに来たんだろう。

 

向こう側で、誰かがこっちを見ている。昏くてよくはわからない。見ることはできない。ただ、存在するときに立てるわずかな音と、気配で、
何かがいるようなことだけはわかるのだ。
俺は思った。あいつも「夜組」なんじゃないか、と。

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The end of company ジエン社 
第11回公演
『夜組』
脚本・演出 山本健介
会場:池袋シアターkassai 
日程:2017年1月13日(金)~23日(月)
料金:
前売 3400円
当日 3900円
高校生割引(要学生証・要予約)1000円
開演時間:
1月13日(金)19:30
14日(土)14:00/19:00
15日(日)14:00/19:00
16日(月)19:30
17日(火)19:30
18日(水)19:30
19日(木)19:30
20日(金)19:30
21日(土)14:00/19:00
22日(日)14:00/19:00
23日(月)15:00
*受付開始は開演の60分前、開場は30分前
*上演時間 約1時間30分
出演
伊神忠聡 兎洞大 蒲池柚番 寺内淳志
中野あき(ECHOES) 由かほる(青年団)
高橋ルネ(ECHOES) 善積元
Web:http://elegirl.net/jiensha/no11yorugumi