訴因変更は公訴事実の同一性の範囲内で可能である。
訴追関心の拡張を防止する趣旨である。公訴事実の同一性か否かは基本的事実の同一性、実体法上の1罪か否かで決する。
本問では横領罪から詐欺罪への変更をしようとしている。日時、場所、行為態様、行為客体は同一と言える。
よって可能の様に思える。
しかし公判前整理手続を経ている。公判を計画的に集中的に行う趣旨である。
手続きを経た場合は証拠調べが制限されるに過ぎず、訴因変更を制限する規定はない。
然し乍ら、実質的に見て手続きを経た趣旨を没却する場合は変更を許すべきでない。
訴因変更の必要性、審理経過、被告人の防御の不利益などから衡量して決する。
訴因変更は公判期日における社長の証言に起因するものである。整理手続き段階ではなかった証言であるから変更の必要性はある。
整理手続きでは争点とならなかったので計画に乱れが生じる様にも思える。しかし両当事者は新たな証拠調べ請求を行わないので審理遅延はさほど起きないと考えられる。被告人は集金権限がなかったことを認めているので防御上の不利益がない。
よって整理手続きを経た趣旨は没却せず、訴因変更可能である。
