『破裂』

久坂部　羊

株式会社　幻冬舎

2004年12月20日　第4刷発行

Book Off OnLine　\220-

　著者は大阪大学医学部出身の医者。タイトルの破裂とは心臓の破裂を意味する。物語の悪役は、大阪の有名国立大学の医学部心臓外科の香村准教授だ。彼は、人工弁置換手術の際に小さな針を紛失してしまう痛恨のミスを起こす。体内に落としたと思われた針を検索せず、手術を終えるが、患者は数日後に心臓から出血して死亡する。死亡した者患者の娘（枝利子）の元へ、死亡原因が執刀医香村のミスであることを告発する手紙が届く。く。患者家族は、同じ病院の麻酔科医師と医療系ジャーナリストの協力を得て、香村の医療ミスを告発して裁判を起こす。

　執刀医香村は、手術は下手だが、心筋再生の研究（ペプタイド療法の開発）で実績が有った。＜心筋の弱った部分に吸着する抗原か何かに心筋細胞の増殖を加速する薬剤を結合し、点滴で体内に入れると、弱った心筋の部分に薬剤が集まり、心筋の再生を促進して、弱った心臓が復活する治療メカニズム。驚異的に心筋が回復して、老人の心筋梗塞が改善するという話。ところが、心筋の増殖に血管の成長が追い付かず、虚血性の筋の硬化が起きて、心筋が硬化して脆くなり、最終的には心臓が破裂するという重大な副作用があった。＞

　医療ミスの話と同時に、厚生省の官僚は、今以上に高齢者が増えない様に、高齢者が安楽死を選択できるような社会の構築を目指していた（プロジェクト天寿）。その一つの方法として、香村のペプタイド療法を利用しようと考えていた。

　物語は、医療ミスに関わる裁判の話と体内に残した針が死亡の原因であることを証明するための証拠集めや鑑定に関する話が多くを占める。並行して、プロジェクト天寿に関すること、枝利子と麻酔医の恋愛感情、ジャーナリストの殺人事件などが描かれる。医師が書いただけあって、医療ミスの裁判の部分は話にとても現実感がある。一方、プロジェクト天寿の方は、現実味が無さすぎで、その終結があっけなさすぎるので、少し拍子抜けな感じだった。

破裂

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『破裂』 久坂部 羊

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